北海道心理学会第73回大会 開催にあたって
このたび、北海道心理学会第73回大会を2026年11月22日(日)に札幌国際大学において開催させていただくこととなりました。会員の皆様、関係の皆様方に心より感謝を申し上げます。
いま世界に目を向けますと、中東地域を中心に不穏な情勢がなお続いており、日本もまたその影響を資源・経済・社会生活のさまざまな面で受けております。将来を見通しにくい不確実な社会と言われる一方で、人工知能(AI)は目覚ましいスピードで社会に浸透し、活用の幅は飛躍的に広がっております。
こうした難しい時代において、AIの力が社会の困難な課題に真に寄与し得るのかどうかが、改めて問われているのではないでしょうか。
国内に目を転じますと、本年7月28日、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生し、最大震度7が観測されました(「令和8年熊本地震」、2016年以来10年ぶり)。被災地では現在も救援・生活再建への支援が続く中、被災された方々のこころの回復と地域コミュニティの支えあいは、心理学に改めて突きつけられた重要な問いと受け止めております。
また、心理学の分野では、1990年代より非対面療法の活用についての実装的な検討が始まり、また同じ頃にVRエクスポージャーなど、テクノロジーを用いて従来の対面療法を拡張する試みも始まりました。北海道医療大学の故岩本隆茂先生は『非対面心理療法の基礎と実際』のご著書の中で、こうした非対面・遠隔での心理支援の展開と今日のVRコミュニケーションに至るまでを予見されていたと思われます。
本大会では、これらの問いと向き合うため、二つの企画を用意しております。
一つ目は、本学会と認定心理士の会との共催により、世界的にもVR・AR活用のメンタルヘルス研究で知られる徳島大学大学院教授・山本哲也先生をお迎えし、ご講演を企画しております。
二つ目は、本学会と心理職能団体連絡協議会との共催シンポジウム「震災等の際の心のケアについて改めて考えるー地域コミュニティを支える視点からー」です。本シンポジウムは、もともと震災後の地域コミュニティが果たす役割と、対面でのこころのケアの意義を問い直す場として、地震の発生に先立つ段階から企画されていたものです。奇しくも今般の震災の発生により、企画の持つ問題意識が一層切実な現実性のもとに立ち現れ、北海道の会場で議論することの重みは一層深いものとなりました。被災地支援の知見と重ね合わせながら、ローカルかつ対面でのコミュニティに根ざした心理支援の意義を議論してまいります。北海道もまた地震や豪雪をはじめ自然災害のリスクを抱える地域であり、ひとたび大規模災害が起きれば、地域コミュニティの支えあいと遠隔支援がともに重要となります。本シンポジウムでの議論は、当地の防災・減災とこころのケアの観点からも大きな意義を持つものと考えております。
VR・ARを活用した先端的な遠隔支援と、現場での直接的なかかわりという、真逆ともいえる方法論を一つの大会の中に並べているところにこそ、本大会の特徴と意義があると考えております。
本大会のテーマである「北海道の地域性に根ざした遠隔支援と対人コミュニケーションの可能性」は、テクノロジーの進展と地域のつながりという、一見対照的な二つの軸を、北海道という地域性を足がかりに改めて問い直すものです。多彩なプログラムを通じて、変動する社会と人間のこころの関わりについて、参会者の皆さまとともに、深く議論できる場となるよう準備を進めてまいりたいと存じます。
ご多忙のところ誠に恐縮ではございますが、多くの会員・関係者の皆様に札幌国際大学にお集まりいただき、実りある大会となりますよう、ご指導・ご鞭撻のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
大会準備委員長 札幌国際大学 橋本 久美