過去の研究会情報
過去の研究会・ワークショップなどの情報や活動記録などを掲載しています。
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研究法研究部会 特別企画
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い,人を対象とする研究を対面で行うことが難しい状況となりました。このような状況下においても,あるいは,このような状況下においてこそ,人の心に関する研究は重要な意義を持つことでしょう。非対面状況でのコミュニケーション,遠隔での教授・学習と動機づけの維持,制限された状況下でのストレスと不安など,いずれも心理学に深く関わる問題です。また,卒業論文や修士論文など,一定の期間内に何らかの研究成果を強く求められる立場もあります。パンデミック下において,心理学的研究のためにどのような研究の方法がありえるのかを探ることが急務といえます。本研究会は,多くの実験参加者から対面でデータを集めることが難しい状況で,どのような形で研究を進めることができるのかを考えることを目的とします。具体的には,オンラインでの実験実施に利用できる実験プログラムの作成,オンラインでの実験実施におけるさまざまな工夫,過去に蓄積されたデータの再分析について紹介します。
研究会の動画をご覧いただくためには,以下の参加申込フォームより参加登録してください。登録いただくと自動返信で配信動画のパスワードをお送りいたしますので,そのパスワードを動画画面に入力して視聴してください。日本認知心理学会および研究法研究部会の会員の方に限らず,どなたでもご参加いただけます。
参加者の皆さまは発表動画を期間中何度でも視聴することができます。ご質問やコメントがある場合には,本ページ最下部の質問フォームから受け付けております。動画の公開期間,およびご質問の受付と回答の掲示期間は以下の通りです
動画公開期間:8月1日〜8月31日
質問受付期間:8月1日〜8月20日
回答掲示期間:8月25日〜8月31日
ご不明な点がございましたら,「お問い合わせ」よりご連絡ください。
大杉尚之 先生(山形大学)ブラウザ完結型でGUIベースの心理学実験環境の提案
小林正法 先生(山形大学)オンライン心理学実験
国里愛彦 先生(専修大学)2次分析研究
各先生へ寄せられた質問についてご回答をいただきました。
大杉先生と小林先生への質問
大杉先生と小林先生のLab.js授業用サイトをいつも参考にさせていただいております。動画内でも仰っていましたが、確かにLab.jsは公式の情報が不十分であると感じました。また自分自身Scriptに関する知識がなく、刺激順序のランダム化などで困ることが多いです。オンライン実験のためjsPsychの利用も検討しているのですが、Lab.jsとjsPsychどちらを使うにしても、やはりJavaScriptなどの知識を身に着けるべきなのでしょうか。もし「JavaScriptのこんな知識が実験のこんな部分の作成に役立った」という具体的な経験などあれば教えていただきたく存じます。夏期休暇中の勉強の指針として参考にさせていただきたいです。
大杉先生からのご回答
私たちのウェブサイトを見ていただき,ありがとうございます。JavaScriptの知識習得の質問に関してですが,作りたい実験があり,それを作るためにはJavaScriptを覚える必要があるのであれば勉強するべきだと思います。一方,Builderやサンプルプログラムの流用で何とかなるのであれば,今すぐに覚えなくても良いのかもしれません。私は元々,MATLABとPsychtoolboxを使って実験を作っており,そこで作っていたプログラムをJavaScriptで再現しようというモチベーションでプログラムを作っています。
私が学生の頃に作った最初の実験では,視覚探索の刺激1000枚などを画像編集ソフトで手作業で作成しており,1週間以上かけて手首を痛めながら頑張りました(その経験があるので,プログラムでランダムな位置に刺激を配置してくれるのを見たときはとても感動しました)。基本的には,どんな方法でも作りたいものが作れれば,それで良いのだと私は思います。ただ,以下の場合には,(JavaScriptに限らず)プログラムの知識を習得していた方が有利だと思います。
時間精度や刺激描画の正確さが要求される実験を行う場合
ランダムにたくさん刺激を配置する場合
運動する刺激や高速で変化する刺激を使いたい場合
刺激順序のランダム化などを細かく設定したい場合
最後に,プログラムを勉強する際に,Lab.js勉強用ページや公式Slackで手に入れたScriptを色々と壊してみて,どこを消すと動かなくなるか試してみると理解が進むと思います。
小林先生からのご回答
lab.jsかjsPsychですが,jsPsychの方が自由度は高いかと思います。その分,画面への配置・レイアウトなどについて自分で設定しないといけないことが多い印象です。lab.jsはレイアウト用のclassがいくつか用意されていたり,元々,質問紙などのレイアウトは整っているので,jsPsychよりは楽な印象です。ただ,授業や卒論などでプログラミングを教える必要がある立場にいらっしゃる方でしたら,lab.jsの方がおすすめ度は高いです。
JavaScriptの知識として,私自身もあまり詳しくないのですが,やりたいことに合わせて必要に応じて調べてということが多いです。例えば,ランダム並び替えを行う場合では,jsPsychやlab.jsではランダム並び替え用の関数がいくつか用意されているので,自身でランダム化のコードを書く必要がない場合が多いです(複雑なものは別ですが)。
lab.jsを利用されてる場合ですが,GUIではどうしてもヒューマンエラーが起きやすいので,Scriptsで実装した方がエラーの防止や修正がやりやすい点はメリットですね。例えば,lab.jsのGUIで作ったものをScriptsで再現するなどは学習という点でも,実験作成という点でもよいかもしれまん。
自分でScriptsを書く際には変数の型,配列,ループといったプログラミングの前提知識があると楽かもしれません。一般的なJavaScriptの入門書を1冊読む程度で十分なのではないかと思います。
小林先生への質問
オンライン実験を用いた研究を所属期間の倫理審査に出す際に,何か注意されている点はありますでしょうか。
小林先生からのご回答
いくつかあるので列挙します。ただ,基本的には所属機関の倫理審査委員会に依存するという点はご留意ください。
オンラインでは実験者が不在であるため,中止したい場合には参加者の方に操作して頂くしかないため,中止方法を定期的に表示しています
匿名化はされているので,必要以上の個人情報は取得しないようにしています(年齢のみ必須で性別は聞きますが,自由記入にしています)
ネガティブ刺激については文字は質問紙などに含まれる場合があるので使用しますが,ネガティブな画像や動画などは使わないようにしています。
また,ソフトウェアによりますが,何らかのインストールが必要な場合は安全性の表記も考慮しています。
サーバー上のデータに外部アクセスが出来ないようにしています(ほぼJATOS頼りですが)
国里先生への質問
二次分析のお話,興味深く拝聴しました。二次分析を中心としてどのような形で論文がまとめられるかに関心があります。二次分析をうまく使った論文や書籍の例があればご教示いただけないでしょうか。
国里先生からのご回答
心理学でも二次分析論文は結構ありますが,二次分析のよさ(データを統合して大規模に実施できる,データが共有されているのですぐに他の研究者が検証できる)が出ている論文としては,動画でも紹介した以下の論文はいかがでしょうか?
Freudenstein, J.-P., Strauch, C., Mussel, P., & Ziegler, M. (2019). Four personality types may be neither robust nor exhaustive [Review of Four personality types may be neither robust nor exhaustive]. Nature Human Behaviour, 3(10), 1045–1046.
少し古いですが心理学における二次分析についてまとめた教科書としては以下があります。
Stewart, D. W. (2012). Secondary analysis and archival research: Using data collected by others. In APA handbook of research methods in psychology, Vol 3: Data analysis and research publication. (pp. 473–484). American Psychological Association.
こちらも動画で紹介しましたが,プレレジ用のテンプレートはそのまま二次分析研究の研究を計画するのに使用できるかと思います。
Van den Akker, O., Weston, S. J., Campbell, L., Chopik, W. J., Damian, R. I., Davis-Kean, P., Hall, A. N., Kosie, J. E., Kruse, E. T., Olsen, J., Ritchie, S. J., Valentine, K. D., van ’t Veer, A. E., & Bakker, M. (preprint). Preregistration of secondary data analysis: A template and tutorial. https://doi.org/10.31234/osf.io/hvfmr