※ 現在研究中のキーワードに関して、論文や学会などで発表されたものから順次紹介をしていきます。
そのため、研究中ではあるものの、キーワードとして掲載できないものもあります。ご了承ください。
勉強するときに、勉強に対して、大変だな・しんどいなといった気持ちになることは多くの人が経験することだと思います。
これまで学習に対して抱く大変さ・しんどさを意味する負担感(コスト)はモチベーションを低下させたり、
不適応な学習行動を促進させたりと、コストが高いほど学習に悪影響を及ぼすと考えられてきました(Eccles & Wigfield, 2020)。
しかし、近年になってコストが高くても学習に悪影響を及ぼさなかったり、むしろコストが高いほど勉強に取り組むといった研究結果もみられるようになりました(e.g., 真鍋・中谷, 2025)。
なぜ学習に対して負担を感じる(コスト認知)が学習に対して良い影響・悪い影響を及ぼすのか、この異なる影響の原因はいったい何なのかを明らかにしたいと考えています。
【コスト】
学習に対する負担感は、期待価値理論という動機づけの主要な理論の中で、「コスト」という概念でとらえられてきました。
このコストは、学習や課題に対する主観的な価値づけ(課題価値)のネガティブな側面として、パフォーマンスや動機づけに悪影響を及ぼす概念として定義されています。
また、コストは
・学習や課題によって他の活動やしたいことをする機会が失われてしまうことによって生じる「機会コスト」
・学習や課題を達成・遂行するために必要な努力量を認知することによって生じる「努力コスト」
・学習や課題が上手くいかなかったことを予期することによって生じる「心理コスト」
の3つの側面に分けられており、各コストが学習に異なる影響を及ぼすことも確認されています。(e.g., 真鍋・中谷, 2025)。
さらに近年では、3つの側面ではなく、4つの側面を想定してコスト概念を再度整理した研究もあり、現在においても、コスト自体のとらえ方や測定の仕方、概念の位置づけは検討されています。
【コスト信念】
コストが学習に対して及ぼす影響について、この影響を調整する要因として、学習に対する負担感をどのようにとらえるのか、「負担感のとらえ方(コスト信念)」(真鍋・中谷, 2026)に着目しています。
負担感を肯定的にとらえる人もいれば、否定的にとらえる人もおり、また学習には負担感がつきものとして仕方のないものだととらえる人もいるでしょう。こうした負担感のとらえ方によって、負担を感じた時の対応が変化すると考えています。
例えば、「大変さは自分の成長の糧になる」と考える人は、勉強が大変な、負担のかかる状況でも頑張ろうとするでしょうし、「大変なのはとにかく嫌なこと、すぐに投げ出してしまいたい」と考えている人は、負担のかかる状況になると勉強をやめてしまうかもしれません。こうした負担感のとらえ方の違いが勉強・学習に及ぼす影響について、実際の学校現場の学習者を対象にアンケート調査などを行い、検討を進めています。
【動機づけの諸理論の構成概念間の関連】
期待価値理論や達成目標理論といった動機づけの主要な理論の構成概念について、それぞれの概念がどのように関連しあい影響を及ぼしあうのかについても検討を行っています (Manabe & Nakaya, 2026)。各理論における構成概念の位置づけや、概念のとらえ方を整理し、実際の子どもたちにはたらきかけると効果的な概念はどの構成概念なのか、実際に子どもたちにはたらきかける際に変化する可能性が高いのはどのような側面からのはたらきかけなのかなど、理論間の整理をしながらも、実際の学校場面での応用可能性について、検討を進めていきたいと思います。