大会シンポジウム
2日目に1件(2025年11月29日(土)), 3日目(2025年11月30日(日))に2件,合計3件のシンポジウムを予定しております。
●シンポジウム1「アファンタジアの基礎研究」
企画・司会 髙橋 純一(福島大学)
話題提供① 齋藤 五大(東北大学電気通信研究所)
話題提供② 安永 大地(金沢大学)
話題提供③ 堀川 友慈(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)
指定討論者 安村 明 (熊本大学)
企画趣旨・概要
心的イメージ(疑似知覚体験)を思い浮かべにくい特質は「アファンタジア(aphantasia)」と呼ばれており,最近になってアファンタジア群を対象とした行動実験や脳機能計測実験が行われるようになってきた。本シンポジウムでは,アファンタジア群を対象とした行動実験や脳機能計測実験を展開している話題提供者3名にそれぞれの研究をご紹介いただくことで,基礎研究の観点からアファンタジアの行動・脳機能特性に迫ることを目的とする。本シンポジウムを通して,基礎心理学からみたアファンタジア研究の展開について議論を深めたい。
●シンポジウム2「拡張ベルクソン主義に学ぶ−基礎心理学の新しいランドスケープ」
企画・司会 伊藤 浩介(新潟大学)
話題提供① 平井 靖史(慶應義塾大学)
話題提供② 澤 幸祐 (専修大学)
話題提供③ 伊藤 浩介(新潟大学)
企画趣旨・概要
心とは何か。クオリアとは何か。そして、計測の抽象化は何を見落としているのか?
基礎心理学の対象である「心」は、外界からの感覚入力と身体からの運動出力(行動が抑制される場合も含む)を媒介するプロセスである−まずはそう定義してみよう。これを時間的観点から見ると、感覚と運動が細胞膜で直結する単細胞のアメーバの心はミニマルだ。そして、神経系や脳の誕生により感覚と運動のあいだに“現在”とよばれる「時間の幅」が生まれ、その時間幅の拡張とともに心が生まれ、学習や記憶との照合や多層的な情報統合が可能になった。我々は心が時間を作ったと考えがちだが、話は逆で、時間こそが心を生んだのではないか。しかしどうやって?
本シンポジウムは、こうした根源的な問いへの手がかりとして、ベルクソンの時間哲学を現代の学際的見地からアップデートする近年の「拡張ベルクソン主義」の成果から、哲学者・平井の「マルチ時間スケール(MTS)理論」を紹介する。MTS理論は、生物における複数の時間階層(持続)に着目し、その多層性とその間の干渉という観点から、生命や意識を「非還元的に」扱う枠組みを提供する。そして哲学と心理学を架橋する具体例として、澤(学習心理学)と伊藤(認知心理学)がそれぞれオリジナルの実験データ(随伴性判断と多次元尺度構成、共感覚、脳波の種間比較)を紹介し、MTS理論による解釈を試みる。
心理学の方法論と基礎概念につき拡張ベルクソン主義に学び振り返ることで、次世代の心理学研究の新しいランドスケープが見えてくるだろう。
●シンポジウム3「知覚・認知と運動―発達の視点から考える」
企画・司会 小林 恵(新潟大学)
話題提供① 樋口 貴広(東京都立大学)
話題提供② 信迫 悟志(畿央大学)
企画趣旨・概要
ヒトの情報処理過程については,知覚・認知と運動は切り離して研究が進められることが多かった。しかし,知覚・認知と運動は別々に存在するのではなく,きわめて複雑に相互に作用しあっている。本シンポジウムでは,知覚情報を元に運動し,運動によって知覚が変化するというダイナミックな相互作用について,発達の視点から議論を深めたい。話題提供者の先生方には,高齢者や発達性協調運動症(Developmental Coodination Disorder: DCD)に関するそれぞれの研究をご紹介いただく予定である。