読書記録
Reading Record (Books)
Reading Record (Books)
▶ 読み切った本(read through)
▷ 読みかけの本(partially read)
Paul Raeburn "Do fathers matter?: What science is telling us about the parent we've overlooked" (in Japanese)
Hannah Arendt "The Human Condition" (in Japanese & English)
2021年に友人たちと読書会を始めたが、雑談が楽しくなったりみんな忙しくなったりしてなかなか読み進まなかった。やっと気合を入れて読み切った。要求される知識が多く、文章がわかりにくくて何を言いたいのかわからないことも多かったし、読んでいる途中で話がどこに向かっているのかわからず辛さはあった。ただ6章の後半で伏線がぼちぼち回収されながら話が展開されていくと面白かったし、全体としても影響力を持った本だということは伝わってきた。
おそらく影響力がありすぎて、僕たちはアーレントの思想の影響を受けた様々な考え方を知ってしまっているので、本の内容が多少当たり前というか、陳腐(というのは言い過ぎなのだが)に感じられることもあった。しかし当時は斬新で衝撃的なアイデアが多く含まれていたはずだし、アーレントの議論が初めて世に出ていくときの衝撃を体験できないのが残念だった。
Mark Granovetter, 1995, Getting A Job, 2nd edition, Chicago: The University of Chicago Press. (in Japanese)
During CoPhEE2023, I realized, although I had read Granovetter's famous articles, "The Strength of Weak Ties" and "Threshold Models of Collective Behavior", and admire his works, I didn't know the sociological contexts of his research. So I looked for his books in my university's library and found this one. The second edition includes another famous article published in 1985, "Economic Action and Social Structure: The Problem of Embeddedness".
社会関係のネットワークの重要性に焦点を当てており,この流れをどうにかして自分の研究につなげられないだろうか,と思っている.また面接と質問票の郵送による調査から理論的な仕事まで一冊の中に含まれていて,かなり印象的.Granovetterの論文は数理の側でも比較的知名度があり引用もかなりされているが,数学的に記述できる部分だけが独り歩きしていて(the strength of weak tiesだったらクラスタ係数が高い,みたいな話になるし,threshold modelはまさに数理モデルとして引かれている印象),この本に書かれているような文脈がついてきていない気がする.でも文脈があってこそGranovetterの研究が光るように思うので,その社会学的な内容みたいな部分を置いていかずに数理的研究に接続していくことを目指したい,というようなことを思った.
経済社会学,というようなテーマになるのだと思うが,自分が経済活動に関わるこの領域に興味を持てるのかは考えたい.勉強していけば面白くなるのかもしれないが,できればもう少し私的領域に踏み込むような話をやりたい気持ちも捨てきれない.
Max Weber "Wissenschaft als Beruf" (in Japanese)
長い間気になってはいて、少し前に古本が安く売っているのを見つけて買ったが、本棚に置きっぱなしになっていた。Simmelを読んだのでDurkheimとWeberも読んでみて雰囲気の違いなどがわかると面白いかもしれない、と思い、ひとまず手元にあった職業としての学問を読んだ。
訳(改訳版)のおかげでわかりやすかったからかもしれないが、自分の感じている違和感・問題意識が近いような気がして、比較的読みやすいように感じた。p.43からはじまる、学問は(分野ごとに、と言っていいだろうか)それぞれ固有の「前提」を持っており、かつその学問の範囲内ではその前提について議論できない、という部分は印象的だった。この枠組みを借りれば、自分の最近の感覚を、自分なりに信じられると思っている「前提」があるが、それを共有している(同じ前提の上に立つ)学問領域が見つからないので、自分がどうやって学問をしていけばいいのかわからない、という風に言語化できるように思えた。
Georg Simmel "Grundfragen der Soziologie (Individuum und Gesellschaft)", "Die Koketterie", & "Soziologie der Mahlzeit" (in Japanese)
たしか大澤真幸『社会学史』を読んでSimmelを知り(たぶんDurkheimやWeberは知っていたけどSimmelは知らなかった)、相互作用に焦点を当てながら?軸足を置きながら?理論を組み立てた人、みたいなかなりフワッとした理解をして、興味を持った。DurkheimやWeberと比べると本も見つけにくかったし、孫引き的に出会うことも少なかったのでずっとよくわからないままになっていたけど、STATPHYSやCoPhEEに参加して社会学の古典も読まねば、という気持ちになり、図書館で「ジンメル」で検索して出てきた比較的新しい訳本を借りてみた。
この本には「社会学の根本問題」に加えて「コケットリー」「食事の社会学」の訳と,訳者の居安さんの解説が載っていた。本当に何も知らずに読み始めたので、「社会学の根本問題」は第3章「社交」のような具体的な状況を想像しやすい部分以外ほとんどわからぬ...と思いながら読んだ。解説が自分にとってはわかりやすかったというか、興味深く読むことができたが、訳者の研究の成果を反映した独自のアイデアを含んでいる可能性がありそうだったので、他の人のSimmelないし「社会学の根本問題」の評価も確認しておきたいとは思った。
Durkheim, Weber, もしかしたら他の社会学者もみんなそうなのかもしれないが、「社会学」がどうすれば可能なのか・「社会」というときに何を指しているのか(何を指していると思えば社会に関する科学が可能なのか)、といった問いに向き合い続けたのだろうな、と解説まで読んで想像したし、Simmelの出している答え(相互作用の形式に焦点を当てる)が自分にとっては腑に落ちるもののように感じている。どうすれば「社会」を研究できる/したことになるのか?という問いには自分もかなり悩んできたつもりだが、100年前から悩まれ続けてきた問題だということを再認識したし、先人たちの回答・それに対する批判をうまく取り込んでいきたいと思った。
1周読んだだけだし理解できたとは言い難い(どちらかというと理解できていない)が,何がわからないのかすら見当もついていなかったところから,何と対峙しているのか,ぼんやりとは見えるようになった気がする.学部1年生の線形代数の講義でベクトル空間について学んだはずだが,当時は具体的な話ですでにパンクしていて,抽象度を高くした議論のありがたみを全く感じられていなかったな,と痛感した.やっと,ありがたいことくらいは(どうありがたいかはわからなくても)わかってきた.
Raymond Boudon "Education, opportunity and social inequality" (in Japanese)
背景知識不足もあり,内容は呑み込み切れていない.モデルを使う意味合い・目指すところ(特定の時代・社会の状況を具体的に説明するよりも,理念型を考える)について参考になると思った.他方で,「あえて」具体的なパラメータを与えて解析して一般的な分析を避ける,という部分には違和感を覚えた.
真ん中のあたりを読み切れないまま期限が来てしまい返却した。事例集のような印象で読み、よく知らない話題にも触れられて面白かった。
社会的弱者の中の多様性やそれにより複数の「弱者」集団が生じる様子について知りたくて「障害者間格差」というキーワードが目についたので図書館で借りた。法律の引用が多く、少なくとも前半では引用したものを俯瞰して何が言いたいのかわからないところもあり読むのが苦しくて、しかも2006年から今までに法的な状況は変わっている気がするので読み切れるか怪しいところ。ただ、社会運動などを通していわば内生的に生じる「障害者」間の違いだけでなく、外生的に法的に与えられてしまう障害者間の差異がある、ということに全く気付いていなかったので、その視点を提示してもらっただけでも手に取った価値があった。
読みやすかった。
Samuel Bowles & Herbert Gintis "A cooperative species: Human reciprocity and its evolution" (in Japanese)
ギンタスらが書いた「ゲーム理論による社会科学の統合」とあわせて図書館で借りてはみたが、読みづらい印象だったのと内容にも違和感を覚えて、すぐにあきらめてしまった。たしか後ろにつけてある訳者解説が読み応えがあり、そこだけは読み切った。
Cailin O'Connor "The Origins of Unfairness" (in Japanese)
社会学のことを全然知らないままだったので、とりあえず読みやすそうな入門っぽい教科書を探して一通り読んでみた。おそらくそれなりに広い範囲をカバーしていて分量が多く、ちょこちょこ読んだので時間はかかってしまった。
前書きに独りで読み物としても読めるように気をつけた、というようなことが書いてあって、たしかに独りで読み通すことができたし、なんとなく雰囲気をつかむことができたと思う。
第8章まで研究室メンバーと読み会をした.カオスの部分はあまり読めていない.
この本の読み会に途中から参加して、後半を読んだ。前半はざっと眺めたような感じ。
僕が差別や不平等に関心を持っているということで、友人に勧められた。図書館で借りて読んでいたが、貸出期間の延長を忘れてしまい第一部を読み終わるくらいのところで返却してしまい、そのまま...。
だいぶ前に大学に行ったときに勢いで買った本。測度論の入門的なところまで行けそうで、読み物として雰囲気とかモチベーションを理解するのに役に立つかな、くらいの気持ちで買ったが、読んでみたら意外としっかりと数学に関する記述があった。学部1年のときに数学の講義でわけわからん、と思っていたことが結構スッキリして、その勢いで位相とか測度の雰囲気くらいはわかった気がするので、読んでよかった。
読み物にしてはハードだけど専門書と言うほどでもない気がするので、読者層がどこなのか気になった(僕が買ったのが3刷なので多少は読まれている?)。
友人が推していた本。偶然図書館で目に入って、借りてみた。現状の分析や認識は面白いというか、共感。要約すれば「望ましくない差別をする人たちが必ずしも悪人だとは限らない」という難しさに焦点を当てている、と解釈した。ただし客観的な要約ができている自信はなくて、僕が聴きたいことなのかもしれない。問題意識までは好きだけど、そこから解決策につなげていく部分が多少安直に思えるというか、現状の悪いところをどう改善するかに注目していて、最終的にどんな世の中を目指しているのか、そしてなぜその世の中が実現可能だと思うのか、という点は議論されていない印象で寂しかった。
正直なところモヤモヤするだろうなと思いつつバランスをとるために手に取った本だったが、読み切って冷静になってみると読んでよかったな、と思う。手元においてもよいかも。
研究室の先輩に教えてもらった本。2017年の単行本を文庫化したものらしい。軽めの研究紹介という感じで、仮説を立ててそれを検証して、を何回か繰り返すような流れだった。ASD傾向のある人のコミュニケーションの特徴が紹介されていて、それを通してコミュニケーションそのものの性質も多少考えることができて、面白かった。
Hannah Arendt "The Human Condition" (in Japanese & English)
友人たちと読書会をしている。丁寧に読み進めていて、しかもたくさんしゃべるので、なかなか読み終わりそうにない。
3人の有名(らしい)講演・論文の全訳と解題。人となりも見えるおかげなのか、面白かった。論文・講演は当然半分くらいしか理解できていないとは思う。
Ⅰを読みかけたが、フランス文化の知識がないとそこら中に引いてある細かい話に興味が持てず(教養不足と言われればそれまでだが)、挫折した。議論の筋だけ取り出したら1/3くらいになるのでは、と正直思ってしまった。違うのかもしれない。
ずっと知ってはいたが読もうとは思っていなかった。最近介助についてモヤモヤし始めて、それで気になったので一気に読み切った。僕は「鹿ボラ」の人ほど壮絶な体験はしていないが、介助経験のない人よりは自分事として読めたような、中途半端な立場の読者だったような気がしている。もっと経験豊富な人、もしくは介助の経験がない、当事者と接したことのない人がどう読むのか、ということも気になる。
shioさんに勧められ、しばらく放置してから買い、そのときは一瞬で挫折し、改めて読み直した。卒論も重なって読むのにかなり時間がかかってしまった。第1章の途中までは何を言ってるのかわからない感じで辛かったが、少しずつ流れに乗れるようになり、途中からかなりワクワクしながら読んだ。自然科学に関わる人間として、この本で読んだことは今後も頭の片隅に残るだろうなとも思うし、思弁的実在論への反論にどんなものがあるのか、興味を持った。あとは、この本を読んだ上でマルクス・ガブリエルを読んだら印象が変わるのかな、などとも思った。
-大学院で非線形科学を勉強することになったので、その縁で読んでみようと思った本。目次を見て期待したほど非線形科学の内容的な話は出てこなかった。第3章の哲学と絡めた部分は流し読みのような感じになった。
-問題意識や目指したい方向性はかなり共感する部分があり、ここの言葉を借りれば、僕の関心は人間や社会を新しい自然学の枠組みで捉えることになるのだろう。科学的言明は価値判断を伴わないが、それが他者に受容される段階で価値付けを伴うことになる(うろ覚え)、という点は意識的に気を付けたいと思った。
-『社会学史』の次に読んだせいで、若干物足りない感じがしてしまった。笑
-600ページ以上ある、かなり分厚い新書。ブックオフで偶然見かけて、買った。社会学というと実践的というか実学的というか、そういうイメージを持っていたが、社会思想史みたいな雰囲気だったように思った。理論的な部分に焦点を当てているので僕にはとても面白かった。当然1回では消化しきれないので、定期的に読み返したい。
-社会学を勉強してみようと思って、読みやすそうなので入門用にブックオフで見かけて買った。見開きの左が文、右が図だったので実質半分しか内容がなく、たぶん一般の人の入門向けには良いのだろうけど、僕のニーズに対しては軽すぎた。3-4時間で読み終わった。
-AI、人工知能って結局どういうことなの、みたいな話をする場面がありそうだったので、予習のための本を探していたときに出会った。内容がハード過ぎて、人工知能について(一般の人と)話す助けにはならなそう、というのが正直な感想ではあった。批判したいわけではないが、文体がやさしいだけで専門用語は頻出して、本屋で偶然見かけた人の何割が読み切れるんだろう、とは思った。振り切ってハードな本にした方がかえって楽しかったかも。
-僕にとってはかなり面白かったし、考える種をたくさんもらった。身体性に注目しているあたり、結構好きだった。
-卒論に向けてSchellingの研究(内容というよりは思想)を知っておく必要がありそうだったので読んだ。正直、いまの基準での科学的な検証がされているのかはよくわからなかった(身近な人を集めて"実験"した、みたいなのがちょこちょこあったような)。まあでも面白かったと思うが、記憶が薄れてきた...。
-ちなみにFocal Pointの話は、(たしか)90年代とか2000年代の論文に「誰も実験的な検証をしてきていないのでやってみた」みたいなものがあった。全体的に、直感的にみんなが受け入れられることを体系的に説明した点が偉いし、だからこそSchellingの言っていることを検証するような研究は少ないのかも、と感じた。これはすべて僕の邪推です。
-ずっと小説を読んでないなあと思い、かなり前に買って放置していたこの本を読んでみた。やはり普段読むノンフィクションのものよりも小説の方が引き込まれて、続きが気になって結果的に早く読み終わった。映画のブレードランナーはたぶん見たことがあるけど、なんかゾクゾクして好きになれなくて、小説でも似たような印象だった。でも解説を読んだら色々なことが腑に落ちたり、筆者が仕込んだ問いに気づかされたりして、少し印象が変わった。
-Audible版を聴いた。Homo Deusが好きだったので、前作も読んで(聴いて)みようという発想。農業革命を経てヒトは農作物や家畜に合わせたライフスタイルを余儀なくすることになり、(見方によっては)人間の活動の自由度が下がった、みたいな話が自分的には好きだった。と、ここまで書いて、別の記事に感想を書いたことを思い出した。
-友人が誘ってくれた読書会の本だったので途中まで読んだが、読書会が自然消滅してしまい途中で終わっている。英語版のペーパーバックとAudible版を併用していた。
-読書会と無関係に読み切ればよいのだが、偶然オムニバス講義で意識の研究者の話を聞いたときに、ダマシオが本で述べているような意識観が意識研究コミュニティの見立てとは相容れないことを知り、かつ(さすがに)研究者たちの考え方の方が筋が通っているように思えてしまい、興味がなくなってしまった。ちなみに、茂木健一郎の『クオリアと人工意識』を通してこの違和感はより強まった。相容れないポイントは意識の生成に身体が必要か、という部分で、夢の中でも意識を経験できる以上、(意識を経験する前提として身体を介した体験が必要な可能性はあっても)意識の生成自体に身体は必要ない、というのが研究者たちの見方らしい。これに対してダマシオは(たぶん)意識を考える上での身体の重要性を語っている。最後まで読んでないからわからんけど。