Vann Molyvann Studies

カンボジアの近代建築家ヴァン・モリヴァンに関する研究

2015年より、カンボジアの近代建築家ヴァン・モリヴァンに関する作家論的研究を行っている。日本や欧米においては、第二次世界大戦後の近代建築に関する研究は進展が著しい。しかし、東南アジアにおいては戦後の建築史研究はこれからの課題であり、長きに渡る内戦の影響を受けたカンボジアは研究上の空白域のひとつである。このような中で、クメール人初の公認建築家であり、カンボジア近代建築の「父」とも称されるヴァン・モリヴァンの活動を把握することは建築史的にきわめて重要である。

ヴァン・モリヴァンは内戦前の1950~60年代に国家元首ノロドム・シハヌークに重用されカンボジアの都市と建築の近代化に貢献し、「新クメール運動」という近代建築と伝統建築を結びつける建築運動を牽引した。また、1965~67年には王立芸術大学初代学長を務め、建築・都市計画学部を創設してカンボジアにおける建築と都市計画教育の礎を築き、後には教育大臣を務めた。しかし、1970年にシハヌークが失脚しカンボジア内戦が始まり、モリヴァンは1971年に亡命を余儀なくされた。ゆえに、彼の建築家としての活動時期は1956年から1971年の約16年間に集中している。一方、カンボジア和平締結後の1991年以降には、モリヴァンは再びカンボジアに戻り、国務大臣やアンコール遺跡保存管理機構の初代総裁などの重職を歴任した。このような内戦前後におけるモリヴァンの立場と影響力の大きさを考えれば、彼の活動の解明は近代建築史にとどまらず、カンボジアの近代文化史・教育史・政治史に関わる課題といえる。

Vann Molyvann Studies

In 1953, Cambodia achieved its independence from France and began an unprecedented period of modernization under the leadership of Prince Norodom Sihanouk. As leader of the modernizing New Khmer Architecture movement and a trailblazer in architectural education, Vann Molyvann was a key actor in the construction of a new nation. But in 1970 a civil war broke out in Cambodia and the next year Molyvann was forced into exile. His work was forgotten before having had the chance to gain international recognition.  Vann Molyvann  Studies is a trial to re-discover the oeuvre of  Vann Molyvann from the perspective of architectural history.


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