最近の主な研究テーマ/Research topics

運動・トレーニングによって体の中ではどのような変化が起こるのだろうか?そんな研究に興味のある学部生,大学院生を募集しています.

また,日本学術振興会特別研究員の受け入れも可能です.希望される方は是非ご相談ください.

大学院進学等を検討している方はお気軽にお問い合わせ下さい(連絡先はこちら)

最近では,「運動」や「身体活動」をキーワードに,細胞から動物,そしてヒトへの応用を目指して包括的な研究を進めています.

ヒトを対象とした実験・疫学研究

 -Epidemiological, human applied science-

-Nakagawa study, Fukuoka Island city study-

 福岡県那珂川市(Nakagawa study)や福岡市東区アイランドシティ (Fukuoka island city study) 在住の地域高齢者を対象に運動教室を実施し,身体機能、脳機能,身体組成、栄養摂取状況、活動量などとの関連を明らかにすることを目的としています.Nakagawa studyは,池永先生,古瀬先生(当時大学院生・助教)を中心に進められてきました (Kose et al., Exp Gerontol, 2016; 木室ら,体力科学,2017; 古瀬ら,体力科学,2020)

 また,Fukuoka island city studyは,畑本先生(当時ポスドク),高江先生(当時大学院生)を中心に進められてきました (Takae et al., Nutrients, 2019; Takae et al., J Nutri Health Aging, 2020). 

●最近では,日本運動疫学会のプロジェクト研究: 特集「日本人の身体活動・座位行動の実態」の一環として、高齢者の身体活動量データを集計し,統計資料として投稿しました (古瀬ら,運動疫学研究, 2021).将来的に,日本の次期身体活動基準ガイドラインに何らかの形で活かされることを期待しています.

最近では,みかんの匂いが分からないことと,記憶や感情にかかわる脳の特に内側側頭領域の萎縮が有意に関連していることを明かにしました ( Kose et al., BMC Geriatr, 2021).パーキンソン病やアルツハイマー病などでは嗅覚機能が低下することが知られており,嗅覚障害は認知機能低下のリスクの一つとされています.みかんは日本人の身近な食べ物であり,その匂いを識別できるかどうかによって,嗅覚の低下と脳の萎縮の早期発見に役立つ可能性があります.

いずれのStudyもそれぞれ10年目,5年目測定に差し掛かっており,縦断的な解析による新たな知見の報告を目指しています.

Human experimental study -exercise and kidney disease-

川上先生 (当時大学院生), 神徳先生 (当時大学院生) が中心となって,特に「運動と腎機能」をテーマに研究が進められています (Kawakami et al., Clin Exp Nephrol, 2018; Kotoku et al.,  Clin Exp Nephrol, 2019). 最近では,中高年における腎機能低下と,肝線維化の間接的指標であるFIB-4インデックスとの関連性について明らかにしました (Kotoku et al., Int J Environ Res Public Health, 2021). 

動物・細胞を対象とした基礎研究

-Animal, and cell basic science-

Brain, anxiety, epigenetics

 運動と脳研究は,冨賀先生 (当時大学院生・ポスドク) 中心に進められてきました (Tomiga et al., BBRC, 2016; Nitric oxide, 2017; J Physiol Sci, 2019; Neurosci Lett, 2020)

●最近では,11日間という短期間の運動でも抗不安効果が発揮されること,またそのメカニズムの一つとして、脳由来神経栄養因子 (BDNF) や神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)のエピジェネティックな遺伝子発現制御が関与していることを明らかにしましたTomiga et al.,FASEB J, 2021.これまでの研究から,継続的な長期間の運動は,心の健康の維持・増進に効果的であることが知られていました.今回の研究から,マウスを回転ホイール付きのケージで11日間飼育すると,記憶や感情を司る領域である海馬のBDNFやnNOSの遺伝子やタンパク質発現が変化すること,それは遺伝子配列によらない遺伝子発現調節機構(エピジェネティクス)の一つであるDNAメチル化レベルが関係していることが初めて明らかになりました.また実際の不安様行動は,特に海馬の腹側部での変化と関連している可能性が示唆されました.短期的であっても,体を動かすことは脳に変化をもたらし,心の健康の維持に寄与していると考えられます.

Skeletal muscle, molecular science, glycogen

 骨格筋研究は,須藤先生 (当時ポスドク) により立ち上げられ,現在は大学院生を中心に進められています (Tomiga, Sudo, Sakai et al., J Physiol, 2019)

●脳でも注目していたnNOSは,骨格筋においても筋萎縮の重要な調節因子であり,脳と同様,我々はエピジェネティクスにより制御されている可能性を明らかにしました. 現在は,骨格筋量の調節に重要な役割を担っている,骨格筋幹細胞,サテライト細胞に着目しています.サテライト細胞におけるnNOSの役割は未だほとんど明らかにされていません.我々は,成熟骨格筋と同様,nNOSがサテライト細胞活性化や筋量調節の分子機序に関与している可能性を見出しており,運動や不活動,肥満といった生活習慣による影響について現在解析を進めています(草野ら,第76回日本体力医学会大会, 2021

●グリコーゲンは運動時のエネルギー源です.古くから長距離選手の間では,グリコーゲンをより多く蓄え,パフォーマンスを高めるための方法として,グリコーゲンローディング法がよく用いられています.最近では,絶食期間の違いによる骨格筋のグリコーゲン量の変化が,持久走能力に及ぼす影響を検討しています(坂井ら,第76回日本体力医学会大会, 2021).今後の解析を通して,スポーツ科学分野への応用が期待されます.

研究に関するプレゼンテーション Presentation