2025. 10. 31
これまで数節に渡って、古英語期にみられたラテン借用語について議論を重ねてきた。本節では翻って、Jespersen が以下のように語る。
It is not astonishing that the English should have learned some Latin words connected with the new faith, but it is astonishing, especially in the light of what later generations did, that they should have utilized the resources of their own language to so great an extent as was actually the case.
イギリス人が新しい信仰と結びついたラテン語の単語を学び取ったことは驚くべきことではない。むしろ驚くべきは、特に後の世代が行なったことの観点から見てそうなのは、彼らが実際にしてみせたように自身の言語の資源を大いに利用したということである。
ここで言う「後の世代が行なったこと」とは、特にノルマン征服以後、イギリス人が語彙増強において英語内部での語形成より借用に頼ることになっていくということを想定していると思われる。なお Jespersen は上記のように述べた上で、古英語話者が行なった借用以外の3つの語彙増強策を提示している。
借用語と本来語の接辞による語形成
本来語の意味の修正
本来語の複合
今回は1.の「借用語と本来語の接辞による語形成」を見てみる。このような過程を経て造語された語は、専門的には混種語(hybrid)と呼ばれている。Jespersen の挙げる具体例を少し引いておくと、例えば preosthad "priesthood", clerichad "priesthood", sacerdhad "priesthood", biscophad "episcopate" などがある。これらの語は語幹は借用語の要素であるが、すべてに本来語の接尾辞 -had が共通している。
参考文献
Jespersen, Otto. Growth and Structure of the English Language. 10th ed. Oxford: OUP, 1997[1905].