生物が持つ特徴のひとつは生存困難な環境においても増殖可能となる(適応する)ことだと考えられます。生物の新しい環境への適応機構解明は、複数の因子から成るシステム(社会)が持続発展可能となるための要因を提示することにつながり大変重要です。我々はモデル微生物である大腸菌とそれに感染する溶菌性RNAバクテリオファージQβ(以下Qβ)とを用い、生存が困難な環境でそれらが増殖可能となる過程を実験進化の手法を使い研究を行っています。
多くの世代にわたって変化する過程を実時間で見るためには、世代時間の短い微生物が適しています。また、遺伝子の数が少ないことは変化の過程の解析や得られた結果の遺伝子型と表現型の対応付けも容易になるので、その意味でも微生物は適しています。しかしながら、大腸菌でも4.6 x 106 塩基のゲノム長の中に約4000の遺伝子を持つという膨大な因子が含まれています。一方、大腸菌に感染するQβは、4000塩基のゲノム長の中に4つの遺伝子(その内の1つはストップコドンが読み通されるため、3つのシストロンから成る)しか持っていません。
そこで、我々は、Qβの環境条件を様々に変えた実験室内進化系を使ってQβの環境適応の様子を追跡しています。
このことからRNAウイルスが環境変化に適応する戦略を見出し、予測力を持つRNAウイルスの環境適応機構解明を目指しています。
ウイルス以外の地球上の生物はDNAをゲノムとして持ち、細胞分裂とDNAの分配は多くの洗練されたメカニズムで分配されています。このように細胞分裂と同期して安定に遺伝情報が次世代に伝わるにはどのように発生したのでしょうか。そのことを解明するために、RNAワールドを作れないか?と日々格闘しています。
青森県内で分離した細菌が、細菌を殺す働きを持つ物質をつくることを発見しました。この物質は「テイロシン」と呼ばれ、ウイルスの一種であるバクテリオファージの尾の部分に似た構造を持ち、標的となる細菌の膜に孔を開けて殺菌します。
※本研究の一部は、JKA(競輪)の補助を受けて実施しています。
【4】応用微生物学・生物工学分野の研究
微生物が産生する有用酵素の機能解析や生産技術の開発に取り組んでいる。特に、放線菌由来ホスホリパーゼD(PLD)の異種発現生産系の構築を進め、疾病予防効果が期待される非天然型リン脂質の合成・改変技術の開発につなげている。