2025. 10. 5
前々節及び前節で見たように英文法は相対的に厳格性が低いが、英語語彙についてはどうであろうか。Jespersen は次のように指摘している。
In England every writer is, and has always been, free to take his words where he chooses, whether from the ordinary stock of everyday words, from native dialects, from old authors, or from other languages, dead or living. The consequence has been that English dictionaries comprise a larger number of words than those of any other nation, and that they present a variegated picture of terms from the four quarters of the globe.
イングランドでは、あらゆる作家が今もこれまでも常に、自分の好むところから自由に言葉を選択できる。日々蓄えた日常語からでも、生まれ持った方言からでも、過去の作家からでも、或いは死語でも現代語でも他言語からとっても構わないのである。その結果、英語辞書は他国の辞書より多くの語を収録し、地球の四方からやってきた語の多様な叙述を提示している。
このような事情の背景には、フランスやイタリアと異なり、イギリスは語彙の統制を一つの使命とするアカデミアの設立に失敗したことがあるという。
続けて、男女間の語彙使用の差異にも目が向けられている。女性が限定的な語彙使用で語の流れを自然にする一方で、男性はより多くの語彙を使用し自分の考えを伝えるのに正確な語を選び取ろうとするのだという。統計的に見ても、どもる人は男性に多く、外国語を/に訳すのは男性のが優れている。一方、外国語で自分を表現するのは女性のが優れているという。また女性が書いた小説より、男性が書いた小説の方が読むのが難しく難しい語が多く含まれており、英語に語彙が豊富なことと「男性性」というのがここで結びついてくる。
ところで今回の箇所には英文解釈好きにはたまらない、非常に訳しがいのある so that 構文があった。自身のある方はぜひ和訳にも挑戦してみてほしい。まさしく読んでいて気持ちの良い文の一例であろう。
Teachers of foreign languages have many occasions to admire the ease with which female students express themselves in another language after so short a time of study that most men would be able to say only few words hesitatingly and falteringly, [...]
外国語教師がしばしば感嘆するのは、女性の学生がほんの短時間の学習の後に、他言語でいかにも容易に自己表現をすることである。男性であればためらいがちにどもりながらほんの数語しか発することしかできない程の短時間に、である。
参考文献
Jespersen, Otto. Growth and Structure of the English Language. 10th ed. Oxford: OUP, 1997[1905].