原田 悦子(筑波大学)・安久 絵里子(筑波大学)
坂田 陽子(愛知淑徳大学)
渡邊 伸行(金沢工業大学)・荷方 邦夫(金沢美術工芸大学)・伏島 あゆみ(金沢工業大学)・村山 祐子(金沢工業大学)
竹橋 洋毅(奈良女子大学)
角 康之(公立はこだて未来大学)・髙橋夏紀(公立はこだて未来大学)
水野 景子(関西学院大学・日本学術振興会)・清水 裕士(関西学院大学)
大薗 博記(鹿児島大学)・田中 嘉彦(専修大学)
大久保 街亜(専修大学)
森 隆太郎(東京大学)
工藤 大介(東北学院大学)・李 楊(名古屋大学)
小林 智之(福島県立医科大学)
清水 裕士(関西学院大学)
福田 早苗(関西福祉科学大学)・検討中,募集中
佐藤 秀樹(福島県立医科大学)
松島 俊也(北海道大学・北海道医療大学・トレント大学)
国里 愛彦(専修大学)
柏原 宗一郎(関西学院大学)・清水 裕士(関西学院大学)
松田 壮一郎(筑波大学)
聞き損ねた質問などいろいろ
大阪大学中之島センター2F カフェテリア・アゴラ
会費:5000円(実費です)
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「高齢者はなぜ情報機器利用が苦手なのか」という問いをおよそ10年に渡って考えてきたが,その際に暗黙の裡に「人間の加齢変化によって」なぜ苦手になるのかという問いの枠組みがあったように思う.しかしその枠組はもしかしたら少し間違っていたかもしれない.そう考えるようになった実験の結果(仮題「若者は火を怖がる」)について報告しつつ,皆様のご意見を伺いたい.
弱いロボット©は,自分では何もできず人間に何かをやってもらうことで完全体となる。例えば,ごみ箱ロボットは自立で動けるが自分でごみは拾えず,人間の前で止まることで人間がごみをそこへ拾うという相互作用を生む。心の理論,他者援助が未熟な段階にある幼児を対象に,このゴミ箱ロボットが幼児の他者援助の行動を引き出すか検討した。ロボットが動かない場面(場面①)と動き出す(場面②)を用意した。ロボットは言葉を発しなかった。場面①では3歳児と4歳児はごみを拾えなかったが,5歳児は拾える者もいた。場面②では3歳児はごみを拾えず恐怖を感じる者もいた。4歳児は拾えるようになる者がいた。5歳児は多くがごみを拾った。以上の結果から,心の理論や他者視点の発達途上にある4歳児に対して,ロボットは行動を引き出すことに有効であった。ロボットの使用と教育効果の関連には適切年齢を考慮する必要があろう。
発表する一連の似顔絵捜査研究は、石川県警察本部刑事部鑑識課のご協力により、2019年度から実施してきたものである。コロナ禍で一時中断したが、2022年度に再開することができた。2019年度は友人知人の顔の証言に基づいて、似顔絵捜査官に似顔絵を描いてもらうというアプローチをとっていた。2022年度はそれに加え、実験参加者に刑事ドラマの映像を見て証言してもらい似顔絵捜査官が描画する、同様の方法で美術系大学の院生が描画する、似顔絵捜査官が顔の特徴を伝えて実験者が描画する、など多様なアプローチに拡大した。そこで本発表では、これまで実施してきた様々なアプローチの進捗報告を行う。また、研究を通して実験者が感じてきたことを報告すると共に、今後の展開について、参加者と議論することを期待する。
「社会心理学は現実社会にもっと関わり、貢献していくことが重要ではないか」という問題意識が発表者のなかで年々大きくなってきている。心理学の再現性危機、未来の社会心理学者の育成・ポスト、行動経済学の躍進と批判などがそのきっかけである。これらの諸問題への解決アプローチの一つとして、現実社会のなかで研究実践を行うことが有用であると考えられる。本発表では、災害避難メッセージ啓発(防災ナッジ)が自律的動機づけに及ぼす影響についての我々の研究を例として、社会心理学の社会貢献可能性について皆さんとともに議論したい。
言語的に対話できない相手、例えば動物、ペット、赤ん坊、、、とコミュニケーションするときの手掛かりとして視線は重要なチャネルになると思われる。散歩する犬と飼い主のデータ等を題材に妄想します。
社会的ジレンマ状況において、協力した人にボーナスを与えることは協力を促進するために有効だと思われる。しかし、いつまでもボーナス制度を続けるわけにはいかない。なぜなら、協力する人が多くなれば、ボーナス用に莫大なコストがかかるからである。一旦導入されたボーナス制度がなくなったとき、人々の協力はどうなるのだろうか?先行研究からは、信頼の破壊や意思決定モードの変化などにより、仮にボーナス制度がなかった場合よりも協力が低下することが示唆される。本研究では、ボーナスによって人々の協力がむしろ阻害される可能性を事前登録をしたうえで検討する。
「心理学=心が読める、操れる」という信念(以下、「疑似心理学信念」)は、日本を含めて世界中に存在し、心理学教育に携わっている者はこの誤った信念に悩まされている。これが誤った信念であることを説得できれば、 心理学教育の場面で心理学の正しい理解を促すことができるはずだ。こういった誤信念が生じる原因の一つとして、メンタルマジックによる影響があるだろう。マジシャンはしばしば「読心術」や「心理的誘導」といった心理学的なテクニックを駆使しているという演出によって、信ぴょう性を持たせようとするからだ。本研究では、それを逆に利用する。すなわち、メンタルマジックのタネ明かしをすることで、疑似心理学信念が弱まるかを検討する。さらに、それが他の誤信念(疑似科学信念や陰謀論信念など)や論理的思考態度にも波及するかについても検討した結果を報告したい。
感情が豊かに見えるようポーズを取ると、ひとはカメラやコミュニケーションの相手に向かって自分の顔の左側を見せる。このような左顔ポーズを取ると、実際に感情豊かに見える。そのためか、他者から信頼できるようにも見える。本研究では、この左顔ポーズが、意識してとられるものか、無意識的なものかについて検討を行った。それにあたり、意識喪失の状態と言われる性的快感に伴う絶頂時のポーズを取り上げた。具体的には性的快感に伴う絶頂時における顔の向きの測定を行った。画像素材として、自慰行為を撮影し自らアップロードする動画アーカイブの動画を利用し、動画解析ソフトOpenFace2.2.0 を用いて解析した。
人が賢い判断をできるとすれば、それは、1人で全てを考えつくせるからというより、他人を参考に判断を更新できるからだろう。この社会学習過程は、ある問題について①まず自分だけで回答し②他者の回答を参照して③自分の回答を更新する「judge-advisor-paradigm」を通じて長く検討されてきた。Tシャツの好みからドット数の推定まで様々な課題において、他者の回答によせる学習/同調現象が報告されている。しかし、この社会学習はどれほど「深い」のか?回答を更新する被験者は、その個別の問題においてのみ学ぶのか、それともより深い生成関数のレベルで(i.e., 他の問題にも通じる形で)学ぶのだろうか。この区別は、先行研究でほぼ意識されていない一方で、重要である。人々がもし個別の問題かぎりしか考えを更新しないなら、ほとんど何も学んだことにならないからである。当日は、社会学習のレベルの深さを弁別するための実験パラダイムや結果、そしてそのように弁別することの示唆に関して議論したい。
爬虫類というと,やれ気持ち悪いだとか,人に危害を加えそうだとか言われ放題の存在である。しかし,エキゾチックアニマルの飼育人口の増加と共に,爬虫類飼育人口も増加していき,社会的な認知度も高まりつつある。今回はこの爬虫類たちに着目をしたい。つまり,「爬虫類心理学」について皆さんと議論をしたい。爬虫類の認知や行動は非常に興味深いものであり,多くの研究がなされてきている。しかしながら,哺乳類を対象とした研究と比較すると,いまいち影が薄い扱いとなってしまう。まずは,これまでに行われてきた,爬虫類を対象とした心理学における研究を紹介して,知名度の向上を図りたい。そして,私は趣味で爬虫類を飼育しており,その観察の中で見つけた,研究対象となりそうな爬虫類の行動について紹介し,どのような形で研究に落とし込めるか皆さんと議論したい。
社会的ネットワークの構造は、地域社会における医療と福祉の支援を計画するのに重要な情報である。しかし、対象となるネットワークが大規模でデリケートな場合、完全なデータの収集は現実的ではなく、構造を評価することは難しい。本研究は、この問題への解決を試みたものである。ここでは、社会調査で典型的に使用されるリッカート尺度からコミュニティネットワークのプロパティを推定するアルゴリズムを提案し、このアルゴリズムを東日本大震災の災害公営住宅のネットワーク構造の分析に適用した。今後、アルゴリズムの精度に関する実証的な調査が必要になると考えられます。アドバイスをいただきたいです。
心理尺度は心の状態を測れるのだろうか?心理尺度は心理学者が「心を測る」ために作った重要な研究ツールであり,また他の学問分野でも大いに利用されている.しかし,我々はそれが機能することを知っているのだろうか?他の分野の研究者に「大丈夫,安心して使ってね」と言えるのだろうか.本発表では,心理尺度で最も用いられるリッカート尺度で,心の状態を測れるのかを実験的に検討した研究を紹介する.心理尺度の妥当性を検討する上で問題となるのは,真値がわからないということである.そこで「真値がわからないなら,真値がわかるようにすればいいじゃない」,ということで,真値が分かる状態を実験的に作り出した.これだけだと何を言ってるのかわからないと思うので,当日の発表をお楽しみに.
健康行動変容の支援には困難が伴うことが知られている。関心があっても行動出来なかったり、全く関心がない人もいる。一方で健康に関する情報は質は様々ながらあふれている。話があちこち行くが学生に健康について教えていて、その理解の仕方に、色々な段階だけでなく質の違いを感じることが多くなっている。そこで、健康行動支援が進まない理由の一つには、「理解」の質の問題があるのではないかとの仮説を、日本語の表現の観点から検討したい。
発表者はここ最近Paul Meehlの活動の全貌を知りたいと思っている。Paul Meehlは臨床心理学者として,心理学の理論やそれを検証するための統計学的手法を批判し洗練させようとしてきた。例えば,1954年に臨床家の予測よりも統計的予測のほうが優れていることを主張した本を上梓,1955年にLee Cronbachと共に構成概念妥当性の考え方を確立,1967年に物理学と対比させながら心理学の理論検証の脆弱性を指摘,1978年に心理学理論と帰無仮説有意性検定の問題点を指摘,1990年に理論と統計的仮説と観測値の位置づけを体系化するなど,挙げればきりがない。Paul Meehlは1940年代中期から2000年頃にかけて活躍していたため,文献の数が非常に多く,理知的な造語や比喩も多用されているため,彼の活躍の全貌を理解するのは至難の業(というか苦行)である。そこでPaul Meehlの活動の輪郭だけでも整理し,彼の活動からいま考えるべきことについて議論したい。
生物的運動(BM)への選好性は自閉スペクトラム症(ASD)の家族性リスクが高い新生児では低く(Di Giorgio et al. 2016)、ASDの早期バイオマーカーと示唆される。しかし出生直後に自発的なBM選好性を示す動物は、系統的に大きく隔たったニワトリ初生雛だけである(Vallortigara et al. 2005)。我々は胎児期の神経活動を操作する一連の行動薬理実験から、ヒヨコがASDの発症に関わる機構を解析する有用なモデル動物であることを示唆する結果を得た(Matsushima et al. 2022)。ヒトとニワトリは共に有羊膜類であっても系統的には大きく隔たる。しかしモデル動物としての有用性は、両者の間に共通の認知発達過程が存在することを示唆している。生物学的精神医学の研究は、認知進化の研究と課題を共有しているのだ。その根拠と検討すべき将来の課題について整理する。
心理学研究においてもシミュレーション研究が行われてきており,『心理学研究法(高野・岡編, 有斐閣アルマ,2017年)』においても1章割いて説明がなされている。進化心理学,ゲーム理論やニューラルネットワークモデルの用いられる研究領域においては,シミュレーション研究が1つの選択肢となっているが,他の研究領域では一般的とは言い難い。近年,臨床心理学においても,心理ネットワークアプローチや計算論的アプローチを用いたシミュレーション研究が発表されるようになってきている(Robinaugh et al., 2019; Wang et al., 2023)。シミュレーション研究の可能性に期待が高まるものの,そのシミュレーションをどのように妥当化するのかについてはまだ不明確にも感じている。本発表ではシミュレーション研究の過去と現状を概観し,今後の展開について議論したい。
Implicit Association Test (IAT; Greenwald et al., 1998)は、社会心理学において広く使われている認知課題ベースの心理測定法である。一方で、その妥当性については、問題視されてきた (e.g., Falk et al.,, 2015)。 尺度と異なり言語報告ではないが故に「何を測っているかわからない」と言われがちなIATであるが、ほんとうに何も測っていないのか、それとも利用する価値のある測定法なのか、の結論は出ているとは言えない。本発表では、IATによる心理測定やその実施方法について、発表者の行った1500人を対象に行った外国人IATのデータや、自尊心IATのデータ、学習課題を用いたIATの実験データを紹介する。
発表者は,博士課程まで「応用行動分析学」を基にした研究をずっと進めていたが,研究領域に対する偏見や,限定された研究トピックや研究手法に限界を感じていた。そこで,ヒトーヒト相互作用の記述・予測・制御を目的とした「行動デザイン学」として,新しくブランディングすることを始めた。雑感・所感を織り交ぜた,ここ5年の道程を共有し,参加者と活発な議論を楽しみたい。