やるべきことに取りかかれない人を支えるAIエージェント
レポート,研究,課題など,やるべきことが分かっていても,なかなか始められないことがあります.東研究室では,このような先延ばしを,単なる意志の弱さではなく,人の性格,自己制御,負担感,周囲との関係によって変わる行動として捉えています.この研究では,作業開始を支援するAIエージェントを用いて,どのような関わり方が行動を促し,どのような関わり方が負担になるのかを調べました.その結果,同じ支援でも,人によって受け止め方や効果が異なることが分かりました.たとえば,強く見守られることで行動しやすくなる人もいれば,かえって負担を感じる人もいます.この研究は,「支援は全員に同じように効くのか」という問題に取り組み,人に合わせた関わり方を設計することの重要性を示しています.
自分の欲求に気づき,行動を選び直す先延ばし支援
先延ばしをしているとき,人は「やらなければならないこと」を忘れているわけではありません.むしろ,「課題をしたい」「休みたい」「遊びたい」「今は考えたくない」といった複数の気持ちの間で,行動を選べなくなっている場合があります.この研究では,その時にある複数の欲求を画面上で見えるようにし,自分が何を選ぼうとしているのかを確認しながら,次の行動を決めるシステムを提案しました.大学生を対象にした実験では,自分の状態に気づくことで,先延ばし行動を抑え,本来取り組むべき作業に戻りやすくなる可能性が示されました.この研究は,先延ばしを「叱って直すもの」としてではなく,自分の気持ちや状況を理解し,行動を選び直すための支援として考えています.
高田 茉知, 武川 直樹, 東 孝文「大学生の不適応先延ばし抑制に向けた本人の欲求を代弁し意思決定を促すシステムの提案」情報処理学会論文集2025-CN-124(36),pp.1-8(2025)
グループワークでの発言や参加のしやすさを考える研究
グループワークでは,積極的に発言する人もいれば,考えていてもなかなか発言できない人もいます.その違いは,能力だけでなく,動機づけ,役割意識,周囲との関係,グループの雰囲気によって変わります.東研究室では,学生のモチベーションタイプやグループの組み合わせが,発言行動や活動の進み方にどのように関係するのかを分析しています.グループワークを「ただ話し合う場」としてではなく,人の違いが表れるインタラクションの場として捉えています.この研究は,協同作業や授業活動において,誰がどのように参加しやすいのか,どのような関係が活動を支えるのかを考える研究です.
離れて暮らす高齢者と家族のコミュニケーション支援
離れて暮らす家族は,相手の様子が分からないと不安になります.しかし,毎日連絡を取ることが負担になる場合もあります.東研究室では,生活の中で無理なく相手の様子を知り,コミュニケーションのきっかけを作る方法を研究しています.この研究では,一人暮らしの高齢者と子ども家族との関係に注目し,生活行動の情報を手がかりに,離れていても自然に会話が生まれる支援の形を検討しました.重要なのは,情報をたくさん送ることではなく,本人と家族の安心感,負担感,距離感に合った情報共有を考えることです.この研究は,家庭や地域の中で,人と人の関係を支えるHCI研究として位置づけています.