2025. 10. 7
Chapter 2 では英語がブリテン島にもたらされる以前の話、いわば英語「前」史が語られる。その導入として本節では英語史のスタートはどこか、言い換えれば Chapter 2 のゴールとなる地点はどこかということがまず言及されている。
The existence of the English language as a separate idiom began when Germanic tribes had occupied all the lowlands of Great Britain and when accordingly the invasions from the continent were discontinued, so that the settlers in their new homes were cut off from that steady intercourse with their continental relations which always is an imperative condition of linguistic unity.
英語が独立した言語として成立し始めたのは、ゲルマン民族がブリテン島の低地を占領し、大陸からの侵入が途絶えたときである。こうして新しい土地に定住した人々は、大陸に残る同族との継続的な交流が断たれた。そのような交流こそが、言語的統一のための不可欠な条件であった。
ここから、Jespersen はゲルマン民族が 449 年にブリテン島に侵入して以後を英語史としていることを読みとっておきたい。なお、最古の英語の文献資料は700年ごろまでにしかさかのぼることはできないとも指摘がある。いずれにせよ、Chapter 2 は449年以前についての話ということになる。
ところで、現存する最古の英文と言えば5世紀に制作されたと伝わる bracteate pendant がある。イングランドの Suffolk 州 Undley で見つかった、直径2.3cm・重さ2.24gの金のメダルだ。David Crystal の解説動画によれば、畑で農作業中に発見されたらしいから驚きである。ルーン文字で刻まれたその内容はローマ字で転写すると 'gægogæ mægæ medu' となるが、意味自体はよく分かっていないようだ(堀田 2010)。 最近の研究成果をもとした The British Museum の解説では、 ‘howling she-wolf’「吠える雌の狼」そして ‘reward to a relative’「親族に捧ぐ」という風に意味が当てられている。
参考文献
堀田隆一「#572. 現存する最古の英文」『hellog~英語史ブログ』2010年11月20日。(2025年10月7日閲覧)
Jespersen, Otto. Growth and Structure of the English Language. 10th ed. Oxford: OUP, 1997[1905].