プログラム

第2回社会連携セクション 開催概要

  • 日本心理学会第85回大会(オンライン)において、「第2回 社会連携セクション」を開催します。5名の認定心理士の方々に,「認定心理士として社会で実践していること」をテーマにご発表いただきます。認定心理士が日常の生活や業務の中で心理学を実践している事例や,心理学について考えている/行っている研究内容となります。本シンポジウムは一般公開されるため,全ての視聴者は発表に対する質問を行うことができます。ぜひ,発表をご覧になり,自由に議論し,意見交換する場としていただきたいと思います。

  • 日時:2021年9月1日(水)-8日(水)(期間中のみ,動画視聴可能)

  • 第85回大会HP【一般公開講座] 第二回社会連携セクション URL
    https://confit.atlas.jp/guide/event/jpa2021/static/Openlecture5

学会企画シンポジウム「第2回社会連携セクション」

  • 企画:日本心理学会 認定心理士の会、髙瀨 堅吉(自治医科大学

  • 指定討論者:光藤 宏行(九州大学)、大崎 博史(国立特別支援教育総合研究所) 

  • 企画代表者・司会者:伏島 あゆみ(金沢工業大学) 

発表タイトル一覧

  • 1.上村 裕章(BEC 行動・教育コンサルティング):「ABA(応用行動分析学)による支援」

  • 2.樋口 幸代(北九州市生涯発達課人材バンクまなびネットひまわり):「両親のパーソナリティ特性が子どものパーソナリティ発達に与える影響」

  • 3. 天野 治子(岐阜市立日野小学校):「小学校の学級における発達支援」

  • 4. 三木 政英(事業構想大学院大学/NTTビジネスソリューションズ)・清水香奈子(無所属):「学校・職場環境での自他尊重・相互理解を促進する『Delight Sharing』の活用」

  • 5. 小松 渓太(御嵩町教育委員会):「中学校常駐相談員としての継続的心理支援」

発表1. 上村 裕章(BEC 行動・教育コンサルティング):「ABA(応用行動分析学)による支援」

 ABA(応用行動分析学)を専門とし、エビデンスベースドプラクティスの実践研究家として、発達・精神・学習・行動障がい児に対しての早期(未就学期)集中行動介入の重要性また早期段階後の行動介入による問題解決を全世界レベルで実践しています。最近では成人支援、また支援者支援教育にも力をいれており、幼稚園、保育園、こども園、児童発達支援、放課後等デイサービスなどの乳幼児期対応をされている職員や、ショートステイ、就労支援、グループホーム、訪問看護の職員、更には企業コンサルテーションにおけるパフォーマンスマネジメント等、人間が生きている日常生活の場で応用しQOLを高く維持できるようにABAの普及活動をしています。

発表2. 樋口 幸代(北九州市生涯発達課人材バンクまなびネットひまわり):「両親のパーソナリティ特性が子どものパーソナリティ発達に与える影響」

 今日、コロナ禍もあり人の日常に存在する非日常的行為がクローズアップされている。例えば「愛情を受けたい子どもが自己正当化のために行う相手批判感覚」からのパワハラ行為や鬱感情からの自殺などである。非日常的行為は日常感情と切り離されたものだろうか。日常の親子は物理的に近い存在にあり、子どもの行動と感情の土台は両親のパーソナリティ特性に影響されていると予想される。本論文は日常感情と非日常的行為の関係を、両親のパーソナリティ特性を起因とした家庭内力動から詳細にする。感情はエゴグラムで、行為は自尊感情尺度で測り、日常感情と非日常的行為の関係性を考察する。

発表3. 天野 治子(岐阜市立日野小学校):「小学校の学級における発達支援」

 私は、現在小学校の1,2年生の教室内でハートフルサポーターという仕事をしています。支援の必要な児童を中心に、担任の先生を補助しながら学習や生活面のサポートをしています。毎年、どのクラスにも、4~5名の対象者があります。発達支援の本を読んで、ヒントを得たり、具体的な観察記録をつけて、担任、教育相談や特別支援の先生方、スクールカウンセラーや相談員の方と交流をしたりしています。心理学を学んでいなかったら、気が付かなかった事を日々の実践の中で学んでいます。子供たちとの関わりあいを通して、子供たちが成長していく姿を感じたり、担任の先生方から感謝されたりして、多少なりともお役に立てているかなと幸せを感じています。

発表4. 三木 政英(事業構想大学院大学/NTTビジネスソリューションズ)・清水香奈子(無所属):「学校・職場環境での自他尊重・相互理解を促進する『Delight Sharing』の活用」

 現代社会においては価値観が多様化する一方、同じ価値観や評価基準に基づく凝集性・コミュニティ形成が加速している。こうした状況において協働作業を行う学校や職場においては多様な価値観を許容し活かすことが必要だが、組織としての目的や達成すべき目標があり、希薄な個人間では好悪関係が見られる。さらに昔に比べて個性を理解できる環境も乏しくまた適切な介入が難しく、より深くパーソナリティを理解することが課題となっている。

 一般的に心理学では相互の類似性があることが親密化の要因となっているが、学校や職場環境においては補完性も重要であり、今回「Delight Sharing」という新たな取組を試行した。「Delight Sharing」とは他者のこだわり(熱中する趣味や嗜好性など)に着目し、熱中に至るきっかけやポイントをナラティブに共有し合うことで相互のアイデンティティ理解を促すもので、相互の成長の糧とするモデルとして提示し、自らが実践してきたことを示す。

発表5.  小松 渓太(御嵩町教育委員会):「中学校常駐相談員としての継続的心理支援」

 現在中学校で学校常駐の相談員として勤務している。学校にはSCなど専門知識を持って生徒の心理支援をしてくださる先生もいるが、常駐相談員は生徒の日々の様子の変化を受け止めながら関わることができ、継続的な理解や支援、関係作りができる。また学校の先生方から認定心理士としての意見を求められ、心理学的観点からの意見もさせていただいている。

 相談員は生徒とカウンセリング場面としてではなく、一緒に登下校したり、休み時間に遊びの中で生徒と関係を作ることができる。そうすると生徒から悩みを打ち明けてくれるケースが多く、これは担任やSCという立場ではないからこその距離感だと感じる。生徒に対し、傾聴して話を聞くカウンセリング技法など意識しながらじっくりと信頼関係を築いていくと、生徒も心を開いて信頼感を持って話をしてくれる。

 そのような生徒が変わる姿を見て学校内に心理士がいることの存在意義を感じている。学校内で常駐相談員が行っている心理支援を伝えていきたい。