ベーシックな柱梁構造を竹でつくる試み
福岡市南区の那珂川河川敷に建てられた仮設の竹構築物である。那珂川みらい会議が主催する産官学連携イベント「那珂川Well-being Week」にあわせて建設され、「こども居酒屋」の屋台として、小学生の総合学習の場として、那珂川みらい会議の会場として活用された。成長が早い、いわば「代謝の良い」竹は、イベント用の仮設建築物には格好の材料である。また、竹の建築はサーキュラーエコノミーについて市民が考えるきっかけになる。現在、日本各地で放置竹林が広がっているという深刻な状況がある。その問題解決には竹の需要拡大が急務であり、建築分野において竹材の利用を促すためには簡便で汎用性のある竹構造の開発が必要であろう。このように考えて、那珂川の「竹のパビリオン」ではベーシックな柱梁構造を竹でつくる試みを行った。
竹は不揃いな材料であり、竹構造では大きな誤差を許容する構法と接合部の開発が重要である。これまで世界各国に建設された竹構造のほとんどではロープやスチールバンドによる緊結か金釘・竹釘・ボルトによる接合が用いられている。しかし、ロープなどを用いた「縛るディテール」は性能の工学的な把握が難しく法規制の厳しい日本には不向きである。一方、釘やボルトによる接合には割裂による機能低下という問題がある。そこで、本計画ではスチールプレートによって複数の竹を束ねる「束柱」「束梁」の構造システムを試みた。日本の木造金物工法から着想を得たスチールプレートの接合部の性能は工学的に検証可能である。一本一本は不揃いな竹でも、プレートを介して束ねることによって断面がある程度平均化される。そして、竹の一部が割れても全体が破壊しない冗長性をもつ。スチールプレートを起点として、水平力に抵抗するブレースや、外壁・屋根などの仕上材を組み込むことも可能だろう。
本プロジェクトは薩摩川内市と九州大学大学院芸術工学研究院の共同研究Satsuma Future Commons の成果である。竹建築には、イベントスペースのみならず、レストラン・宿泊施設といった観光施設や、農業用ハウスや畜舎といった生産施設まで、様々に応用可能性がある。小さな実験を繰り返し、日本における仮設・常設竹建築の可能性を探っていきたいと考えている。
Bamboo Pavilion
Fukuoka, Japan, 2022
Masaaki Iwamoto Laboratory
Design team: Masaaki Iwamoto, Ryota Sato, Naoto Sawada
Structural design: Mika Araki
Membrane structure advisory: Yamaguchi New Shelter Industry + Fumio Kuroki
Metalwork: Ryouyu Kougyo
Construction: Masaaki Iwamoto Laboratory with the assistance of Kato Construction Fukuoka Branch
Event operation: Siolab
Producer: Nakagawa Miraikaigi
Photo (c) Yashiro photo office
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