講師 青木育志 氏(著述家)
文明区分けの基準
日本の立場から見て、世界の文明圏をどう捉えるか、その場合の文明を分ける基準と要素は何か、私はそれを追求して、そのテーマだけで5冊を著してきた。今回の講話ではその要旨をお話した。それは「常に外国から攻め込まれたり」、逆に「常に外国に攻め込んだりする」契機があるかどうか、に関わっていると見なして、そのような文明を「敵対型文明」として、そうでない文明を「温和型文明」と規定した。前者にはユーラシア大陸の西洋文明や中国文明が該当し、後者にはさしあたりは日本以外には見つかっていない。これが「二大文明圏」である。
「敵対型文明」成立の要因
「敵対型文明」がなぜ生じたのか、については、生物学的な「適者生存」の原理が妥当するようである。すなわち、常に周りの民族や国家から攻められるおそれがある場合は、自己が滅びないようにするには、軍事力を強化し戦争に勝つことと、戦争がない場合は、議論においていかに自己が正しいか、相手を説得するしかない。「温和型文明」の場合は、そういうことがないので、そういう要素がまったく見られない。これが「二大要素」である。
軍事面の違い
軍事面においては、「敵対型文明」では、戦争が常に起きやすく、大量殺戮も起きやすく、戦略書も多数出て、次の戦争のため何をなすべきか、相手の動向を探るためにインテリジェンスを発達させるのに対して、「温和型文明」では戦略という発想もなく、情報の活用もせず、スパイ天国となり、失敗の分析もせず、危機対応もおざなりとなり、国家として危うい状態に陥っている。
議論面の違い
議論面でにおいては、「敵対型文明」では、いかに相手を説得するかという観点から、スピーチ、ディベート、その技としてロジックとレトリックが発達し、学校では議論教育を行っている。それに対して、「温和型文明」では、「腹芸」が発達する程度で、議論は顧みられず、議論教育も行われていない。その結果、日本は国際社会で低評価を受けることになる。
日本国家と日本国民の対応
以上から言えることは、日本国家としては、西洋流に特化した軍事と外交を強化する必要があるし、日本国民としてはディベートの習得によって、判断力を高め、衆愚政治から免れることに意を用いなければならない。これらのことが「二つの文明圏と二大要素」から得られる結論である。
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