テラヘルツ・リモート・センシングは、T波やサブミリ波とも呼ばれるテラヘルツ波をセンシングやイメージングに利用する、エキサイティングで新しい分野です。テラヘルツ波は赤外線とマイクロ波の中間の周波数を持ち、0.1~10テラヘルツ(THz)の範囲にあります。テラヘルツ波は、赤外線とマイクロ波の間のギャップを埋める、電磁スペクトルの中でユニークな位置を占めています。
従来、リモートセンシングは主に可視光線と赤外線に頼って地表の観測と画像撮影を行ってきました。これらの技術は多くの用途に有効であることが証明されていますが、テラヘルツリモートセンシングには明確な利点があります。
テラヘルツ波の特筆すべき利点のひとつは、非金属物体を高精度で透過する能力です。この特性により、テラヘルツ・リモート・センシングは、隠された物体を画像化し、検出するための強力なツールとなります。例えば、空港や国境でのセキュリティ・スクリーニングに利用でき、隠された武器や禁制品を検出することができます。
リモートセンシングは、電磁波を使用して人間の視覚の限界を超えて世界を認識するための最新技術です。人間は主に赤から紫までの可視光に依存していますが、遠隔センシングは赤外線、紫外線、X線、マイクロ波、テラヘルツ波など、さまざまな電磁波を使用して「見る」ことを可能にします。
私たちの視覚は、特殊なレンズを通して目に可視光を集め、網膜にあるセンサーで光の信号を検出し、脳で情報を処理します。同様に、リモートセンシングは、電磁波の特定の周波数に合わせた集波器やセンサーと呼ばれる特殊な機器を利用します。これにより、それぞれの周波数特有の視点から世界を探索することができます。
異なる周波数を使うことで、世界はまったく違って見えます。透明という性質でさえ、電磁波の周波数によって異なります。例えば、可視光線では私たちの皮膚は不透明に見えるが、X線を使うと透明になります。逆に、UVカットガラスのように可視光線には透明な素材は、紫外線を受けると不透明になります。
物質がそれ自身の周波数の電磁波を放出する能力を利用することで、貴重な洞察を得ることができます。物体に光または電波を照射することで、材料はその特有の周波数のみを反射します。この性質を利用して、物体や物質の組成を推測することができます。
テラヘルツ・リモートセンシングの利点
電磁波の一種であるテラヘルツ波は、リモートセンシングにおいて非常に優れた能力を発揮します。
分子間振動から生じる吸収ピークを検出することで、大気中の低質量分子、イオン、短寿命ラジカルを識別することができます。この卓越した利点により、テラヘルツ・リモートセンシングは惑星探査において非常に重要なものとなっています。
また、テラヘルツ波は、惑星の大気と表面に存在する水、酸素、二酸化炭素などの重要な分子を同時に検出できます。これらは宇宙での人間活動にとって不可欠であるため、テラヘルツ遠隔センシングは重要な資源を確保する点で重要です。
さらに、テラヘルツ波は水分子に対して比類のない感度を示すため、宇宙探査において特に価値があります。テラヘルツ波技術は、マイクロ波やミリ波に比べて波長が短いため、装置の小型化が可能です。観測精度を高めた小型アンテナを組み込むことができ、宇宙船や国際宇宙ステーション(ISS)内の貴重なスペースを最適化できます。この小型化により、宇宙空間の共有利用が促進され、探査の機会が拡大します。
宇宙探査にとどまらず、テラヘルツ・リモートセンシングは地上でも実用化されています。水蒸気(H2O)、酸素(O2)、PM2.5やオゾン(O3)などの様々な大気汚染物質などの低質量分子の観測は、テラヘルツ波を使って効率的に行われています。観測地点や気象条件に制約される地上観測とは対照的に、人工衛星に搭載された超小型観測機器は、宇宙から精密かつ包括的な観測を行えるという利点があります。
※ トップ画像の出典