データ視覚化コレクション

企画主旨

近年,データ視覚化(data visualization)が改めて注目を集めています。ウェブ上にはデータ視覚化に関する情報があふれ,書籍が多数出版され,セミナーや講座なども活発に開かれています。この動きの背景にはさまざまな要因があると思われますが,心理学的研究の観点からするならば,研究慣習の問い直しを迫る再現性クライシスの問題があるでしょう。再現性の問題は,研究データの質保証を促すことにつながります。そのためのまず第一歩として,データを改めてよく検討すること,その手段としての視覚化の工夫があります。私たちはこれまであまりにも深く考えずに平均値を計算してそれを棒グラフに表してすませてきてしまったのではないでしょうか。

統計改革をはじめとする,解析技術の発展もまたデータを詳細に,そして,新たな切り口で検討することを促します。マルチレベルモデルによる分析では個体レベルの効果と集団レベルの効果を区別することができますが,そのレベルごとの違いをグラフによって視覚的に確認することは,より複雑になった分析の妥当性を確かめる手段になりえるのではないでしょうか。個別のデータをのふるまいを確認することは,外れ値の影響や分布の形状など,基礎的なデータの把握にとってもモデリングにとっても重要な情報を得る手段となります。

こうした流れを受けてか,伝統的な心理学の研究・教育では見かけることのなかったようなグラフがあちこちに見られるようになりました。その発展の勢いはさながら生物進化におけるカンブリア爆発のようです。本企画では,さまざまなデータ視覚化の手法をコンパクトな例示によって紹介することを意図しています。伝統的によく用いられたグラフについては,現在の多様な視覚化手法のなかでどのような位置づけとなるのかを改めて問い返したいと思います。目新しいグラフについては,どのような視覚化の手法であり,一般的な用途・心理学における応用はどんなものであるかを考えてみたいと思います。また,グラフそのものにとどまらず,エラーバーや色彩などのアクセサリー的要素もまた視覚化手法を問い直す対象となるでしょう。本企画がデータ視覚化に対する興味と関心を呼び,改めてデータについて問い直すきっかけとなればと思います。

コレクション

マウスオンで詳細な説明が表示されます。グラフ名をクリックするとグラフ作成用のRコード(ggplotパッケージ使用)がご覧いただけます。

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