私の作品制作のコンセプトを語れと言われたら、それは「身につける小さな彫刻」という一言に尽きます。私は20代の頃、スペインに留学していました。エルグレコ、ムリューリョ、ベラスケス、ダリ、ガウディなどの偉大な芸術家やスペインの独特な文化から生まれる芸術に憧れがあったからです。スペインで暮らす中で日本という国を外からじっくりと見つめる機会を得、日本文化の素晴らしさに気付くことができました。たとえば、もの作りの技術の高さや精密さ、またデザインのおもしろさなど西欧諸国に勝るとも劣らない、世界に誇れる日本独自のユニークな特性があると気付きました。宝飾というと西欧のデザインやその歴史の中に独自性を見出しがちですが、スペインで暮らすという自身の経験から『日本の伝統技法の緻密さと歴史あるヨーロッパ宝飾のデザインが混ざり合った』独自のアートジュエリー制作につながっていると考えています。具体的には、日本の伝統技術である鍛金の技法を用い、デザイン的にはヨーロッパのジャポニスムを意識して制作しています。