先祖代々,みかんを栽培してきたこの地も,後継者である管理人の高齢化が進み,みかん畑として維持・管理をしていくことが困難となりました。管理人は,規模を縮小し,みかんの栽培は続けようとしました。しかし,すぐに蔦が生い茂り,雑草が敷地全体を飲み込む自然の生命力に立ち向かうことはできませんでした。このまま放置し続けると,たちまち残っているみかんの木が飲み込まれ,もう手がつけられない状態になってしまいます。ロケーション抜群のみかん畑なのに,耕作放棄地となり,荒れ果ててしまうのは時間の問題となってしまいました。
なんとかならないものか・・・。管理人はなかば諦めていましたが,管理人補佐は用地転用も含め考えました。そこで思いつきました。敷地の管理を含め,最小限のみかんの木を残しながらいらない木を伐採し,草を刈り,空いたところをキャンプ場にしてみてはどうかと。このロケーションの良さなら,気に入ってくださるキャンパーはきっとたくさんいるはずだ。もっとたくさんの人にこの地の美しさや蒲刈の魅力を届けられるのではないかと。管理人補佐は,そんな思いを抱きながら,管理人のバックアップのもと,キャンプ場作りに着手することとなりました。
管理人が畑全体の手入れができなくなると,あっという間に雑草や蔦に覆われてしまいました。栽培を継続するみかんの木にも蔦が覆い,収穫ができなくなる恐れがありました。
まずは雑草を刈り,不要な木を伐採し,畑全体をすっきりさせるところから始めました。着手したのが晩秋だったので,初夏までには整え,後はその状態をキープできるよう計画を立てました。
ところが甘かったようです。雨期に入るとものすごい勢いで雑草,蔦か伸びまくりました。刈っても刈っても追いつきません。あの手この手といろいろとやりましたが,自然の生命力の強さにはかなわず,キープなんてできそうにありません。この問題は今後の課題として,次はサイト作りに移りました。
伐採した木はそのまま放置していてもなくなることはありません。大量の枝葉を焼却場へ持って行くのも大変です。まして大量の枝葉を畑で燃やすわけにはいきません。そこで,枝葉を粉砕してくれるマシン“ウッドチッパー”を導入することにしました。
このマシン,最強です。あっという間に枝葉を粉砕してくれます。繊維質の蔦は粉砕されず絡まってしまうのでこのマシンで処理することはできませんが,直径8センチ以内の枝葉なら,簡単に粉砕してくれます。太い枝,幹は短く切って,薪として有効活用します。きっとこのウッドチッパーがないとすっきりさせることはできなかったでしょう。
一通り草刈りと伐採が終わると次は整地です。ここのみかな畑は海側に向かって少し傾斜がついています。このままではなんともキャンプがしにくい。そこでこの傾斜をなくし水平にする必要があります。
ここで投入したのが重機のユンボです。ネットで安いミニユンボを購入し,整地に使うことにしました。
ユンボは遠く栃木から陸送してもらいました。古くて小さいながらパワーのあるかわいいユンボです。全く操縦したことのない管理人と管理人補佐は,実際に操作しながら基本的な操作方法を覚えていきました。いちいち考えながら恐る恐る操作していた管理人補佐も,経験を積み重ねるごとに上達し,今ではユンボを自分の手足のように操作することができるようになりました。そうなると早いです。ミニユンボとはいえ,さすが重機です。人の力の100倍以上の仕事をしてくれました。
3トン車で3杯。この砂利は近くの蒲刈の採石場からの直送です。とても助かっています。今後はすべての連絡道路に砂利を敷く予定です。
画像を見ていただくとわかるように,サイトにする場所は微妙に傾斜がついています。当然みかん畑なので,傾斜の方が太陽の光が葉に当たるのにはよいのです。草を刈り,不要な木を伐採してみると少し傾斜した土地の全体が見えてきました。
実は少しの傾斜を平たんにすることはそう容易くはないのです。ユンボで掘っては低いほうに土を移していく。その繰り返しを何度も行いました。はじめは勝手がわからず,埋め戻したり盛ったりと,無駄な時間を随分と作ってしまいました。ユンボ操作にも慣れると比較的短時間で1サイトを整えることができるようになりましたが,でも素人です。1サイトを平たんに整えるのに3日間くらいはかかります。そこをプレートコンパクターで踏み固め,砂利を敷いて均一に広げるのにまた1日かかります。1つ作って安心していると,すぐに草でおおわれてしまいます。たんびに草刈りをしないといけません。なかなか思うようには進まないのが自然相手の遊びです。
今度は,不要になった土砂や,サイト・連絡道に敷く砂利を運搬するためのダンプが必要となりました。そこで中古のおんぼろクローラーダンプを購入しました。荷台が油圧で持ち上がるため,とても楽ちんです。作業効率が一気にアップしました。おんぼろですが,ちゃんと動いてくれるので,重宝しています。なかなかの働き者です。
でも当初はトラブル続きでした。当キャンプ場にやってきた次の日,スターターロープが切れ,使用できなくなってしまいました。交換方法をYouTubeで勉強し,DIYで何とか交換完了。それから数週間後,燃料を満タンにしたはずなのに,いつのまにかタンクが空っぽになっている。キャブレターからの燃料漏れでした。これもYouTubeから,整備の仕方を勉強し,自力で修理することができました。YouTube,すごいですね。改めて感心しました。ここからはちゃんと問題なく動いてくれています。
各サイトへ向かうための連絡道路をどこに通すか悩み,なかなか決まりませんでした。当初は全面フラットにして,最短のルートとしてサイトの前を通す計画でしたが,海を見ながらまったりとしている目の前を車に通られると,雰囲気が台無しです。いろいろと悩んでいたら,管理人が,サイトの後ろを通したらと一言。なるほど,一段高くしてサイトの後ろに連絡道路があれば,視界を遮ることもなく,景色を楽しんでいただけます。
一度は全フラットにしようと思っていたけれど,管理人の一言によって連絡道はすべてサイトの後ろ側,つまり山側を通すことにしました。それで連絡道が一段高くなっているのです。いろいろとやっている中で最善の策を見つけることが多いです。
サイトの形が整うと次はサイト表面に砂利を敷きます。当キャンプ場はみかん畑の一部をサイトにしています。畑の土なので,雨が降るとぬかるんでしまい,テントやギアがドロドロになる可能性があります。砂利を厚盛りにしているわけではないので,全く汚れないことはないと思いますが,泥汚れが軽減できるのではないかと考え敷いています。
まずは砂利を敷く前にサイトをレイキで均し,80㎏のプレートコンパクターで踏み固めました。その後砂利をスコップで均等にまき,再度,プレートコンパクターで踏み固めました。夏場にやったこの作業は正直きつかったですね。この中古で買ったプレートコンパクター,元気よく動いてくれます。たまに機嫌を損ね,エンジンがかかりにくい時もありますが,一旦動き出すとブルブルとよく働いてくれます。よき相棒となっています。
傾斜しているサイトを平坦にするため,高い方を削り,低い方へその土を移し盛り土して整えました。もともと段々畑のようになっていたところへ盛り土をしたので,さらに段差が大きく高くなっています。法面に草生え,足下が見えにくくもなっています。転落したら大変です。そこで法面との境目あたりに転落注意喚起用の柵を設置しました。これは「ここより先は危険ですよ」と注意喚起することを目的としているので,全く強度はありません。座ったり足をかけたりすると倒壊するのでご注意いただきたいです。くれぐれも転落しないよう気をつけてください。
サイトが整うと,いよいよ設備面の整備です。キャンプ場には必須の流し場を作らなければなりません。まずは1m程度の穴を掘り,自然浸透排水溝を作りました。その上に流し台を設置し,業者に水道を小屋から引いてもらいました。そこに管理人手作りの屋根を設置しました。最後に照明と棚を取り付け完成です。手作り感満載ですが,流し場としてはちゃんと機能してくれています。お湯が出れば申し分ないのですが,ここまで湯を引くのは今は難しいです。後々ゆっくりと考えたいと思っています。
キャンプ場に限らず,レジャー施設で最も大切な設備の一つとしてトイレが挙げられると思います。きれいであることは絶対条件で,さらに清潔感があり,使い勝手がよく便利な機能が備わっていると完璧です。そう考えるとウォシュレット機能付き水洗洋式便器は必須でしょう。
まずは汚水を溜める800Lの便層を埋めるところから始めました。地中160㎝の大きな穴を掘り,そこへ便層を埋めます。汚水はそこへ溜まる仕組みになっています。つまり仕組みは汲み取り式のトイレですが,水洗トイレというわけです。
作りたいのは一人用のトイレ小屋ですが,その中には両方の便器を備えます。洋式便器だけの設置で困ることはないのですか,両方設置することで,洋式便器があまり汚れなくなり,気持ちよく使っていただけるのではないかと考えたわけです。洋式便器で小便をすると小便が飛び散り,便座に座りたくなくなってしまうこともあるのではないでしょうか。当キャンプ場では,洋式便器と小便器を設置することにしました。高規格キャンプ場とはいきませんが,どなた様も気持ちよく利用できる手作りキャンプ場を目指しているところです。
待望の水洗トイレがやっと完成しました。外観は・・・とりあえずの風雨対策で,ポリカの波板を周囲に貼っただけです。廃材を一部に使っているため,ドアもきれいではありません。外観については今後少しずつ手を加え,もっと見栄えのするものへと改良する予定です。まっ,みかん畑にはあっているトイレ小屋ですが・・・。
せめて中だけはと,ちょっとだけおしゃれにしてみました。白を基調にナチュラル風に細工をしてみました。これで快適に使用できるのではないかと思います。当面はこの状態です。
流し場が一番先にできました。その流し場の隣にトイレ小屋を作ったため,隣り合わせになっていました。ところが,流し場のすぐ隣にトイレがあると,用を足しにくい,とのご意見があり,流し場を管理小屋のすぐ下に移設しました。これで流し場で洗い物をしていても,気にすることなく用を足すことができますね。
そして,今後はその開いたところ,トイレ小屋の左隣に,女性専用トイレを作る予定です。その前に今あるトイレ小屋の外壁をおしゃれにするため「下見張り」にする計画です。まだまだやることはありますね。
12月の中旬に休業日を設け,2つのサイトを整備しやっと完成にこぎ着けました。
画像上のサイト7は,当キャンプ場の最も下段で,最も海に近い場所です。海をしっかり感じたい場合はおすすめです。横が10m,縦が7mと横広なので大型ドームテントも張れるかもしれません。
画像下のサイト6は,当キャンプ場で最も西側にあるサイトです。右は草木,前には数本の雑木があるため,プライベート感たっぷりです。秘密基地のような空間です。右,前に雑草雑木などの障害物があるため,冬季によく吹く南西からの風が軽減できるサイトです。
開設予定だったサイト8は,しばらく開設しないことにしましたので,サイト拡張工事はこれにて終了です。
サイトが整い,全てのサイトが使えるようになると,いよいよ最終段階です。前々から計画していた連絡道への砂利敷きです。雨が降らないときはよいのですが,まとまった雨が降ると,ぬかるんでしまいます。そんな状態のところを自動車が通ったり歩いたりするのはあまり好ましくありません。そこで,いつもお世話になっているところから砂利を仕入れ,連絡道に敷き詰めました。上段の一部を除き,ほぼ全体に敷き詰めることができました。敷き詰めた後はお決まりのプレートコパクターで踏み固め,安定した地面に仕上げました。まだ一部分で砂利が少なかったり,地面が柔らかかったりする箇所があるので,少しずつ砂利を加え,より安定した地面の連絡道へと仕上げていくつもりです。梅雨時期に入ると,砂利の間から無限に伸びてくる草の処理に奮闘することになるでしょう。
少しずつ当キャンプ場を訪れてくれるキャンパーさんが増えてきたため,GWを前に女性用トイレを作ることにしました。トイレ渋滞解消となれば一安心です。前回作った男女共用トイレを参考に,今度は完全DIYで完成を目指しました。基礎工事,建物設置,便座設置,そして電源,水回りを整え,とりあえず使えるようになるところまでもっていきました。その後,内壁にペンキを塗ったり,装飾を施したりして,気持ちよく使っていただけるよう,ちょっとだけおしゃれに明るいトイレにしました。キャンプ場選びに,トイレはとても大切な要素です。女性キャンパーさんはトイレでキャンプ場を選ぶと言っても過言ではありません。どうぞ安心してご来場くださいませ。
サイト7をより安全に使っていただけるよう,車止め設置と地盤の改良を行いました。さすがに今回の作業は大がかりなため,業者に依頼しました。まずは大量の砂利を敷き,ユンボで整地し,土手の処理をしました。連絡道路の突き当りにコンクリートブロックを7つ置き,車止め兼土砂崩れ防止としました。今後は,転落防止とコンクリートブロックを目立たなくさせるため,手前に木柵を設置する予定です。
サイト拡張計画の第2段として,サイト8の開設に向け,造成・整地を行いました。このサイトは非常にこじんまりとしていて,バックパッカーや自転車,バイクでキャンプを楽しんでおられる方向けのサイトになります。縦が5m,横が5mしかない極小サイズです。目の前に海が広がり,サイト7の趣はあるのですが,残念なことに電柱が中央に鎮座しており,景観を悪くしています。ただ,この電柱にランタン等照明器具をひっかけると,ランタンハンガーの代わりをしてくれそうで,極少荷物のミニマリストキャンパーには重宝しそうな感じがします。
サイト8の整地が終わり,転圧機をかけてある程度固めることができたらほぼ完成です。すぐにでも開設できるのですが,使わない期間が長すぎると,すぐに草に覆われてしまいます。そこで,このサイトは防草効果を期待し,人工芝を敷き詰めることにしました。通販でリアル人工芝なるものを取り寄せ,敷き詰めてみたところ,予想以上の特別感が感じられるものとなりました。テントやギアが汚れない,ふかふかしていて気持ちいい,草まみれにならないなど,効果は絶大です。サイクリストやバックパッカーなど,荷物を最小限にしているキャンパーさんに優しいサイトとなるのではないでしょうか。ちなみに,焚火台の下にブロック,木板,焚火シートを敷いていただけると,焚火をすることができます。人工芝を溶かさないよう気を付けてご利用いただけるとうれしいです。
サイト7に土留めと車両止めを兼ねたコンクリートブロックを置きましたが,そのコンクリートが人工の構造物すぎて,周囲の景観に合わないのです。何とかならないものかと思案していたところ,木板を貼り,ウッドデッキ,ウッドベンチ風にしてはどうかと,管理人からの提案がありました。検討の末,この案で事を進めることにしました。管理人と補佐でコンクリートブロックに細工して,木板を周囲に貼り付け,防腐剤を塗って仕上げました。むき出しの白いコンクリートが木板によって見えなくなり,とても感じの良いロングウッドベンチになりました。単なる土留めとしてのコンクリートブロックが,荷物を置いたり,寝転んで星を眺めたりできる多目的ロングベンチへと生まれ変わりました。
前々から何とかしたいと構想していた下段サイトから流し台,トイレへ行くショートカットのための階段を設置しました。家屋解体で出た廃材を組み合わせ,木製階段を作りました。家の梁や柱に使われていた太くて分厚い木材を組み合わせ,階段上に積み上げただけの階段ですが,ずっしりと重く,ずれたり崩れたりすることはありません。安心してご利用ください。手作りキャンプ場が,ますます手作り感が増した大人のキャンプ場へとアップグレードしました。
サイト1~3を造成した時,土を低い方へ寄せて平坦を作り,サイトを確保していたので,法面をきちんと整えていませんでした。結果,無駄なスペースが生まれ,そこに草が伸び放題となってしまいました。そこでこの無駄な法面を整備し直すことで,サイトの面積を大きくし,有効的に使え範囲を広くしようと考えました。まず,法面全体に茂っていた草を除去し,等間隔に鉄杭を打ちます。その鉄杭を支柱にして木柱を横に並べていき土留めを作ります。鉄杭が外へと倒れないようワイヤーを引っかけておきます。ワイヤーの先は土中深くに埋め込んでおきます。約30m,この方法で土留めを設置し法面を整えた後,ユンボとダンプを使って土石を慎重に入れていきます。その後整地して砂利を敷き直し,転圧して完成です。真夏の閑散期を使う大規模工事となりましたが,何とか数日で整えることができました。真夏ということで土が乾燥してさらさらで,転圧してもその効果がほとんどないという状態に不安を感じましたが,翌日,運良くまとまった雨が降ってくれたおかげで,法面付近の土壌はしっかりと固まってくれました。最後にプラ杭を打ち,転落防止用のロープを張って完成です。サイト全体がよりフラットになったばかりか,無駄なスペースがなくなり,見た目もよくなりました。転落には十分注意して,高台から海が見えるサイトでのキャンプをお楽しみください。