ウンモンフクロムシ

Sacculina confragosa Boschma, 1933

レア度:いつでも見られる?

形態:外から見える黄色や茶色のぶにぶにした部分は、本科の種の体外部(エキステルナ)である。雌雄異体でメスのみが袋状の成体まで大きくなり、オスはキプリス幼生で一生を終える。エキステルナの中身はほとんど内臓と卵巣で占められ、体節、脚、消化管を全く欠く。宿主の体を貫いて体内部(インテルナ)と繋がる。インテルナは植物の根のように宿主の体の各所に伸び、組織を破壊することなく養分を吸収する。分類は宿主の種で科まで、エキステルナの形状で属まで識別できる。本種のエキステルナはそらまめ形で、色は黄色や茶色など様々。外套口が体の中央付近から、カニの前側に向かって突出する。またエキステルナの一面に波模様の隆起があり、周囲も波打つ。

生息域:葛登支ではヒライソガニイワガニに寄生しているものがよくみられる。

生態:ノープリウス幼生の形態がフジツボの仲間によく似ており、キプリス幼生も経ることから、フジツボに近縁な生物と考えられている。寄生されたオスのカニは生殖能力を失い、二次性徴も不明瞭となることから、「寄生去勢(Sacculinization)」という現象名で知られる。

その他:日本沿岸から3属13種程の報告例があるが、うち多くは採集例が少なく非常にあやしい。最もふつうにみられるのは本種とケハダフクロムシ S. pilosella だが、後者は宿主がクモガニ類で、体表面に枝分かれした棘を持つ点で異なる。

2020年10月 大友
2020年10月 大友
2018年11月 木戸
2021年6月27日 りったオオヨツハモガニのメスに寄生している