一四代平戸悦山の歴史と手仕事

 1597年の慶長の役を豊臣秀吉とともにした平戸藩初代藩主松浦鎮信公は、朝鮮半島の陶工集団を平戸へ連れ帰ります。

その陶工「巨関」とその息子「三之丞」らに平戸島にて築窯させ白磁の製作を望みました。1633年に針尾島三ツ岳にて網代陶石を発見しますが、満足のいく白磁には至らなかったといわれています。1637年、藩境の水陸の要衝であった早岐瀬戸の隣、三川内の地に藩窯を開くように命ぜられます。この地で陶器から磁器への転換時期に尽力し、磁器技術の基礎を作り、白磁の製作に没頭します。1641年、初代三川内皿山棟梁兼代官に任命され、藩窯の管理体制を充実させ、1657年、平戸藩の命により幕府への最初の献上品の製作に取り組みます。

1662年、三之丞の子「弥次兵衛」は早岐瀬戸の港にて天領天草(現・熊本県天草市)より船で運ばれた天草砥石と巡り合い、陶石への転用を発見、磁器技術を確立しました。純白の白磁作りを成功させ、さらに盛上細工物などの優れた作品を次々と生み出し、三川内焼を平戸藩の藩窯として大成させました。その精巧手法に満足された四代藩主松浦鎮信公より1664年に名字帯刀を許され、禄高百石を与えられ、「今村 弥次兵衛 如猿 」を拝命、「如猿」の号を賜わります。1668年、三之丞の子、弥治兵衛も三之丞に続き御用窯の二代目棟梁兼代官に任命されました。

 捻り細工技術 は三代目『今村 弥冶兵衛 如猿』が1661年〜1672年の寛文年代、白磁の技術を確立し白磁への加飾として陰刻画、陽刻画、捻り細工物を始めました。平戸藩の御用窯であった三川内皿山内で作られる磁土を細工する伝統的な技巧で、江戸時代後期、幕末、明治期にかけて細工技術は高度に発展しました。この技法は白磁の土を手先やヘラなどの道具を用いて、あらゆるものを表現します。人形の首が回り舌を出す仕掛けの「舌出三番叟人形」は一子相伝の、世界でも類を見ない技術です。捻り細工の難しさは土の特性から焼成技術までのを理解し、技術と経験で培った収縮を目算し、一体で焼き上げることにあります。特に精巧な捻り細工は超絶技巧と呼ばれるほどです。

 一四代平戸悦山の今村均は技術向上のために伝統的技術を踏襲し、特に「捻り細工技術」は途絶えかけた技術を確立し、発展させた高度な工芸技術と考えられ、2014年 佐世保市指定無形文化財保持者に、2021年 長崎県指定無形文化財保持者に指定されました。自ら図案から轆轤、細工、焼き上げまでの全ての工程を分業はせず、捻り細工技術の最盛期の明治時代にもなかった新たな造形を生み出しています。

郷土玩具 舌出三番叟人形

 1664年、平戸藩主は純白磁器の焼成に成功した3代目『弥冶兵衛』に『如猿』と名を与えました。

容貌が色黒で猿に似ていたため「猿の如し」にこころ納まらず、猿を以って三番叟を躍らせ舌を出す人形を作り藩主に献上しました。

首を廻し舌を出す、その面白さに、藩主もとより長崎の出島に滞在していたオランダ人のあいだにも好評を得、大量に輸出されました。

1867年に江戸幕府はフランスの要請でパリ万国博覧会へ参加し、その博覧会での佐賀藩の出品物の中に、平戸三川内藩焼製造の舌出三番叟人形がありました。その人形はナポレオン三世の皇后ウジェニー妃の目に留まり多く買い求められました。

御用窯が廃止になった明治以降も継承され盛んに輸出されました。

現在も一子相伝の昔のままの技法で手作りによって作られています。

一四代 平戸悦山 今村 均 [陶歴]

1942 長崎県東彼杵郡折尾瀬村(現・佐世保市三川内町)生まれ 

1961 陶技術向上のため 上野焼 陶芸家 高鶴夏山に師事、12代悦山 今村鹿男の指導を受ける 

1993 『菊摘手桶水指』 長崎県立美術博物館 収蔵 

2006 『Lotus』 リチャードジノリ陶磁器美術館収蔵 /イタリア共和国 フィレンツェ 

2010 「14°Hirado Etsuzan」サンロッコ教会にて個展/イタリア共和国 ピエモンテ州ゲンメ

2013-2019 「一四代平戸悦山 KAKUFUSA展」 アートギャラリー/ホテル椿山荘東京

2013-2016 白磁細工 『白龍』『虫かご』 The Dolder Grand Hotel常設展示/スイス チューリッヒ  

2014,2017 「Kakufusa Porcelain」作品展 Showroom&Boutique /クルーズ客船M/V The World

2014 『捻り細工技術』長崎県佐世保市指定無形文化財 指定

2017 「一四代平戸悦山 KAKUFUSA展」 藤田美術館(大阪)

2019 天皇陛下御即位を祝し 長崎県から白磁細工『菊花虫かご』御献上

2021 『三川内焼 細工技術』長崎県指定無形文化財 保持者認定

2022 「一四代 平戸悦山 今村均展」 美術画廊/松坂屋名古屋

2022 「平戸悦山をつぐものー今村均白磁展」野村美術館(京都)

2018-2023 そごう・西武 各店 美術画廊にて個展

2024「今村均 白磁展」壺中居(東京日本橋)


日本遺産「日本磁器のふるさと 肥前・三川内焼」捻り細工技術

工房 / ギャラリー併設[嘉久房/平戸窯悦山]    〒859-3155 長崎県佐世保市三川内町692番地  hiradoetsuzan@gmail.com