この度、「第62回日本放射線腫瘍学会生物部会学術大会 / 第53回放射線による制癌シンポジウム」を2025年5月30日(金)・31日(土)、秋葉原にございますアキバホールにおいて開催いたします。学術大会・シンポジウムでは、特別講演の他、ランチタイムレクチャー等を企画しております。
日本放射線腫瘍学会には現在4つの部会がありますが、生物部会は、1964年(昭和39年)に、日本医学放射線学会の部会として発足以来、60年と最も歴史のある部会です。初代生物部会長には京都大学の菅原努先生が就任され、東北大学の粟冠正利先生によるお世話のもと、初めての部会が仙台で開催されたと伺っています。また、「放射線による制癌シンポジウム」は、基礎研究と臨床研究との対話を目的として1971年に始まり、第6回以降は生物部会が主催する形式となりました。日本放射線腫瘍学会設立以前の本部会の英語名称はRadiation Oncologyであり、放射線治療に関する海外からの窓口になっていたということです。現在は、日本放射線腫瘍学会内の生物部会として学術大会とシンポジウムを連日で開催する形式で定例的に開催しております。今回、このような歴史のある部会、シンポジウムをお世話させて頂くことを大変光栄に感じております。
今世紀に入り、放射線治療は、物理工学、画像診断学の進歩により放射線治療技術は飛躍的に向上し、治療成績の大幅な改善に繋がりました。一方で、高精度放射線治療に支えられて実施される超寡分割照射、重イオン線照射、超高線量率照射などでは、これまでのγ線、X線を用いた通常分割照射に基づく放射線生物学だけでは説明できない現象を生み出しました。さらに、分子生物学、腫瘍免疫学の発展による研究成果は、免疫チェックポイント阻害剤をはじめ多くの疾患に対して臨床応用され、標準治療が大きく変革されつつあります。このような時代背景のもと、放射線治療における生物学の重要性と期待は益々高まっています。また、セラノスティックスは、分子標的治療を応用した診断と同時に放射線治療が実施できる治療として注目されています。
そこで今回のテーマは「温故知新」、サブテーマを「高精度放射線治療時代の放射線生物学」としました。皆様に大いに討論して頂けるように、利便性の高い秋葉原駅前にある196人収容の大きな講堂で開催します。本会は、放射線治療に関連する基礎・臨床の研究者が集結し、様々な角度から討論する刺激的な会であり、難しい研究テーマを皆で協議することで克服できる機会にもなると思います。是非、多くの方にご参加頂き、本会が皆様にとって将来に繋がる実りある場になれば幸いです。
国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構QST病院
病院長 石川 仁