ヒライソガニ
Gaetice depressus (De Haan, 1835)
レア度:いつでも見られる
形態:体色の変異は非常に激しく、色だけでは判別できないほど。背面から見たときに識別できる形態形質としては、背甲は前側縁がやや横に長い四角形であること、甲表面が扁平でつるつるしていること、前側縁に3歯がある(第3歯はかなり小さい)ことで識別できる。イソガニとは、顎脚にY字型の線が入ることで明瞭に識別可能。稚ガニの時の方が甲羅の柄がバリエーションに富み、おしゃれな気がする。
背景と体色が合った場所にいやすいこと、明るい体色の個体は成長するにつれて色が暗くなること、オスよりもメスの方が色が暗いことが知られている (Murakami & Wada, 2015)。
生息域:北海道以南に分布。葛登支では至る所に分布し、探さなくても見つかる。
生態:石をひっくり返すと必ずと言っていいほど複数で見つかる。転石の下に巣を構え、巣の入り口に小石を配置する。干潮時に葛登支を歩いた時に小石が動いているのを見かけたら、恐らく本種の仕業と思われる。繁殖期は本州では3~10月。メスは精子を脱皮後も貯蔵できるらしく、1回の交尾で数腹の卵を受精させることができる(Fukui, 1990)。オスは明確な配偶者選択を示さないが、メスは自分より小さなオスを拒絶する傾向があることが知られる(Fukui, 1995)。さらに、オス>メスの時はメスから近づき、逆の場合はオスから近づいて交尾に至るらしい(Fukui, 1994)。モテるオスはとことんモテるということか。
その他:「葛登支紛らわしいカニ三銃士」のひとつ。イソガニと混同しやすいが、顎脚を見れば容易に識別できる。
引用文献:
Fukui, Y., 1990. Breeding and molting of Gaetice depressus (De Haan) (Brachyura: Grapsidae) under laboratory conditions. Research on Crustacea 19: 83-90.
Fukui, Y., 1994. Mating behavior of the grapsid crab, Gaetice depressus (De Haan) (Brachyura: Grapsidae). Crustacean Research 23: 32-39.
Fukui, Y., 1995. The effects of body size on mate choice in a grapsid crab, Gaetice depressus (Crustacea, Decapoda). J. Ethol. 13: 1-8.
Murakami, Y., & Wada, K., 2015. Inter-populational variations in body color related to growth stage and sex in Gaetice depressus (De Haan, 1835) (Decapoda, Brachyura, Varunidae). Crustaceana. 88(1): 113-126.