山本充孝(滋賀県水産試験場)
はじめに
外来種であるオオクチバス(バス)とブルーギル(ギル)は,滋賀県農政水産部水産では「有害外来魚ゼロ作戦事業」として主に琵琶湖で駆除を進めている。外来魚駆除の担い手は毎年数百トンを駆除している漁業者だけでなく,県民や様々な団体によっても年間十トン以上もの駆除が継続して行われている。
バスは琵琶湖では4~6月に水深50cm~2m程度の風波の穏やかな砂礫底の湖底に産卵し,雄親が卵やふ化仔魚を外敵から守って産卵床に近づいた魚を追い払う繁殖なわばりをつくる。そのため,普段は人の気配を敏感に察知してすぐに逃げる大型のバスが逃げずに湖岸で頻繁に目撃される。また,琵琶湖の漁港内の船着場には段丘状の構造物があり,そこにも産卵床が形成されるため,この漁港で卵や仔魚を保護しているバス親魚の駆除方法を検討した。
駆除方法(アユの友釣りならぬギルの敵釣り)
まず,疑似餌(ワーム)や生きたアユなどでバス親魚の釣獲を試みたが,無反応で捕獲できなかった。次に,産卵床に侵入したギルをバスが攻撃する性質を利用して生きたギルによる捕獲を試みた。港湾に産卵した産卵床に掛針をつけた生きたギルを泳がせて,バスが初めてギルへの攻撃行動を起こすまでの時間と捕獲されるまでの時間を記録した。その結果,ギルへ攻撃行動を示すまで平均時間は5分,捕獲までは8.6分であった。ギルが頻繁に攻撃されても針掛かりしにくく,捕獲までに時間を要したため,ボラ掛針を追加してギルに接近したバスを引っかけるように改良すると短時間で捕獲できた。
生きたギルを用いるとバス親魚を効率的に釣獲できることが分かったが、生きたままギルを運搬することは外来生物法により禁止されており,釣りをする場所でギルを準備する必要がある。そこで,ギルの形態を模したルアーで釣獲できないかを検討した。また,産卵前,産卵中,産卵後のバス親魚にギル型ルアーを提示して産卵の前後や雌雄で産卵床に対する執着度が異なるかを調べた。その結果,産卵床で卵を守る雄では62.5%が3分以内に釣獲できた。また,産卵床への執着は雌よりも雄で強く,産卵の前後では産卵前,産卵中,産卵後の順に強いと考えられた。
琵琶湖の漁港における産卵状況
2016年4月~7月に琵琶湖北湖西岸の14の漁港において港内の段丘状の段差底面に作られた産卵床の出現状況を定期的に調べた。計159床の産卵床が12箇所の漁港で確認されたが,漁港によって確認数は大きく異なった。産卵床のバス親魚は雌雄あわせて184個体が確認された。
様々な釣獲方法と漁港の産卵状況の結果から,バス親魚を効率的に捕獲するにはどのような漁港でどのように実施すると良いかを紹介します。