相続・遺言
~安心してこれからを暮らすために~
~安心してこれからを暮らすために~
遺言とは遺言者が亡くなった後に、財産をどう分けてほしいかを残された方々に伝える大切なものです。例えば、自宅やマンションなどの不動産を相続する場合、遺言書がなければ(法定相続分で分割する場合を除き)相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。 相続した不動産の名義変更には、原則として「相続人全員の実印が押された遺産分割協議書」と「相続人全員の印鑑証明書」が必要です。 つまり、相続人全員が協力しなければなりません。
一方、遺言書がある場合、相続人間での遺産分割協議は不要です。 例えば相続人の中に行方不明者や認知症の人がいたとしても、原則、不動産を「取得する相続人」のみで不動産の相続手続が可能です。
財産の相続がスムーズ進むことで、みんなが仲良く今までどおりに穏やかに暮らしていけるとお思いなら、一度考えられても良いのではないでしょうか?
遺言は遺言者が亡くなった後に効力を発揮しますので、故人の遺志を正しく反映したものであることに疑いがあってはなりません。そのため遺言が書かれた遺言書には法律によって厳格な様式が定められています。また遺留分(相続人が最低限もらえる権利)など、気を付けなければいけない事柄があるのでお近くの専門家に相談することが良いと思います。
遺言には主に、公正証書遺言と自筆証書遺言の2つがあります。違いをよく知って選ぶことが必要です。
【公正証書遺言】
公証人役場の公証人に依頼して、遺言書を作成してもらいます。 法律の専門家である公証人の確認を受けるので、時間とコストと手間がかかりますが確実な遺言書の作成が可能です。公正証書遺言は、検認手続が不要で、他の相続人の協力もいらないことになりますので、遺言書がない場合に比べて手間はかかりません。
【ポイント】
●確実な遺言書を作成したい方に適します。
【自筆証書遺言】
遺言書を定められた様式で自書したものです。公正遺言書と比べて容易に作成できることが魅力です。 但し、相続の発生後に家庭裁判所での検認等の手続きが必要であり、正しく作成されたものでなければ法律的な効果が発揮できなくなります。
【ポイント】
●ご自分一人で遺言書を作成することも可能です。
●遺言書の全てを自書する必要があります。また文字の訂正など細かな決まりがが厳密に定められているので、それなりの準備が必要です。
●自筆証書遺言作成を希望する方の支援として法務局による遺言書保管制度が始まりました。この制度を利用することで検認の手続きが不要になり、紛失などの恐れもなくなります。
遺留分とは「一定の相続人に保証された相続での最低限の取り分」のことです。 (※一定の相続人=兄弟(甥姪)以外の相続人)
遺留分を侵害した遺言書を作ることもできなくはありません。例えば、長男と次男の二人の子供がいても「長男に全財産を相続させる」という内容の遺言書を作ることはできますし、財産はすべて長男に相続されます。 ただし相続が起きた後で、遺留分を侵害され不満を持った次男から、長男に対し遺留分侵害額請求がなされて、兄弟間で大きなトラブルになる可能性があります。次男は最低限の相続分をもらう権利を持っているからです。
ちなみに遺留分侵害額請求とは、侵害した遺留分相当額(最低限の取り分)を、金銭で支払うよう請求することです。
特に財産の大半が不動産などで、誰かが住む必要があったり、直ぐに換金の難しいものであった場合には、この点まで理解をしたうえで作成するようにしましょう。 また、相続開始前の10年間にした生前贈与も、遺留分の対象となるため注意が必要です。
【遺産分割協議書】
遺産分割協議書とは、相続人が全員で話し合い、誰が、どの遺産をどれだけ相続するかを決めた内容を記載した書類です。ですので相続人が一人だけの場合や正式な遺言書がある場合などは作成しなくてよいと考えられます。
相続が発生すると、相続人のあいだで遺産分割協議と呼ばれる話し合いを行います。そして相続人全員が相続内容に合意したことを証明するために遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書は、被相続人の預金口座の解約や不動産の登記の時に使用します。特に法定相続分と異なる名義変更の場合は必要になります。
相続財産が預金だけの場合などは、遺産分割協議書を作成しなくても、相続人全員の署名捺印があれば銀行などの対応は大丈夫な場合が多いです。全ての人が絶対に必要とは限りませんが、相続内容を証明する書類となりますので、相続手続きの際には便利に活用できますし、合意を書面にしておくことは後々のトラブル防止の観点からも良いと思います。
【相続人関係説明図】
相続関係説明図とは、亡くなった人(被相続人)と相続人となる人の関係(配偶者・子供・親・兄弟等)が一覧になってまとまっている図です。「家系図」に似ていると考えるとわかりやすいでしょう。
相続の手続きでは、被相続人や相続人の戸籍謄本等の書類を役所や金融機関などさまざまな窓口に提出する必要があります。
そうしたときに、戸籍謄本等の原本と相続関係説明図を一緒に提出して原本を返してほしい旨を伝えると、原本還付をしてもらえます。そうすれば、その原本をまた別の手続きで必要な時に利用することができるので、時間と手間と手数料を省くことができます。
また、法務局の法定相続証明制度を使うこともできます。戸籍謄本と相続人の一覧図などの必要書類を法務局に提出して申請すれば、登記官の認証文が付された法定相続情報一覧図の写しが交付される制度です。不動産の相続登記は2024年4月から義務化されますので、家や土地などを相続する際は協議書がさらに重要になるでしょう。
いろいろな方にお話を聴くと、これからの生活に不安をお持ちの方が多いように感じまます。一度にすべて解決することはむずかしいのですが、「何に困っているのか?」ひとつひとつ整理していくことが安心への第一歩ではないかと思います。
慣れ親しんだ地域で安心して生活するために、やはり心強いのが行政によるサポートです。高齢者の生活支援や認知症の相談窓口は、「地域包括支援センター」ということは、だいぶ定着してきたのではないでしょうか?また、日常の金銭管理が難しく生活に不安があれば社会福祉協議会が行う「日常生活自立支援事業」などがあります。
お住いの問題についても、現在の住居を元気なうちに売却して現金化し、自治体が行う高齢者向け地域有料住宅などの賃貸への住み替えすることなども一つの選択肢ではないでしょうか?
このような住宅は高齢者が暮らしやすく改良された住宅で、暮らしやすさへのアプローチだけでなく、低所得者の方へには家賃補助も行われているなど、経済的なサポートも備えています。
もちろん長生きによる金銭的な不安もありますが、お住いの住居の税金や維持費(修繕・管理費)などの出費を考えると、相続不動産としてお子様へ遺すことも良いですが、ご自分の生活に活用することも決して悪いことではないと思います。