2022年7月9日(土) 14:00-17:00
1990年に子どもの権利条約が国際条約として発効されてから30年以上、1994年に日本が批准してからも25年以上が経過した。この間、子どもの権利は日本社会にどのように浸透してきたのか、また、文教政策としていかに実現してきたのだろうか。この間の子どもをとりまく状況変化を射程にいれながら、現代社会における子どもの権利条約の意義を再考することが課題である。
この間の子どもをとりまく状況変化として、以下の三点を指摘できる。
第一に、1990年代以降の日本社会の構造変容に伴って、子ども期の大きな変容が生じていることである。例えば、1997年に発刊された子どもの権利条約 市民NGO報告書をつくる会の手による報告書のタイトルは『”豊かな国”日本社会における子ども期の喪失』であり、その関心は学習塾や習いごとに占められた子どもの自由で自治的な世界の衰退に向けられていたのに対して、2017年に発刊された報告書では「子ども期」の貧困のみならず文字通りの「子ども」の貧困にも焦点が当たっている。
第二に、子どもの権利条約は、国内法の制定に強制力を持つものではなく、立法的な議論が必要であるということである。こうしたなか、「子どもの権利条例」など自治立法の動きも見られたが、近年ではやや低調となっているばかりか、新教育基本法以降の学校の規律化など、子どもの権利保障との緊張関係をもたらす事態も生まれている。こども家庭庁の発足や、こども基本法の議論も意識しつつ、現行法令をどのように使うか、どのような立法課題があるか、改めて検討することが必要である。
第三に、その一方で、セクシュアル・マイノリティ、エスニック・マイノリティ、発達障害など、多様な子どもたちのプレゼンスが高まり、そうした子どもたちの声に根ざして、既存の画一的な学校のあり方が批判され、実際に改革が進められつつあるということである。子どもの権利の実現に向けて展開されてきた研究や運動にあっても、その子ども像を、マイノリティの視点から問い直し、アップデートする必要が生まれている。
こうした状況変化をふまえつつ、複数の立場から子どもの権利をめぐる日本社会の現状と今後の展望を議論していきたい。
■登壇者
コーディネーター・・・篠原岳司氏(北海道大学)
1・子どもの権利条約の30年と子どもに関わる法律の課題・・・山下敏雅氏(弁護士)
2・外国籍の子どもたちの教育保障・・・呉永鎬氏(鳥取大学)
3・子ども参加の学校づくりの動向・・・笹田茂樹氏(富山大学)
上記は、実行委員会側で依頼した項目です。正式な発表題目は、各発表者の当日の資料によるものとします。
会員外の方でご参加を希望される方は、「参加方法」ページよりお申し込みをお願いします。