ひとくちブログ

【セミナー開催記】令和5年度4回北海道森田療法セミナーを開催しました。(2024323 土曜日)

今回は東北大学大学院教授の若島孔文先生をお招きし、「改訂スリー・ステップス・モデルについて~井上円了先生、森田正馬先生の考え方を参考に~」というテーマでご講演いただきました。

 

改訂スリー・ステップス・モデルとは、

・1’stステップ:症状、病気、問題を敵にまわさない態度で接すること(ノーマライズ)

・2’ndステップ:「一番ひどかったとき」の  状態を10、以前普通に生活していたときを0としたとき、今の状態を尋ね自然回復の度合いを確認すること

・3’rdステップ:問題解決のために「これまでと異なる行動」をとるようアドバイスする

以上の3段階で構成された、自然回復に着目した治療法です。


改訂スリー・ステップス・モデルと森田療法は「自然回復を尊重する」「建設的な行動を促す」点が大きな共通項で、3’rdステップにおいては「これまでと異なる行動」をとるために「目的本位(症状や気分は置いておいて、今やるべきことに着手する態度)」が有用であることを教えて頂きました。

 

若島先生はとても著名な先生でありながら、腰が低くユーモアに溢れたとても気さくな先生で、お話を伺いあまりに楽しい時間を共にした私はすっかりファンになってしまいました。またこよなく犬を愛するドッグトレーナーとしての顔もお持ちで、そのギャップにも惹かれます。


YoutubeやX等、SNSを通じて若島先生の活動を垣間見ることができます、ご興味のある方は是非ご覧ください!

 

・youtube(Wakaken Ch【東北大若島心理学研究室】)

https://www.youtube.com/channel/UCC38XNT6tpqiRcCkKjgTKVw


・X(若島 孔文 Koubun Wakashima, Ph.D.)

https://twitter.com/k_wakashima?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor


(文責:高澤祐介大通公園メンタルクリニック 精神保健福祉士・公認心理師)



【セミナー開催記】令和5年度第2回北海道森田療法セミナーを開催しました。(2023年09月16日 土曜日)

2023年9月16日(土)、令和5年度第2回北海道森田療法セミナーを開催しました。中断していた北海道外からの講師として、慈恵会医科大学准教授の舘野歩先生と那須こころの医院院長の石川純一先生、2名の先生を久しぶりにお招きすることができました。

 今回は「依存症と森田療法」というテーマで開催しましたが、当会代表理事の千歳病院院長芦沢健先生は長く依存症も専門的に診療されているため、芦沢先生からのアルコール依存症治療の歴史といったオープニングレクチャーの後に両先生から講話いただき、最後に全体でディスカッションをする流れで行いました。

「依存症と森田療法」 館野 歩先生(慈恵会医科大学准教授)

 舘野先生は、森田療法の入門書の1つと言えるご著書「図解よくわかる森田療法(秀和システム社)」や海外留学のご経験を踏まえ森田療法と認知行動療法の比較論(共通点と相違点)でもご高名な先生です。当会でも過去2回これらのお話もいただきましたが、今回は、別クリニックにおける依存症外来での診療経験をもとにお話しいただきました。  

 今回が当会初めての参加となる方々もいるため、森田療法の基本的なお話もいただき、かねて森田療法を依存症治療に生かすことは難しいとされてきたものの、特に外来森田療法のガイドラインが示されて以降は導入しやすくなっていると思われることやアルコールの問題を抱える方に対して、不安や落ち込みを紛らわせるために飲酒している悪循環を指摘し、その感情はそのままに、今の生活場面でのしたいことに目を向け活動していく関わりを詳しく紹介してくださいました。参加者の普段の臨床に取り入れやすいものだと思いました。

 季節の変わり目を実感できるこの時期の北海道の空気に触れられ、「めちゃめちゃ爽やかでいいね」とニコニコされていましたが、ご丁寧な語り口とともに我々へも爽やかな空気を与えて下さいました。

(文責:小笠原岳洋、㈱EAP北海道/いしかわ心療・神経クリニック・公認心理師)


 「森田療法とアルコール使用障害」 石川 純一先生(那須こころの医院)

 石川先生ご自身が森田療法に救われた体験があるといい、平成30年に開業された那須こころの医院では森田療法を用いて神経症圏やアルコール使用障害等に悩む患者さんの診察をされています。アルコール使用障害の治療といえば一般に断酒が主流ですが、最近では減酒によるアプローチも増えてきており、いずれの治療においても患者さんが治療を続ける“動機づけ”が大切であると教えて下さいました。

 アルコール使用障害の治療においては、まず病的飲酒につながる生活背景を必ず訊ね、飲酒につながる感情は「自然なもの」であり、自己治療的に飲まずにいられなくなったのは「無理もないこと」であると共有した上で、酒をやめたらどんな生活をしたいかを含めて患者さんが持つ「生の欲望(より良く生きたいという気持ち)」を尊重しながら、できることから取り組んでいきつつ、健康的な生活習慣を強化していくといった森田療法に基づくアプローチを活用されているご経験を話して頂き、森田的な生活の質の向上を伴った回復につなげていく姿勢の大切さや意義を教えて頂きました。

 那須こころの医院では、来院した患者さんやご家族をも歓待することをベースに患者さんの治療導入を行っていくという「ようこそ外来」(成瀬暢也先生発案)を掲げ、外来通院のハードルを下げ、通院継続をしやすくする試みもされているそうです。

 今回のご講演を通して、石川先生にお会いして優しく実直なお人柄に触れることができました。そんな真摯なお人柄の先生だからこそ実現できる、温かい医療の形を知ることができたと感じています。

(文責:出利葉健太、砂川市立病院精神神経科・精神科医)