研究報告書

研究成果の概要

また、「教育の場においてボードゲームを使用することによる学び」を上記と分けてまとめた

目的として、「知育としてボードゲームを用いる」「ビジネスシーンでボードゲームを用いる」「教科教育の中でボードゲームを用いる」などを想定して、それぞれ学びの要素の異なる階層化を行った

 

 

 

 

 

研究報告書

 

研究題目:

ボードゲームのプレイに含まれる「学びの要素」の抽出および類型化に関する探索的研究

 

1. 研究の概要

研究主体:ボードゲーム教育協会

●          伊與田一成(伊與田塾)

●          坪内康将(学習塾塾屋、ボードゲーム教室1098)

●          財津康輔(サイコロ塾、東京大学情報学環特任研究員)

 

研究実施期間:

2021年(令和3年)9月15日〜2022年(令和4年)2月2日

 

研究の目的:

ボードゲームおよびそのプレイには「学びの要素」が含まれている。

そのため、学校や民間の学習塾、習い事などボードゲームを学びの場面で使用する事例は多く存在し、さまざまな実践が行われている。

しかし、ボードゲームにまつわる学びは体系化されておらず、必ずしも何らかの科学的根拠を拠り所としてなされているものではない。

そこで、本研究では上記の学びの実践における信頼性・妥当性を保障する手始めとして、どのような学びの要素がボードゲームを使用した活動において含まれているかを探索的に明らかにするとともに、それらの類型化・階層化を試みる。

 

研究課題:

*           典型的なメカニクスを持つボードゲームのプレイにおける学びの要素の抽出

*           学びの要素の語句の整理・定義 および 学びの要素の類型化・階層化

 

2. 研究経過

定例会議(毎週水曜日10〜12時)

⮚         第1回〜第3回(2021年9月15〜29日:研究方針の設定)

⮚         第4回(2021年9月30日:学びの要素の列挙)

⮚         第5回(2021年10月4日:カタンを題材にした学びの要素の抽出)

⮚         第6〜8回(2021年10月6〜27日:典型的なメカニクスを持つボードゲームにおける学びの要素の抽出)

⮚         第9回(2021年11月10日:学びの要素の類型化の方針の設定)

⮚         第10〜14回(2021年11月12〜26日:学びの要素のスクリーニング、語句の整理)

⮚         第15〜17回(2021年12月1〜8日:学びの要素の類型化・階層化)

 

3. 研究成果

(1)   典型的なメカニクスを持つボードゲームのプレイにおける学びの要素の抽出

<実施方法>

ボードゲームには、さまざまな視点・観点から複数の「学びの要素」が含まれていると考えられる。

そこで、ここではいくつかのボードゲームを取り上げ、そのプレイに含まれる「学びの要素」をブレインストーミングにて抽出した。

 

<取り上げたボードゲーム>

 取り上げるゲームは、使用されているメカニクスの点から、その代表となるようなゲームおよび広く普及版が存在することを基準として設定した。多様なメカニクスという点において、可能な限り抜け漏れがないように試みたが、ボードゲーム全体について網羅したわけではない。

 

(順不同)


カタン

宝石の煌き

ドミニオン

ナンジャモンジャ

ディクシット

エルドラドを探して

ピクチャーズ

ito

キャプテンリノ

タンブリンダイス

バウンスオフ

クラスク

モダンアート

ナショナルエコノミー

HANABI

アイスクール

人狼

チャオチャオ

ブラフ

マジックメイズ

パンデミック

コードネーム

57577

オリフラム

はぁっていうゲーム


 

<抽出された学びの要素>

 上記のボードゲームのプレイに含まれる学びの要素として、168個の学びの要素を抽出した。

抽出された学びの要素については、補足資料を参照のこと。

 

 

(2)   学びの要素の語句の整理・定義 および 学びの要素の類型化・階層化

<実施方法>

(1)にて抽出した学びの要素(語句)を対象に、定義の曖昧なものや同意味の内容の言い換えを行っている語句について整理を行った。また、各語句同士の意味的な関連性から、包含関係や因果関係などの点から階層化を試みた。

最後に、語句の抽象度や包含する意味内容の点から複数の語句を表現するラベルを選択し、類型化を行った。

 また、この段階で個別のボードゲームのプレイに起因する学びの要素と、「ボードゲームを用いることによる学びの要素」を区別することとした(後述)。

 

<学びの要素の大カテゴリ>

 最終的に3つの「学びの要素」を階層における最上位のカテゴリとして設定した。

各カテゴリ名、定義、含まれる小カテゴリは以下の通り。

 

含まれる小カテゴリ(例):リーダーシップ、共感力など


 

 

*「教育の場でボードゲームを使用することによる学び」について

 この分類には、「レジリエンス」「自己肯定感」「やりぬく力」「主体性」「自律性」「積極性」などといった学びの要素が含まれている。これらは、個別のゲームに特有の学びの要素というよりは、ボードゲームを用いることそのものや、ボードゲームが用いられる環境そのもの、およびファシリテーションによって促される学びの要素であると考えられる。

そのため、つづく目的に応じた類型化においては表現を使用しているものの上記の<学びの要素の大カテゴリ>には含めないこととした。

 

 

<利用目的・対象に応じたまとめ>

 これまで行ってきた学びの要素に関して、学びの場に応じて、見せ方や分類を変える必要がある。

 そこで、より上位にあるカテゴリ名を用いて、発信者の意図を反映させたボードゲームの学びの要素の分類を行った。

 

<概要>

この分類は、コミュニケーション力に焦点を当てた学びの要素である。

「コミュニケーション」を標榜して、ボードゲームを使用する場合に使用できる。

 

<学びの要素>

リーダーシップ、表現力、交渉力、能動性、対話力

 

<概要>

この分類は、ボードゲームによる教育の対象を幼児とした場合に、身に付くと考えられる学びの要素である。

この分類を使用する主体として、未就学を対象としたサービス事業者や、その保護者などが想定される。

 

<学びの要素>

コミュニケーション力、論理的思考力、創造力、レジリエンス、空間認識力、記憶力

 

<概要>

この分類は、ボードゲームを社会人が用いた場合に身に付くと考えられる学びの要素である。

社会人講座や、市民講座、リカレント教育などの文脈で、ボードゲームを用いる場合などが想定される。

 

<学びの要素>

交渉力、戦略思考、レジリエンス、意思決定力、批判的思考力

 

<概要>

この分類は、ボードゲームを学校教育の文脈で用いる場合、教科の内容を横断して汎用的に身に付くと考えられる学びの要素である。

小学校受験などの文脈でボードゲームを教育に用いる場合などが想定される。

 

<学びの要素>

論理的思考力、空間認識力、記憶力、読解力、情報処理力

 

<概要>

この分類は、ボードゲームを使用することで、学校教育において「クラス作り」や「学級経営」など教科教育以外の場面で身に付くと考えられる学びの要素である。

主に、学級経営や生徒指導などの場面でボードゲームを使用する場合が想定される。この分類は、複数の可能性を示す。

 

<学びの要素>

①リーダーシップ、フォロワーシップ、自己認識、自己肯定感、他者意識、対話力、問題解決力

 

②貢献力、対話力、自己認識、自己肯定感、他者認識、問題解決力

 

③コミュニケーション力、レジリエンス、問題解決力


補足資料