ハシボソガラス

Corvus corone Linnaeus, 1758

レア度:いつでも見られる

形態:言うまでもなくカラスである。ハシブトガラスよりやや小さ約50㎝ (翼開長にして約1m)。雌雄ともに全身黒色で、光の加減によって金属光沢を放つ。ハシブトガラスより華奢なくちばしをもち、額とくちばしの間のくびれはいっそう緩やかである。また、発声器官が全体的にハシブトガラスよりも小さく、これによって鳴き声に含まれる周波数成分も異なる (塚原ら 2007)。本種は「ガーガー」とがなり声で鳴き、ハシブトガラスのように「カーカー」とは鳴かない。

生息域:日本全国に留鳥として分布し、平野部から山地の森林や農耕地、河川や海岸などに生息する。ハシブトガラスが樹冠の発達した森林を好むのに対し、本種は開けた環境を好む傾向がある (Higuch 1979)。

生態:函館市郊外の日浦海岸における餌利用を調べた研究によると、成鳥は主にエゾバフンウニを捕食(ときにカモメ類から略奪)し、エゾチヂミボラやヒザラガイ類なども食べるが、幼鳥は別エリアでカサガイ類、ヒザラガイ類など少ない餌品目を利用する (Hori & Noda 2008)。この研究では、季節的に餌品目が変化することや、波当たりの強さと人間の存在が、成・幼問わず利用する餌の種数を減少させることなども報告されている (Hori & Noda 2008)。本種は函館を含む全国各地から、貝を食べるために高所から貝殻を落として割る行動が目撃されている (高木・上田 2002)。巻貝の種類には選好性があり、種によって投下する高さも使い分けているようだが、実際の行動とモデルによる予測は一致せず、この行動には未解明な部分が多い (高木 2001)。ちなみに函館市中心部の路上では、クルミを車に轢かせることで殻を割り、可食部を食べる個体もいる (荒ら 2019)。

その他:ハシブトガラスも「ガーガー」と聞こえる声で鳴くため、姿を確認したほうが堅実である。なお、本種は頭部を激しく上下させて鳴くが、ハシブトガラスは頭部を上下させず、尾羽を下げる動きをしながら鳴く (環境省自然環境局 2001)。

2021年4月 藤本 
2021年4月 藤本 そっぽ向く
2021年5月 とみよし


2020年1月@函館キャンパス 山上獲物はキレンジャク
2019年5月@函館キャンパス 山上親鳥+幼鳥3羽
2015年7月@札幌キャンパス 山上巣立った幼鳥
2021年7月22日 りった

引用文献:

  1. Higuch, H. 1979. Habitat segregation between the jungle and carrion crows, Corvus macrorhynchos and C. corone, in Japan. Japanese Journal of Ecology, 29: 353–358.

  2. 環境省自然環境局. 2001. 自治体担当者のためのカラス対策マニュアル. 東京.

  3. 高木憲太郎. 2001. ハシボソガラスの貝落とし行動における最適採餌戦略. 平成13年度厚岸湖・別寒辺牛湿原学術研究奨励補助金研究調査報告書. 厚岸町.

  4. 高木憲太郎・上田恵介. 2002. 日本国内におけるカラス・カモメ類の貝落とし行動の分布. Strix, 20: 61–70.

  5. 塚原直樹・小池雄一郎・青山真人・杉田昭栄. 2007. ハシボソガラス Corvus corone とハシブトガラス C. macrorhynchos の鳴き声と発声器官の相異. 日本鳥学会誌, 56: 163–169.

  6. Hori, M. & Noda, T. 2008. Spatio-temporal variation of avian foraging in the rocky intertidal food web. Journal of Animal Ecology, 70: 122–137.

  7. 荒奏美・三上かつら・三上修. 2019. ハシボソガラス Corvus corone によるクルミ割り行動: 函館市における車を利用したクルミ割り行動. 日本鳥学会誌, 68: 43–51.