大阪公立大学の今後の展望等
大阪公立大学学長 辰巳砂昌弘
□新大学開学
まずスタートとして、1.5年前の2022年4月11日、大阪城ホールにて、文部科学大臣、大阪府知事、大阪市長ら来賓および学生・大学院生3,077人(学部・学域2,687人、研究科374人、3年次編入16人)が出席して、開学記念式典と入学式を盛大に行っております。
□ 産学官連携協定
まず、産業界との関係では、大阪信用金庫・大阪商工会議所・関西電力等と、これからも協力していきましょうということで協定を結んでおります。
それから2022年12月、量子科学技術研究開発機構(QST)と連携協力に関すし、QST平野理事長、辰巳砂学長により包括協定が、QST中野隆史量子生命・医学部門長、本学河田則文医学研究科長により医科学分野における連携協力の覚書がそれぞれ締結されました。特に医学部での連携を強く意識したものでございます。
本年度に入ってからは、8月に、Osaka Metroと包括連携協定を締結しています。これは、本学は、新しい社会を創造する「イノベーションアカデミー構想」の実現に寄与すること、また、2029年頃にOsaka Metroの森宮新駅が大学のほぼ前あたりにできることが計画されており、そういうことも含めていろんな連携して、森之宮キャンパスをモデルとした環境整備や教育の面でも大きなシナジーを生み出すことを目指しております。
また、9月には、長崎大学との包括連携協定を締結し、感染症分野を中心に教育、研究および人材育成などの連携・協力を、国際的な「知の拠点」から推進することを目指しています。具体的には、長崎大学は感染症研究の分野では日本の中でトップですけれども、その感染症研究で連携を図っております。
□戦没学友の碑 献花の集い
本年4月に、大阪公立大学と大阪公立大学校友会による共催で開催され、4年ぶりに戦没学友のご遺族関係者の方にもご参列いただきました。
雨の中の集いでしたが、本学執行部と大阪公立大学校友会等の同窓会関係者や、教職員の代表、学生代表など約50名が参加し、先の太平洋戦争において犠牲となった教職員・学友に想いを馳せつつ、恒久平和を祈念して献花を行いました。
関連して大阪市立大学が2021年のNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』の制作に協力しております。『カムカムエヴリバディ』の第一部ヒロインである岡山の和菓子屋の娘・案子(上白石萌音さん)と結婚する、稔(松村北斗さん)が通う大学は、大阪市立大学の前身である、大阪商科大学がモデルになっています。稔は残念ながら学徒出陣で戦死してしまいます。劇中で使用されている制服や制帽、教科書などの資料も大坂商科大学の当時の制服を参考に制作されています。
また、 NHKとの繋がりでは、昨年10月から放送された『舞いあがれ!』ですけども、中百舌鳥キャンパスが撮影地として協力しました。パイロットを目指すヒロインが人力飛行機サークルで大空を飛ぶことを経験するシーンでは、本学の学生クラブ「WindMill Club」と堺市の有志の方による「大阪公立大学 堺・風車の会」が、作品中に登場する人力飛行機の貸し出しや演技指導などの協力を行いました。
□旧大学で行ってきた行事、サークルの統合
基本的にはいいものは残してやっていきましょうということで、それぞれ方法が違いますが、まずは両方を試してみるところから始めて、良いところ残していこうとしています。
色々なサークル活動、クラブ活動がありますが、旧大学のサークルの統合っていうのは大変ではありましたけれども、OBの皆さんにご尽力いただきまして、非常にうまく新しい活動をスタートしております。
第71回 東京都立大学・大阪公立大学総合競技大会を都立大 南大沢キャンパスで、2019年以来4年ぶりとなる有観客で開催し、応援団や本学学生、卒業生の応援の下、大いに盛り上がりを見せた大会となりました。結果は本学の11勝8敗で昨年に続き総合優勝を勝ち取る結果となりました。普通は、こういうスポーツ競技の交流戦では、アウェーでの勝利はほぼ不可能言われていますが、サークル活動とかクラブ活動は2つの旧大学が1つになることで強くなりました。
□ホームカミングデー
2022年11月5日 大阪公立大学第1回ホームカミングデーを開催し、対面・オンラインあわせて251名の大学関係者に参加いただきました。私は中百舌鳥キャンパス、杉本キャンパスの両方で講演しました。
参加者からは「両キャンパスで参加したい」という声も多く聞かれ、市大卒業生が中百舌鳥キャンパスを、府大卒業生が杉本キャンパスを訪れ、両大学の卒業生が交流を深める良い機会となりました。
大学祭も例年通り行われるようになってきまして、2022年11月3~6日の間、杉本キャンパスにて「第72回 銀杏祭」、中百舌鳥キャンパスにて「第74回 白鷺祭」がそれぞれ開催されました。当日は、模擬店、展示、ステージ、お笑いライブ、音楽ライブなどさまざまなイベントが実施され、大きな盛り上がりを見せた大学祭となりました。
□卒業式・学位記授与式
2022年度からは大阪公立大・府大・市大の3大学合同で挙行しております。
今は圧倒的に旧大学の卒業生が多いですが、次は大阪公立大もほぼ同じぐらいの数になり、徐々にその数は変化してきますけれども、多様な学生さんが交流することは大学としては望ましい姿なのかなというふうに思っております。
□海外との交流
23年度になってから非常に活発になってきました。
カンボジア工科大学 Dr.PoKimtho学長、科学技術振興機構「SATREPS-カンボジアにおける大気汚染リスク管理プラットフォームの構築-」のカンボジア訪問団が3月に来学したほか、5月には、フランス ヴァルドワーズ県友好代表団20名が4年ぶりの来学、8月にエンブリー・リドル航空大学(ERAU)から学生25名が来日し、本学にてJAPAN Programを実施しております。
また、9月には、ベトナム2都市にて本学卒業生向けOMU紹介セミナー・交流会を開催し、現在ベトナム国内の教育機関や研究機関、企業等で活躍する大阪市立大学・大阪府立大学の卒業生および修了生を招待しました。
いくつかトピックス的な話題を紹介します。
2017年より本学とフレンドシップ協定を締結しているセレッソ大阪グループの関係で、商学部 小林ゼミ(担当:小林 哲教授)とのコラボイベント「セレッソタウン応援大作戦」の実施や、医学部 整形外科学教室が約30年にわたりチームドクターを務め、トップリーグのみならずユースやレディースの選手も含めたサポートを行っています。
研究の方ではもうあの挙げだしたらきりがありませんが、情報学研究科の黄瀬浩一教授が代表を務める「医療×AIの重層型研究開発拠点形成」プロジェクトで、活動の一環として、2023年3月に学生10名が、本学と連携協定を締結しているドイツ最大の人工知能に関する研究所である人工知能研究センター(DFKI)を訪問し、医学部の教員と学生が設定した研究課題に共同で取り組むとともに、DFKIの教授や研究員と意見交換を行いました。本学を特色づける先進的な研究や学術の発展に大きく寄与することが見込まれる研究を「戦略的研究」と位置づけ、支援しています。本プロジェクトは2022年度に重点研究支援(拠点形成支援型)に採択されました。
それから、本学の全固体電池研究所が、全国初の全固体電池に関する学術研究を中心においた「共同利用・共同研究拠点」として、文部科学省から認定を受けたというのが、今年の話でございます。全固体電池研究に関する材料開発、材料解析評価、および材料プロセス研究において、本学は、世界的に高く評価されており、特に、全固体電池材料の合成や評価解析に必要不可欠な大気非曝露に対応した研究設備を整備してきた点が評価されて認定に至りました。
また、協創研究センターLAC-SYS研究所の研究チームが、光の力でがん細胞由来ナノ粒子の効率的な検出に成功したり、医学研究科の研究グループで、AIのディープラーニングを用いて、一般的な胸部レントゲン画像から心機能の評価や心臓弁膜症の分類を高精度で推定するモデルの開発に成功したり、工学研究科が国際シンポジウム2023を開催し、革新的な研究成果を発信する場として本学の学生・教員だけでなく、世界各国から幅広くご参加いただき、非常に有意義なシンポジウムとなりました
学生の方もがんばってまして、アカデミック英語ディベート全国大会で、本学学生が団体で3位、個人賞では1位になりました。また、硬式野球部も、昨年10月に、近畿学生野球連盟Ⅰ部秋季リーグ戦の優勝を掴み取りました。そして、近畿学生野球連盟Ⅰ部春季リーグ戦にて優勝し、第72回全日本大学野球選手権大会へ出場し、結果は初戦で環太平洋大に6-1で惜しくも敗れましたが、市大・府大時代を通じて初の全国大会出場に、大学関係者や東京支部同窓会の卒業生が試合に応援へ駆け付ける等、熱い盛り上がりをみせました。まだまだ伸びしろがあるということで、こういった統合効果の1つとして表れてるものもあるのかと思っております。
キャンパス整備については、阿倍野キャンパスの看護学新棟、杉本キャンパスの理学新棟、中百舌鳥キャンパスの工学新棟が進んでおります。
メインキャンパスである「森之宮キャンパス」は2025年秋に開設します。ここで、すべての1年生を受け入れ、全学部・学域の基幹教育、以前の教養教育を実施します。このほか、国際基幹教育機構、文学部、文学研究科、医学部リハビリテーション学科、リハビリテーション学研究科、生活科学部食栄養学科、生活科学研究科食栄養学コースが移転します。これで、全体としては5000人以上が森ノ宮に集まってきます。
2027年度には、1.5期の整備としていますが、民間活力を利用したキャンパス整備を実施し、情報学研究科が森ノ宮キャンパスに移転します。民間のオフィスビルに大学が床(8,000㎡)を取得し、情報学研究科と「産学官共創リビングラボ」の整備を予定しております。
このようにして、学内すべてのキャンパスに「産学官共創リビングラボ」機能を位置づけ、大阪公立大学として「全学ネットワーク型イノベーションエコシステム」を構築し、「もりのみや」に本部機能 (2025年~)、「なかもず」 にハブ機能を持たせ、「すぎもと」、「あべの」、「りんくう」、「うめだ」の各キャンパスをネットワークで結び、基礎研究を含めた各キャンパスの強み、文理融合による「総合知」を活かしたハード・ソフトの取組みから持続的なイノベーションにつなげることを考えております。
最後に、これらの事業をやるための基金として、「OMU基金」についてご案内させていただきます。
大阪公立大学では、2022年4月の大学誕生に伴って『大阪公立大学・高専基金』をスタートさせ、前身校である、大阪市立大学の夢基金(直接寄附)、大阪府立大学のつばさ基金(ふるさと納税を利用した寄附)の長所を融合させ、より大学の活動に共感し、ご支援いただきやすい基金として、「OMU基金」が発足しています。
この特徴として、大学への直接寄附に加え、大阪府ふるさと納税制度の活用が可能であり、寄附への謝意としての基金顕彰を制定(ご寄附者銘板、ご芳名掲載など)しており、研究をはじめ、学生課外活動・クラブへも直接的にご支援が可能です。
とくに、イノベーションアカデミー構想へご協力をどうかよろしくお願いします。
旧市大の学生の皆さんは卒業していきますけれども、それがそのまま公立大学に引き継がれておりますので、引き続き皆様方のま温かいご支援ご協力をお願いしたいと思います。誠にありがとうございました。
《事務局から》
本文は、2023年11月12日(日)大阪市立大学同窓会北摂支部総会で行われた辰巳砂学長の講演内容を、事務局の責任でまとめたものです。