ウトウ

Cerorhinca monocerata Pallas, 1811

レア度:生息しない

形態:ハト大のウミスズメ類で、全長35㎝程度。体下面は灰褐色をしているが、体上面が一様な黒色であるため、海上では遠目に黒い塊が浮かんでいるようにしか見えない。しかし近くで見ると (某研究室に進学すればみられる?)、オレンジ色の嘴がよく目立つ。繁殖期には、この嘴にツノ状の飾りが形成される。繁殖期には白い飾り羽も発達し、まるで眉毛とひげのようである。雌雄同色。

生息域:北日本沿岸からカリフォルニア州までの北太平洋沿岸に広く分布する。津軽海峡では越冬しているほか、6–7月の函館湾沿岸では海上に集まった多数の本種が観察できる。後者は松前小島など遠くの繁殖地から飛来している個体と考えられる。葛登支では漂着した死体を確認しているが、生体は発見できていない。

生態:北海道周辺の島嶼で繁殖し、なかでも天売島は約30万つがいが繁殖する本種の世界最大の繁殖地である (Osa & Watanuki 2002) 。地中1–5mほどの穴を斜めに掘って営巣し、コロニーを形成する。一卵数は1個。一夫一妻で、雌雄で交代して抱卵する。雛は約45日でふ化し、さらに40–70日で巣立つ (Deguchi et al. 2004)。親鳥は抱卵期にはオキアミ類などのプランクトンを主に食べているが、育雛期にはカタクチイワシやホッケの0 才魚といった浮魚類を主に食べ、雛にも与える (Ito et al. 2009)。親鳥は日中に採餌し、日没頃に雛に与える大量の魚を嘴に咥えて帰巣する。このとき、多くの個体がウミネコによる盗み寄生を受けることが知られている (Watanuki 1990)。本種は水深10m内外での潜水によって餌を捕らえ、一度の潜水時間は40秒程度である (Kato et al. 2003)。驚くべきはその採餌範囲で、最大で繁殖地から約160 kmの距離に及んでいる (Kato et al. 2003)。

その他:属名は「角のある鼻先」、種小名は「一本角」を意味する。cero、 cerataは「角」。トリケラトプスとか、ヒレガイの属名に使われてる。名前はとにかく角にちなんでいて、和名「突起」を意味するアイヌ語に由来しているし英名はRhinoceros auklet (= サイの角をもったウミスズメ) という。

2021年7月23日 りった漂着した死体

引用文献:

  1. Watanuki, Y. 1990. Daily activity pattern of Rhinoceros Auklets and kleptoparasitism by Black-tailed Gulls. Ornis Scandinavica, 21: 28–36.

  2. Osa, Y. & Watanuki, Y. 2002. Status of seabirds breeding in Hokkaido. Journal of the Yamashina Institute for Ornithology, 33: 107–141.

  3. Kato, A., Watanuki, Y. & Naito, Y. 2003. Foraging behaviour of chick-rearing Rhinoceros Auklets Cerorhinca monocerata at Teuri Island, Japan, determined by accelerationdepth recording micro data loggers. Journal of Avian Biology, 34: 282–287.

  4. Deguchi, T., Takahashi, A. & Watanuki, Y. 2004. Proximate factors determining age and mass at fledging in rhinoceros auklets (Cerorhinca monocerata): intra-and interyear variations. The Auk, 121: 452–462.

  5. Ito, M., Minami, H., Tanaka, Y. & Watanuki, Y. 2009. Seasonal and inter-annual oceanographic changes induce diet switching in a piscivorous seabird. Marine Ecology Progress Series, 393: 273–284.