負圧膜構造の実験
Vacuumatics(負圧膜構造)とは、閉じた膜の内側に軽量の充填物を封入し、そこに負圧をかけることで充填物間に摩擦力が生じて剛性が確保される構造システムである。1970年代に英国で開発された後、一時忘れ去られ、2000年代半ばにシュトゥットガルト大学ILEKが研究を再開した。構造と仕上げが一体化した特殊な軽量構造であり、断熱性・遮音性・リサイクル性などが期待されている。
Vacuumatic Tearroom(負圧膜の茶室)では、この負圧膜構造に透過性を与えることをめざした。透明性を持つ軽量充填物の選定、負圧膜パネルの構法開発、光透過度の測定などの基礎的な研究からはじめ、最終的には充填物にストローを用いた「茶室」をセルフビルドした。ストローという日常的な材料は、氷の表面のようなテクスチャーをもつ、半透明パネルとして生まれ変わった。
「柔らかな剛体」は、剛体折紙と負圧膜構造の理論をハイブリッドした可動建築の提案である。多自由度の剛体折紙構造は折畳み・展開によってさまざまな変形が可能だが、単独では柔軟性が高すぎて折板構造としての強度を保てない。一方、減圧時に充填物間にかかる摩擦力によって成立する負圧膜構造は、膜内の圧力を変えることで全体の剛性を調整することができる。そこで、剛体折紙構造のヒンジ(折れ線)に負圧膜構造を応用し、大気圧時には柔軟に変形し、減圧時にはヒンジが剛接合となる折板構造を提案した。
Vacuumatic tea room
Stuttgart, Germany, 2008
Project at ILEK under the guidance of W. Sobek
Photo (c)ILEK
柔らかな剛体
unbuilt, 2011
Collaborator: Tomohiro Tachi, Motoi Masubuchi
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