これまで行ってきた研究の内容です。
主に記録計や発信器を用いて生物の行動を把握する”バイオロギング”という手法を用いて海洋生物の”行動・移動”を調べています。得られた”行動データ”を基軸として、行動生態・生理学、水産学的研究へ展開します。
また、新たな記録計の開発や情報解析技術の開発も行っています。

2020.08.15 update

サンゴ礁性魚類の生息地利用と
サンゴの健全性の関係

超音波テレメトリーという手法を用いて、サンゴ礁性魚類(ハタ類・ブダイ類等)の長期の行動圏と生息地利用を調べています。合わせて、サンゴの分布など環境基質マップと重ね合わせることで、どういった環境基質がサンゴ礁西魚類の生活場所として重要なのかを調べています。

ナミハタの繁殖生態に関する研究

ハタ類のモデㇽとして、ナミハタという魚の繁殖生態を調べています。バイオロギング技術を用いて、これまでわからなかった個々の産卵回数やペア選択などを記録できることが分かってきました。

アカウミガメの回遊、生活史に関する研究

日本の砂浜で産卵するアカウミガメの産卵後の回遊生態について調べています。アカウミガメは産卵後に東シナ海・日本沿岸の浅海域と北太平洋の外洋域で採餌する2つのタイプに分かれます。この採餌多型がなぜ生まれるのか、研究しています。

オサガメの潜水行動と体温調節

世界最大級の爬虫類オサガメは生息環境の水温と比べて高い体温を保っています。一方であまりに高水温の海域にいると身体がオーバーヒートする危険性もあります。このようなユニークな特性を持ったオサガメの北太平洋回遊時の潜水行動を網羅的に解析し、推定採餌時間は冷たい海域ほど多く、暑い海域ほど体温調整に時間を要するため、推定採餌時間が短くなっていました。つまりオサガメが高い体温を持つ特性は冷たい海域でも採餌を可能にする一方、暑い海域では常に体温調整を行わなければいけないという弊害をもたらしていると思われます。アメリカ留学時代の研究です。

重要水産魚種の回遊生態に関する研究

”美味しい”魚に発信器をつけて追跡し、その回遊経路と生態を明らかにする調査を行っています。ハマダイ、マサバなど。

ウミガメの心拍は遅い。活動するとすぐに上昇

ウミガメ類は潜水時間が長いことで有名ですが、その一番の理由は代謝速度が低いということです。代謝速度は心拍数と強く関係しますが、ウミガメの遊泳中の心拍は、甲羅が邪魔をして計測することが非常に難しいです。今回、大型水槽中ではありますが、遊泳中のアオウミガメの心拍数と活動量の同時計測に成功し、その関係性を明らかにしました。

ウミガメ類の呼吸・代謝生理に関する研究

加速度ロガーを使って頭の姿勢角を計測し、アオウミガメの呼吸回数と潜水時間や潜水目的などとの関連を調べました。その結果、休息時には沢山息を吸って有酸素潜水限界近くまで長く潜る戦術を、採餌・遊泳時には少しの呼吸で短い潜水を行う戦術を取ることがわかりました。別途、タイマイを対象に潜水行動についても調べています。

アオウミガメの採餌生態に関する研究

アオウミガメの背中にGoProや加速度ロガーを装着して、八重山諸島に棲むアオウミガメの生活の様子を明らかにしました。普段の休息場所は同じ場所を好み、朝夕2回海草藻場へ移動して採餌を行うことがわかりました。NHKエンタープライズと共同で調査を実施し、その様子は「ダーウィンが来た!」で紹介されました。

ウミガメの産卵状況に関する調査

長年産卵調査に参画している石垣島において、ウミガメの産卵状況を把握する調査を毎年行っています。
see 石垣島ウミガメ研究会

アオウミガメ雄は未成熟個体にもアプローチする

NHKエンタープライズと共同で調査中に、成熟したオスがロガーを装着した未成熟個体に交尾を迫るシーンが撮影されました。珍しいシーンなので、それだけで論文になりました。

映像解析を用いた”生物目線”の動画解析

コンピュータヴィジョンという映像解析技術を用いて、アオウミガメに装着したビデオロガーの映像を解析し、生物目線の映像から生物の挙動や意思表示を明らかにできるか調べました。解析の結果、呼吸の前後やターン時に首を事前に振っていることがわかりました。環境を目視で確認しているものと思われます。