ホシゾラホンヤドカリ

Pagurus maculosus Komai & Imafuku, 1996

レア度:たまに見られる

形態:体長は4㎝程度と、葛登支のヤドカリ類の中では大きめ。ケアシホンヤドカリに似るが、はさみ脚と歩脚に入る斑点が白色~水色であることで見分けられ(ケアシは黒)、はさみ脚にも形態的な違いがあるそう。触角は鮮やかな赤色とされるが、長く飼育していた個体では朱色っぽくなっていた。体色が緑褐色であること、付属肢に長い毛が生えることはケアシと同じ。ぱっと見の外見で識別するのはけっこう難しく、事実写真の個体も、長く飼育していたがずっとケアシだと思っていた。

生息域:葛登支では平磯に点々と生息しているのだろう。「おそらく日本固有種」で、分布域は房総半島~天草くらいまでとされる。ケアシが内湾的な場所に多いのに対し、ホシゾラは外洋に面したような場所に多い(Imafuku & Ikeda, 1995)。

生態:古くから「ケアシ」には、斑点の色に白黒の二型があることが知られていた(三宅, 1982)。ヤドカリ類の例によって交尾前ガードを行うため、各タイプのオスにメスの選択を行わせたところ、オスは同タイプのメスを偏って選ぶことが分かった(Imafuku & Ikeda, 1995)。これにより二型には生殖隔離があることがわかり、比較的最近になって、白型の方が本種として新種記載と相成ったわけである(Komai & Imafuku, 1996)。

その他:比較的憶病で、一度引っ込むとしばらく出てこない。(アクティブな気がする。)ケアシを20~30匹を拾ってきたうちで1匹、くらいの頻度で混ざっているらしい。したがって、レア度はケアシの20~30倍であろう。

2021年2月 大友
2021年2月 大友
2021年2月 大友
2021年2月 大友
2021年5月 とみよしめっちゃアクティブだった
2021年5月 藤本緑のツンツンヘアー
2021年5月 とみよし毛深さはケブカヒメヨコバサミ 並み
2021年7月 深澤顕微鏡で見ると斑点の色は分かりやすい

引用文献:

  1. Komai, T., & Imafuku, M., 1996. Redescription of Pagurus lanuginosus with the establishment of a neotype, and description of a new closely related species (Decapoda: Anomura: Paguridae). Journal of Crustacean Biology 16 (4): 782-796.

  2. Imafuku, M., & Ikeda, H., 1995. On two types of hermit crab, Pagurus lanuginosus (Crustacea: Anomura: Paguridae). Publications of the Seto Marine Biological Labolatory 36 (5/6): 339-349.

  3. 三宅貞祥, 1982. 原色日本大型甲殻類図鑑 (Ⅰ). 保育社.