フツウゴカイ(生殖型)
Nereis pelagica Linnaeus, 1758
レア度:たまに見られる?
形態:体は顕著な疣足がある前半部と、泳ぎに特化していそうな後半部に分かれる。前半部の疣足を持つ節の数が、オスでは14対、メスでは16対。写真の個体は14対の疣足を持つため、男の子。頭部は円みを帯びていて、上下で分かれた2対の大きな眼を持つ。頭部の感触手は、眼の先に短いものが1対、細長いものが4対あり、細長い方で最も長いものは、少なくとも疣足の第4節に達する。前半部の疣足の背触糸(疣足のさらに先から伸びているツメのような突起)が、オスでは第1~7疣足のものまで、メスでは第1~5疣足のものまで、膨れたりこん棒のような形状になったりする。通常の姿はこちら。
生息域:石を拾ったらついていた。
生態:北海道では、本種の生殖型個体は6,8,9月に見られるとされる。水槽内でもよく泳ぐ。ゴカイ科の全ての種は1回産卵型である。生殖様式は近縁種間でも多様だが、このうち”生殖群泳”を行う種は、成熟とともに眼が大きくなる、体が2~3部分に分かれる、主に後部の疣足が遊泳に適した形態に変形するといった、”生殖変態(Epitoky)”を行うことが知られる(Clark, 1961; 佐藤,2006; de Vries, 2009)。
その他:よく似たツルヒゲゴカイも葛登支で見られ、同じような形に変態する。ツルヒゲの生殖型は、頭部の感触手で一番長いものが、第11節まで伸びることで識別できる。この個体はそこまでは長くなかった。無理やりひっくり返すと頑張って起き上がるので、彼にとっては写真の向きが、正しい背腹の方向らしい。
引用文献:
Clark, R.B., 1961. The origin and formation of the heteronereis. Biological Reviews 36: 199-236.
佐藤正典, 2006. 干潟における多毛類の多様性. 地球環境 11(2): 191-206.
de Vries, P., 2009. Epitoky in polychaetes: when benthic worms go pelagic. The University of Groningen (Bachelor's thesis, Biology).