特別講演
「解決志向の「場」をつくる」
講師 西田 博明 氏
(公認心理師、株式会社Tomoni代表取締役)
共催セミナー
「朝起きられないを考える」
講師 呉 宗憲 先生
(東京医科大学小児科 准教授)
共催:ノーベルファーマ株式会社
一般演題
18演題
(神経発達症、心理療法、心身症の3セッション)
会長講演
「起立性調節障害診療への新たな視点」
大会長 吉田 誠司
(大阪医科薬科大学小児科 助教)
特別講演
「解決志向の「場」をつくる」
講師 西田 博明 氏
(公認心理師、株式会社Tomoni代表取締役)
短期療法の一種である解決志向アプローチ(ソリューションフォーカス)に出会ったときに衝撃を受けたのが「セラピストが楽をすればするほど、いいセラピーだ」という言葉でした。いまだに「あれはどういう意味だったんだろうか。先生は何を伝えたくて、あの言葉をくれたんだろうか」なんて考えることがあります。確かに解決志向の先達たちは、確かに、楽に、軽やかに支援を行っていて・・・にもかかわらず、効果が長続きしているようにも見えたのです。
15年実践をしていく中で、その鍵のひとつが「オーナーシップを持つのは、誰なのか?」ということのように思っています。私たちは相手の助けになりたいからこそ、一生懸命頑張ります。その努力の結果、素晴しい成果が出ることもありますし、その姿勢にクライアントさんが触発されて、前に進み始めることもあります。その一方で、支援者側が頑張りすぎることで、オーナーシップを握ってしまい、クライアントさん自身の「よくなっていく力」を引き出しきれない時もあるのかもしれません。
当日は体験的な要素も取り混ぜつつ、私たちがあえて、力を抜くことでできることはどんなことか、どうすれば、クライアントさん自身を解決の主体とし支えることができるのかということについて、ご一緒に考えて行ければと思っております。
普段はコーチングやファシリテーションを中心に活動している、私のような門外漢がこのような大任を仰せ付かり身の縮む思いではあります。「でも、門外漢だからこそ、新しい視点を提供できるかもしれない」と開き直り、心を込めて学びを共有いたします。
※本講演は体験的なワーク(実習)を含みます。
【略歴】
公認心理師
2006年 国際基督教大学卒業(社会学専攻)
2008年 株式会社Tomoni設立 代表取締役に就任
2012年 スイス最大のコーチ養成機関Solutionsurfers招聘。東洋の身体性と解決志向アプローチを組み合わせたワークショップ「Coaching in Motion」を提供
2014年 コスタリカ国連平和大学修士
2016年「PBグローバルスクール」にて引きこもりや不登校など生きづらさを抱える若者たちと3か月共同生活
2020年 公認心理師資格取得
2021年 大阪成蹊大学非常勤講師
転換期に直面する人をコーチとして支援する傍ら、ゲーム感覚で「心のインナーマッスル」を鍛え、対人支援における質問力と対応力を養成する「コーチングダイス®」(https://tomoni-inc.com/coaching-dice/)を通じたコーチ育成など、様々な活動をしている。
著書
「世界とつながるゼロ円渡航術」
訳書
「学校で活かすいじめへの解決志向プログラム: 個と集団の力を引き出す実践方法」スー・ヤング著 黒沢幸子監訳
「簡単でシンプルなコーチング」(COACHING PLAIN & SIMPLE‐Solurion-focused Brief Coaching Essentials)ピーター・ザーボ/ダニエル・マイヤー著 青木安輝監訳
会長講演
「起立性調節障害診療への新たな視点」
大会長 吉田 誠司
(大阪医科薬科大学小児科 助教)
今回の地方会テーマ『ココロとカラダへの新たな視点!』に関連し、起立性調節障害(OD)診療への新たな視点となる当院の研究成果をBio-Psycho-Social(BPS)の視点もあわせて紹介します。
研究①『体位性頻脈症候群(POTS)の亜型(SuPOTSとSI POTS)の検討』
〔背景・方法〕臥位からすでに頻脈のSu (Supaine) POTSと立位で頻脈になるSI (Standing- Induced) POTSとの相違点を調べるため、Su POTSとSI POTSの血行動態、自律神経機能、不安などを比較検討した。
〔結果・考察〕Su POTSの方が臥位で心拍出量が少なく、副交感神経機能が低く、不安傾向が高いことから、Su POTSはBio-Psycho両面の治療介入が欠かせないといえる。
研究②『腹圧バンドの有効性評価』
〔背景・方法〕腹圧バンドの有効性を評価するため、腹圧バンド装着群と非装着群とのクロスオーバー試験を実施し、起立時症状、血行動態、自律神経機能などを比較検討した。
〔結果・考察〕腹圧バンド着用群は起立時症状が軽減し、起立時の心拍出量の増加がみられた。腹圧バンドによる腹腔血管の静脈貯留の減少による効果と考えられ、Bioからの治療介入は有用といえる。
研究③『母子関係や性格特性』
〔背景・方法〕ODの患者さんの母子関係や性格特性を評価するため、心理テストや自律神経機能検査を実施し検討した。
〔結果・考察〕母親のしつけの厳しさの程度が低い方が良好な母子関係の構築につながり、母親の介入が過剰だと子どもはストレスを感じやすく、被拒絶感を感じている子ほど臥位での交感神経機能が低いことが分かった。これはPsychoの視点から有益な知見といえる。
研究④『OD療育キャンプ』
〔背景・方法〕ODの患者さんを対象とした療育キャンプの有用性を、心理テストや自律神経機能検査から検討した。
〔結果・考察〕キャンプ中には自律神経機能の改善や状態不安の改善がみられた。またキャンプ3か月後に孤独感の質的な成長がみられた。この成長は同じ疾患をもつ者同士のピアカウンセリングにより疾病受容が促され、他者とは異なる自分を受け容れられたことも一因と推測した。これはSocialからのアプローチといえる。
これら4つの研究からも分かるようにODの診療にはBPSそれぞれへのアプローチが大切であり、BPSモデルや全人的医療についても検討したいと思います。