研究紹介

私の研究では,ビデオカメラを使って環境を認識する技術であるコンピュータビジョン技術を用いて様々な新しい複合現実感システムを開発しています. 複合現実感というのは,コンピュータグラフィクス(CG)により目の前の風景にコンピュータ内の情報を付加して見せたり(拡張現実感,Augmented Reality(AR)), 現実世界で計測した情報をCGにより作られたバーチャル世界に付加して見せる(Augmented Virtuality, Virtualized Reality)技術の総称です. 特に,コンピュータビジョンの中でもカメラのキャリブレーションやトラッキングを応用したものを中心に扱っています. 

複合現実感のための人の非侵襲センシング(2019年~)

光学透過型HMDにおける明るさ錯覚を利用した光学現象表現(2018年~)

小型で軽量な光学透過型HMDでは,現在,実世界からくる光線の一部を減衰させる技術がなく,実物体表面上に仮想物体の影を表現することはできませんでした.本研究では,光学透過型HMDにおいて明度対比と呼ばれる錯覚を利用して影を表現する手法を開発しています.影として提示したい領域の周辺の輝度を利用者が気づかないように増幅することで,影の部分が相対的に暗くなるという仕組みです.これまで実験により,同じ明るさの表面でも,影内部と影の外では影内部の方が利用者が暗く感じる傾向にあるという証拠を確認しました.また,稠密な仮想の透明物体による集光パターンについても同手法を用いることで,透明物体のリアリティが向上することを確認しました.下の図は,光学透過型のヘッドマウントディスプレイを通して撮影した画像です.透明な物体はすべて仮想物体でCGで描かれています.左はしが影がない状態,中央が仮想影を加えてたもの,右が影に加えて透明物体独特の集光パターンも加えたものです.

BrightView:光学透過型HMDにおける知覚明度の増強技術(2017年~)

光学透過型HMDの欠点の1つは,屋外など非常に明るい環境では提示像の明るさが不足することです.本研究では,液晶シャッター等透過率が変更できるフィルタをHMDの前に取り付けて,利用者が気づかないスピードで透明度を低くすると,実世界の明るさの変化はあまり感じずに,仮想物体として表示されている像の明るさがむしろ増加したかのように感じるということを,実験で確認しました.

プロジェクトページ:https://github.com/Mugichoko445/BrightView/

自動走行車に搭載されるセンサを用いたAR X-ray Vision

注視センシングに基づく透過型ディスプレイの奥行き知覚整合技術 (2015年~)

本研究の目的は、ビデオシースルー型ないしは光学シースルー型の個人用ディスプレイであるヘッドマウントディスプレイおよびハンドヘルドディスプレイに共通する実シーンと重畳像の間の奥行き知覚に関する不整合を、主に画像処理によるソフトウェア的アプローチにより解決することである。  利用者が注視する位置や奥行きに関連付けて画像を提示する注視駆動型提示による奥行き知覚整合法を開発し、 利用者が意識することなく従来よりもシームレスに実シーンとCG像を視認できるディスプレイを実現する。 目的達成のための具体的な研究課題として、視線検出に基づく網膜像的整合法の開発、 錯覚現象を利用した認知的整合法の開発、を実施する。 これらの手法開発を通して、注視駆動型提示法による奥行き知覚整合の限界を明らかにし、複合現実感用途への応用可能性を示す。

研究予算

拡張現実感(AR)用タブレットの透明化 (2011年~)

本研究では,iPhoneやiPadなどのカメラ付き情報端末(タブレット)を用いた拡張現実感において,利用者から見る画面内の像と直接みる実際のシーンとが滑らかにつながるように映像を表示することで実シーンとCGで描かれるコンピュータ内の情報との関連性が理解しやすくなることを目指しています。画面と実シーンとを滑らかにつながるように映像を表示するには、シーンと利用者の目の位置の三次元計測が必要となります.この研究では、シーンと目の位置をリアルタイムに三次元計測しながら映像を表示する試作システムを構築し複数の人に実際に使ってもらうことで視認性が向上することを確認しました。 

参考文献

研究予算

高解像全方位テレプレゼンスシステム (2003年~2005年)

全方位型マルチカメラシステムの様々な利用形態を示すために,蓄積型のテレプレゼンスシステムを開発しました.予め決められたコースで全方位映像を撮影しておきあとから自由な方向,自由な位置の映像を観察することができます.全方向の映像が取得できているので,様々な形のディスプレイで再生することができます.このようなテレプレゼンスシステムのコンテンツとして最も適したものの一つは,エンターテインメントシステムです.広い視野角かつ高解像度な映像により実際に動いていないにも関わらず動いているような錯覚を生じます.有名な絶叫系遊園地のジェットコースターで映像を撮影し,国立科学博物館のディスプレイで上映しました. 

マウスでぐるぐる見回せます

全方位型マルチカメラシステムのキャリブレーション (2002年~2003年)

全方位型マルチカメラシステムは,複数のビデオカメラが放射状外向きに配置,固定されたマルチカメラシステムです.このカメラは,従来から曲面鏡や魚眼レンズを介することにより水平360度を含む高視野角の映像を取得できる全方位カメラよりも,さらなる高解像度化,高視野角化,分解能の一様化が簡単で,しかし,三角測量などのコンピュータビジョンの技術をこのカメラに適用しようとすると,全方位であるがゆえ,多眼カメラであるがゆえキャリブレーションが難しいという問題がありました.