● 地震断層の複雑破壊ダイナミクスの研究
図:光速で伝わる地震重力変化の模式図
地震発生の最中の高速破壊現象(破壊速度3000m/s, 破壊継続時間100秒)を、数値シミュレーションに基づき評価する研究をすすめています。「現実的な非平面断層形状」をモデル化し、運動方程式の積分方程式計算により高速破壊を模擬し、一旦はじまった動的破壊が断層面上のどこで停止するかを調べます。発生した地震の断層面形状との比較により、地震発生機構の理解を深め、地震の規模・強い揺れの予測に向けた研究をすすめています。
● 巨大地震発生サイクルのシミュレーション研究
図:地震サイクルシミュレーションモデルの模式図
プレート運動(10-9m/s)で駆動され繰り返す海溝型巨大地震サイクル(1000年)のシミュレーション研究をすすめています。現実的な沈み込み帯構造をモデル化して、これを高速計算できるようにする大規模計算手法の枠組み(プラットホーム)自体を、新たに開発しています。一見多様とも思える微動・スロースリップ・巨大地震のマルチスケールすべり現象の背後にある物理機構を包括的に理解することにより、地震発生予測への手がかりを得ようとしています。
● 光速の重力変化を用いた地震早期検出の研究
図:光速で伝わる地震重力変化の
模式図
地震の動的断層破壊に伴う重力ポテンシャルの変動の理論を学び、地震波より遙かに速く光速度で伝わる重力情報を用いた地震発生検知の実現可能性をさぐります。
まず、1) 震源理論:無限均質弾性体における点震源が引き起こす重力ポテンシャル変動の導出、2) 重力理論:重力加速度ベクトルの導出と期待値評価、を学びます。データ解析から人類初となる「重力変化による地震発生の検出」を試みました。
● 不均質媒質中の地震破壊ダイナミクスの研究
図:媒質境界を横切る破壊
最先端の観測研究から地殻不均質と対応する地震発生過程がわかってきました。一方、地震破壊の理論的研究は均質媒質に限られたままです。そこで新たに不均質媒質中における動的破壊の解析手法を開発しています。これを用いて地殻の不均質性がどの程度、地震の破壊過程をコントロールしているか解き明かそうとしています。将来、断層帯周辺の地殻構造から地震発生の想定シナリオに結びつけることができればと考えています。
● 深層学習を用いた地震学データ解析
図:地震波形初動検出のための深層学習ニューラルネットワーク
深層学習とは、多層ニューラルネットワークを用いた機械学習方法である。計算機の性能向上と学習設定のノウハウの蓄積により、情報工学分野で近年目覚ましい発展を遂げている。深層学習で訓練されたネットワークは高い処理能力を持ち、従来機械学習が使われていなかった分野への応用可能性を有する。現在、地震学データの解析への適用可能性が世界的なテーマである。今回は地震発生検出を試みたが、これからは地震活動の予測など試していきたい 。
● 地震と周期的SSEの同期現象
図:周期的SSEを含むある一定の応力載荷下での地震発生間隔の変化
プレート境界では、巨大地震発生領域の深部側でスロースリップ(SSE)が繰り返し発生しています。SSEが巨大地震地震発生タイミングに与える影響を、SSEの「周期性」に注目して単純な地震の繰り返しモデルを用いて調べたところ、巨大地震の発生間隔は摩擦パラメタ変化に応答せずむしろSSE 応力載荷のリズムに支配され、地震周期がSSE 周期に同期する興味深い現象が観察された。これは同期現象と呼ばれる非線形物理現象である。このような同期現象が観測で見つからないか探すと、何かおもしろい発見があるかもしれません。