レベル別読み物とは何か
ここでは、レベル別読みものについて、簡単にご説明します。このプロジェクトは、早期リテラシー期の読み物として10レベル(レベルAからレベルJまで)の本をつくることをめざしました。まず、幼稚園から小学校1年生までの2才の年齢差の子どもたちが読む本に、なぜレベルが10もあるのかというところからご説明をします。はじめて自分で本を読まなければいけない子どもたちは、本を読んで内容を理解できるようになるには、本というものについての知識や、書かれたものから意味を理解するための知識と技術など多くのことを学んでいくことになります。それをこの年齢でできる力に合わせて徐々に入れていくには、細かいレベルが必要になります。
本のレベルを決める基準は、英語の読みの指導の研究者で、読みの力の発達に合わせて本のレベル分けをしているFountas & Pinnel (2006)*の基準をもとにしています。Fountas & Pinnell は、幼稚園児から中学生までを対象に、読みの力を26レベルに分けています。このサイトの本は、早期リテラシー期用ということで、その中の初めの10レベル(レベルAからレベルJ まで)の基準をもとにしています。本をレベル別に分ける基準には次の10項目があります。ジャンル、テキストの構造、内容(大切な概念)、テーマ・アイデア、言語の特徴(比喩・語彙の選択など)、文の複雑性、語彙(語の意味の深さ、書き言葉に特有の語彙)、語(よく使われる語の頻度、複合語)、イラスト(位置・文との関係・図や表)、本(ページ数)・文字(サイズ・スタイル・文字の間隔・文の改行・句読点など)。これら10項目がレベルが上がるにつれて導入され、複雑度が増していきます。
既存の多読の本のコレクションとの違いは、既存の多読の本は、文法と語彙がレベルを決める基準として使われています。すでに第一言語で読みを獲得し、第二言語の読みを学ぶ学習者には、文法と語彙のコントロールで十分かもしれません。けれども、初めて読みを学ぶ子供たちには、文法と語彙も含めて、その他の8項目も初めて経験することですので、これらも各レベルで徐々に学んでいく必要があります。この違いを明確にするために、今回のプロジェクトの目的は、「早期リテラシー期」と「子ども」がキーワードになっています。
*Fountas, I. C., & Pinnell, G. S. (2006). Leveled Books K-8: Matching Texts to Readers for Effective Teaching. Heinemann.
このプロジェクトの本のコレクションは、著作権を心配することなく内容を編集したり、自由に印刷をして配布できるというクリエイティブコモン(CC)というライセンスをもつ本のコレクションがもとになっています。現在、インターネットでこの本のコレクションがあるのはStoryWeaverと、Bloom Libraryというプラットフォームです。StoryWeaver はインドの子どもたちに、Bloom Libraryは、アフリカの子どもたちに広く無料で本を提供するという目的で始まりました。そのため、インドの文化要素、アフリカのいろいろな国の文化要素が入っている本が多くあります。日本語版にもこれらの文化が学べる本が入っています。と同時に、文化的に偏らないようにするために、「友情」「冒険」など国や文化を超えた普遍的なトピックの本も極力探して入れました。本の選択のときには、トピックのバランスを考えて、選んでいただければと思います。
また、この2つのプラットフォームの本は、ジャンルとしては物語が圧倒的に多いため、日本語の本も物語が多くなっていて、ノンフィクションの説明や情報を得る本の数は、あまりありません。このプロジェクトの本のコレクションの種類に制限があるということをご理解の上、ご利用いただければと思います。
本の中の漢字の使用についてですが、レベルが上がると字形で意味が分かりやすい象形漢字と指示漢字で、小学校1-2年で導入される簡単な漢字が入ってきます。このプロジェクトが、早期リテラシーで字と音を早く結びつけて読めるようになることを目的の一つとしていますので、漢字にはルビをつけています。
最後に、本の構成については、すべての本が横書きになっていて、縦書きのテキストがありません。これは、元になった本のイラストの配置、テキストの配置が変えられなかったことからくる制約です。ご理解いただければ幸いです。