研究
[貨幣経済]
- work in progress
"Excess Credit, Asset Inflation and Monetary Policy"
(概要)
1980年代の日本における不動産価格バブルや2000年代の米国における住宅価格バブルなどの近年の「資産バブル」は後に深刻な金融停滞や金融危機をもたらし経済に大きな打撃を与えた。それらに共通する一つの特徴は、単に資産価格が上昇する「資産バブル」というだけでなく、安定的な物価のもとで資産価格が上昇する「資産インフレ」といえる。しかし、既存の標準的な実物的(非貨幣的)枠組みの基礎において論じられる「合理的バブル理論」においては、「資産バブル」の発生と物価の推移は必然的な関係を有しない(物価は安定的とは限らない)ため、「資産インフレ」の理論としては位置づけられない。本研究は、新たな貨幣的枠組みを導入し、既存研究で示される単なる「資産バブル」とは全く異なる現象として、「資産インフレ」のメカニズムを明らかにし、経済厚生への含意を論じる。
既存研究の「資産バブル」の理論においては、その一義的な効果は(投機的でない)資産取引を促進することを通じて分配を改善するという正の効果であった。一方、本研究の分析において、「資産インフレ」は、投機的取引のもとでのみもたらされるものであり、経済厚生の観点からは、その一義的な効果は負の金銭的外部性を通じて投機的取引の非参加者に実質的な損害を与えることと示される。これは、マクロ的な視点においては実質所得の逆進的移転(regressive transfer)として把握されることが示される。
本研究は、このような現象としての「資産インフレ」が、「効率重視(Efficiency-first)」の金融政策のもとで、ある種必然的に生じることを示す。とくに、経済発展が徐々に進むよりも、急激に発展が生じてその後に停滞が続くときに、一定の時間差をおいて「資産インフレ」が生じやすいことを明らかにした。これは、日本において1950-60年代の高度成長の後に1970年代の停滞を経て、1980年代後半に「資産インフレ」が生じた動学的経緯と整合的であり、その発生の本質的なメカニズムの理解に洞察を与えると位置づけられる。
また、本研究は「資産インフレ」と信用供給の関係についても洞察を与える。近年の日本や米国の資産バブルの発生においては、銀行の信用供給(貸出)の増加が観察されるが、本研究の分析は、「過剰信用」(過剰な信用供給)が「資産インフレ」をもたらすことを示す。また、金融政策との関連においては、「効率重視(Efficiency-first)」の金融政策は産業間の労働の円滑な移動を保証するが、その代償として「過剰信用」をもたらすことが示される。なお、効率を保証しかつ過剰信用をもたらさないような最適な金融政策は不可能であることが示されるため、「過剰信用」の発生、またそのもとでの「資産インフレ」の発生は、効率性を保証することのある種の必然的な帰結として示される。
貨幣経済における格差という観点においては、本研究は「効率性」と「平等」の本質的なトレードオフの存在を明らかにするものである。そのうえで、「効率性」を優先することの代償として、「格差の拡大」の連鎖的プロセスを明らかにするものである。「資産インフレ」の発生は、格差の拡大が一定の臨界点に達していることの一つのシグナルでもあり、またより一層の格差の拡大がもたらされることへの警笛でもあると位置づけられる。すなわち、「資産インフレ」の発生における主たる政策的課題とは、効率性を維持しつつ格差の縮小を実現することであり、金融政策における対処の限界を踏まえ、富裕層への一括税(lump-sum tax)等を通じた「過剰信用」の吸収が本質的な効果を有すると論じる。
[暗号通貨]
- work in progress
"The Microeconomics of Blob Inclusion: Pricing and Ranking Misalignments under EIP-4844" (joint with Wang Tianhao)
"Introducing Community Cryptocurrency in Sequential Fund Transfer Scheme," joint with Jun Maekawa (work in progress)