生体に学び生体を超える
生体に学び生体を超える
星野研究室では生体に学び、有機合成化学、錯体化学、光化学や高分子化学を駆使して抗体、酵素、細胞の様に高い機能を持った分子や材料、デバイスを創造し、医療や環境問題を解決することを目指します。現在は特に人工抗体・温度差電池・CO2分離材料・CO2変換触媒・環境浄化触媒・光機能性材料の創製と機能開拓を推進しています。
当研究室では、抗体のように特定の分子と強く特異的に結合する合成高分子ナノ粒子(プラスチック抗体)を開発しています。これまでに、ナノ粒子を構成するモノマーを最適化する手法(1,2)、分子インプリント法(3,4)やアフィニテイー精製法(5)を活用すると抗体と同等の強さで標的ペプチド(1,3,5)やタンパク質(2,4,6,8)を認識するナノ粒子を実現しています。私達はまた、プラスチック抗体が動物体内で抗原を認識し、その毒性を中和することを世界で初めて明らかにしました(1,7)。本技術を応用して、静岡県立大学、久留米大学、カリフォルニア大学アーバイン校と共同で、抗がん剤(8,9)や尿毒症(10,11)、食中毒の治療薬の開発を行っています。最近では、高分子の官能基配列を均一する技術”モノクローナル化技術”の開発に力を入れています(12)。
(文献)
(1) PNAS 33-, 2012. (2) JACS 15765-, 2012. (3) JACS 15242-, 2008. (4) ACS Appl. Bio. Mater., 3827-, 2020. (5) JACS 13648-, 2010. (6) JACS 1194-, 2014. (7) JACS 6644-, 2010. (8) Nat. Chem. 715, 2017. (9) J. Contl. Rel.13-, 2019. (10) Biomacromolecules 20, 1644-, 2019. (11) Nat. Commun. 1-, 2021. (12) Angew. Chem. Intl Ed., e202206456, 2020.
最近、高分子の重合技術や精製技術が急速に進歩し、分子量や配列が完全に規定された様々な高分子『精密高分子』を合成できるようになりました(13,14,15)。本技術を進化させることでこれまで不可能と思われてきた高分子医薬という次世代の創薬モダリティを実現できます(12,16)。当研究室では、東京大学、東京工業大学、静岡県立大学と共同で、急速に発展している精密高分子合成技術と、指向性分子進化法、インシリコ創薬等の創薬技術を融合し、精密高分子医薬という新たな学術領域『高分子進化工学』を創出することを目指し研究を加速させています。
(文献)
(13) JACS 137, 10878-, 2015. (14) Angew. Chem. Intl Ed. 59, 679-, 2020. (15) J. Mater. Chem. B 1706-, 2015. (16) J. Contl. Rel., 335-, 2017.
私達は、温度に応答して体積相転移を起こすゲル粒子内のカルボン酸やアミンのpKaが相転移前後の僅かな温度変化に応答して大きく可逆的に変化することを明らかにしました(17,18,19)。このpKa変化を酸化還元反応と共役させることで世界最高のゼーベック定数を有する温度差電池の開発に成功しています(20,21)。また、アミンを導入したゲル粒子が相転移温度前後のわずかな温度差で可逆的にCO2を吸収/放散することを見出しました(22,23)。このアミン含有ゲル粒子を薄膜化するとCO2を高効率に分離する固体吸収材(29)やCO2選択透過膜(25)を実現可能です。これらの成果は現在スタートアップ企業を通じた実用化が進められています。最近では、蓄積された実験データをデータベース化して機械学習や計算科学を活用したデータ駆動型の材料開発プロジェクトを推進しています。
(文献)
(17) Adv. Mater. 3718-, 2014. (18) J. Mater. Chem. B 9204-, 2017. (19) ACS Appl. Mater. Interf. 31096-, 2018. (20) JACS 17318-, 2020. (21) ACS Appl. Mater. Interf. 32184-, 2021. (22) JACS 18177-, 2012. (23) Chem. Sci. 6112-, 2015. (24) Angew. Chem. Intl Ed. 2654–, 2014. (25) ACS Appl. Mater. Interf. 30030-, 2021.
☆生体関連金属錯体を用いた人工酵素の分子設計と触媒開発
☆再生可能エネルギーを駆動力とする新規有機化学反応の開発
☆カーボンおよびレアメタルの資源循環とアップサイクルに関する研究
“化学”と“環境”の科学融合を目指した研究に取り組んでいます。有機化学、錯体化学、電気化学、光化学の知見を生かし、資源のリサイクルや環境浄化、二酸化炭素の資源化など、化学の力で世界を幸せにすることを目指した研究です。社会実装を目指し、建設会社との土壌・地下水浄化に関する研究にも取り組んでいます。
また資源のアップサイクルに関する研究では、国の大型ナショナルプロジェクトに採択され、九州大学と徳島大学でチームを組み、イオン液体などの環境調和溶媒を用いた資源循環の新しい学理の確立を目指しています。
これらの研究は、ポーランド科学アカデミー(ポーランド)、トロント大学(カナダ)、延世大学(韓国)、東北師範大学(中国)など、各国のトップクラスの研究チームと共同研究しています。
世界初となる有機化学反応の開発・反応機構解明・触媒の開発など、化学の基礎研究から応用まで幅広く研究を行っています。
(文献)
(1) Chem. Eur. J., 2025, 31, e202403663 (Outside front cover).
(2) ChemPlusChem, 2024, 89, e202400041 (Review).
(3) Inorg. Chem., 2023, 62, 11785-11795 (Outside front cover).
(4) Inorg. Chem., 2022, 61, 9710-9724 (Feature article).
(5) Bull. Chem. Soc. Jpn., 2022, 95, 1250-1252 (Inside front cover).
(6) Bull. Chem. Soc. Jpn., 2021, 94, 2784-2791 (Inside front cover).
(7) Chem. Rec., 2021, 21, 2080-2094 (Outside front cover).
(8) 有機合成化学協会誌、2024, 82, 152-132 (総説).
☆ 超分子集積化技術を用いた革新的エネルギー変換材料の開発
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(文献)
(1) J. Am. Chem. Soc. 2015, 137(30), 9519-9522. (2)Chem. Eur. J., 2016, 22, 10346-10350. (3) Chem. Lett., 2017, 46(6), 801-804. (4) Chem. Eur. J. 2018, 24, 17487-17496. (5) J. Mater. Chem. C. 2019, 7, 8847-8854. (6) J. Mater. Chem. C. 2019, 7, 9726-9734. (7) Chem. Eur. J. 2021, 27, 9535-9541. (8) Chem. Eur. J. 2021, 27, 17802-17807. (9) Angew. Chem. Int. Ed. 2022, 61, e202203853. (10) Chem. Asian J. 2024, 19, e202301114.
☆ 多核金属錯体を用いたらせん型色素の開発
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(文献)
(1) Angew. Chem. Int. Ed. 2021, 60, 2614-2618. (2) Bull. Chem. Soc. Jpn. 2021, 94, 573-578. (3) Inorg. Chem. 2024, 63, 6296-6304. (4) Inorg. Chem. 2024, 63, 11716−11725.
(5) Angew. Chem. Int. Ed. 2022, 61, e202204358. (6) J. Phys. Chem. C 2022, 126, 18152−18158. (7) Adv. Opt. Mater. 2024, 12, 2302803.