ケヤリムシ科の1種

Sabellidae sp.

レア度:たまに見られる

形態:体長1~2㎜くらいの極小個体ばかりが見つかる。体は全体に透明だが、消化管らしき褐色の部位が体内に認められる。体の前端に漏斗状(上から見るとC字型)の鰓を持ち、これは体に引っ込めることができる。明瞭な体節構造と小さいが疣足?が確認できる。さらに、鰓の下部と体の後端にオレンジ色をした各1対の眼を持っていた。ケヤリムシ目の種は体が胸部と腹部に分けられ、それぞれが持つ背側と腹側の剛毛の形態で識別する。ケヤリムシ目内での超簡易的な識別は、石灰質の棲管を作るのがカンザシゴカイ科、泥や砂で棲管を作るのがケヤリムシ科か、それに近い仲間である。

生息域:ソーティング中にたまに出現する。海藻上に泥の棲管を作り、付着生活を送っているものと思われる。

生態:這うように移動するが、エラがある方とは逆、つまり体の後端側に向かって進む。ウズマキゴカイなど、カンザシゴカイ科の仲間は棲管から出るとそのまま死んでしまうが、ケヤリムシ科の種は自ら棲管を捨てて移動し、新しい場所で棲管を作ることができる。体後端の眼点は、その移動の際の感覚器として用いられているのでは?とのこと(西ら, 2017)。

その他:

2020年10月 大友鰓を折りたたんで歩いているところ
2020年11月 大友
2020年12月 大友泥?の棲管を作っているものも発見
2021年3月 大友フジマツモの上を移動中

引用文献:

  1. 西栄二郎・田中克彦・多留聖典・Kupriyanova, K. E.・Rzhavsky, V. A., 2017. 5章 管棲多毛類 ケヤリムシ科とカンザシゴカイ科 in 日本付着生物学会(編)新・付着生物研究法ー主要な付着生物の種類査定ー. 恒星社厚生閣 pp. 88-102.