Our Research
概要
私たちの研究室では、オートファジーによる分解・代謝・再利用の仕組みの解明を目指しています。対象は、タンパク質、RNA、脂質、糖、代謝物など、様々な生体分子に及びます。
現在の主な研究テーマ:
分解産物の代謝と細胞内輸送のメカニズムの解明
液胞で機能する新規の分解酵素の同定
分解酵素の基質特異性と制御機構の解析
細胞の恒常性維持や代謝制御における、オートファジーの役割の理解
研究手法
モデル生物として酵母(Saccharomyces cerevisiae)を使用しています。酵母は遺伝学的操作が容易であり、分子機構の解明に適したモデル生物です。
主な解析技術:
液胞や、オートファゴソーム内膜構造体(オートファジックボディ)の高純度単離法
in vitroにおける分解活性測定および基質特異性解析
遺伝学・分子生物学・細胞生物学・代謝解析の統合的アプローチ
核酸、脂質、代謝物、イオンの分析(学内施設および共同研究による解析)
主な研究成果
オートファジーによってRNAが大規模に分解されることを報告しました。さらに、RNaseやヌクレオチダーゼ/ホスファターゼなど、RNA分解に関わる責任酵素と、その分解・代謝過程を明らかにしました。→ EMBO J. 2015 Jan 13;34(2):154-68. PubMed
また、オートファジーにより分解されるmRNAには選択性があることも明らかにしました。→ Nat Commun. 2021 Apr 19;12(1):2316. PubMed
亜鉛や鉄などの金属イオン欠乏時にオートファジーが誘導され、これら金属の細胞内リサイクルが生存や機能に不可欠であることを示しました。金属イオンホメオスタシスにおけるオートファジーの重要性を提示しました。 → J Biol Chem. 2017 May 19;292(20):8533-8543. PubMed → J Biol Chem. 2017 May 19;292(20):8520-8530. PubMed
酵母液胞の高純度単離技術を発展させ、オートファジックボディを蓄積した酵母から液胞を単離し、その後オートファジックボディを精製する手法を確立しました。これは、オートファゴソーム内膜構造体の精製に関する世界初の報告になりました。この手法により、オートファゴソームに含まれる基質の解析ができるようになりました。 → J Biol Chem. 2022 Dec;298(12):102641. PubMed
液胞内リン脂質分解の責任酵素であるAtg15がホスフォリパーゼBの活性を有することを生化学的に証明しました。さらに、Atg15の活性化には、液胞に局在するプロテアーゼ(Pep4Prb1)が必須であることも示しました。 → J Cell Biol. 2023 Dec 4;222(12):e202306120. PubMed