ハシブトガラス

Corvus macrorhynchos Wagler, 1827

レア度:たまに見られる

形態:もはやいうまでもなくカラスである。全長56㎝、翼開長105㎝程度。雌雄ともに全身黒色で、光の加減によって青紫色の金属光沢が見える。嘴は顔全体に対して不釣り合いに大きく、上嘴は大きく湾曲した輪郭をなす。額とくちばしの間のくびれは明瞭である。近縁種のハシボソガラスは若干小型で、本種とは嘴の形態によって明確に区別できる。また、本種は低い前傾姿勢で尾羽を下げながら「カーカー」といった声で鳴く (Kuroda 1974)。

生息域:日本各地に留鳥または漂鳥として分布する。本来、樹冠の発達した森林に生息するが、ゴミを漁るために市街地から高山までさまざまな環境に出没する (Higuchi 1979; Matsubara 2003; 小林・中村 2006; 森下・松原 2018)。ハシボソガラスは本種ほどゴミに依存ぜず (藤田ら 2013)、したがって繁華街などに見られるカラスは多くの場合本種である。葛登支では磯で採餌している様子がみられる。

生態:繁殖期は3–7月。枯れ枝や獣毛を集めて作った椀型の巣を樹上に構える。一夫一妻で、抱卵は雌、餌の獲得は雄が担う。雛は20–22日でふ化し、両親に養われて34–36日で巣立つ (中村・中村 1995)。この間、うっかり巣の近くを通ると執拗に攻撃されるので注意 (松田 2000)。家族行動は巣立ち後もしばらく続く。

2021年3月 大友
2021年3月 大友
2021年4月11日 りった
2021年6月 とみよし多分サンプリング中
2021年6月27日 りった
2021年6月27日 りったヒトの後をついて行く

引用文献:

  1. Higuch, H. 1979. Habitat segregation between the jungle and carrion crows, Corvus macrorhynchos and C. corone, in Japan. Japanese Journal of Ecology, 29: 353–358.

  2. Kuroda, N. 1974. Some behavior and vocalization of jungle crow, illustrated by photos and sketches. Journal of the Yamashina Institute for Ornithology, 7: 427–437.

  3. 中村登流・中村雅彦. 1995. 原色日本野鳥生態図鑑〈鳥編〉. 保育社.

  4. 松田道生. 2000. カラス、なぜ襲う 都市に棲む野生. 河出書房新社.

  5. Matsubara, H. 2003. Comparative study of territoriality and habitat use in syntopic Jungle Crow (Corvus macrorhynchos) and Carrion Crow (C. corone). Ornithological Science, 2: 103–111.

  6. 小林真知・中村雅彦. 2006. 本州中部の高山帯に生息するカラスの分布と個体数. 山階鳥類学雑誌, 38: 47–55.

  7. Hori, M. & Noda, T. 2008. Spatio-temporal variation of avian foraging in the rocky intertidal food web. Journal of Animal Ecology, 70: 122–137.

  8. 藤田紀之・東淳樹・服部俊宏. 2013. 盛岡市におけるハシブトガラス・ハシボソガラスの生息分布と土 地利用に対する選好性. 農業農村工学会論文集, 287: 19–26.

  9. 後藤三千代・鈴木雪絵・永幡嘉之・梅津和夫・五十嵐敬司・桐谷圭治. 2015. 庄内地方におけるカラス3種のペリットの内容物から見た食性. 日本鳥学会誌, 64: 207–218.