平和社会学
研究会
(略称:平社研)
(略称:平社研)
この頁の目次:
1)直近の情報:研究会等の告知
2)『平和社会学研究』投稿規程
3)平和社会学宣言
*なお、関連情報は研究会代表の西原の以下の新HPにもあります。https://sites.google.com/view/kazu-nishi/
【直近の研究例会の情報】
第39回:8月10日(日):午後2時~4時
報告:東江日出郎氏(東北公益文化大学教員、東アジア
共同体・沖縄(琉球)研究会・事務局長)
題目:フィリピンと平和に向けた東アジア連携の可能性⁻
――中間選挙をうけて――
奮ってご参加ください。
9月は21日(日)に「平和社会学のための社会学原理」(仮題)の西原報告がオンラインで予定されております。
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❑以下の研究例会は終了しました。
第38回:7月20日:午後2時~4時
報告:安藤博氏(元朝日新聞記者、元東海大学平和戦略
国際研究所教授)
題目:「モンゴルの可能性――平和構築への貢献」【仮題】
⇒正式題目:モンゴルーー北東アジア地域における
平和構築対話の”貸席国”
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🔶第37回:6月15日:午後2時~4時
報告:蓼沼紘明氏(満州生:在野の日本国憲法研究者)
題目:世界の「戦争文化」と日本国憲法を問い直す
――平和への道程――
🔶第36回:5月18日(日):午後2-4時の研究例会・報告:人見泰弘氏(武蔵大学)
題目:「滞日ミャンマー(ビルマ)系移民に対する緊急
避難措置の導入と受容――政治難民と経済移民の間
に置かれる生存移民」
第35回研究例会:報告者・西原和久
平和構築への社会学的/実践的課題――現象学的な平和社会学の4年目の挑戦(新年度にあたって:つなぎの例会)――〈共生なくして平和なし、平和なくして共生なし〉
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第34回:研究例会
❑2025年3月16日(日)午後2時-4時
中村圭(島根県立大学)後藤悠里(成城大学)
題目:マイノリティから問う共生と平和――
『共生と平和をめぐる国際社会学』東信堂(近刊)
の共編者との対話
第33回:研究例会
❑2025年2月16日(日)午後2時~4時
報告者:高野慎太郎氏(自由学園)
韓国における脱北青少年教育の事例検討
――代案教育学校・公立多文化小学校を事例に――
第32回:研究例会
❑2024年12月15日(日)午後2時から2時間
報告:干川剛史(大妻女子大学)
報告題目:ウクライナ・ビッグテック・ターミネータ(LAWS)―GAFAM-X包囲網構築に向けてのネットワーキングの可能性――
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以下も好評のうちに終了しました。
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11月17日(日)
第31回研究例会(月例会)
報告者:首藤明和(中央大学文学部)
報告題目:「世界人口の1/4を占めるムスリム:
共生に向けた課題と展望――中国雲南回族の「中国イスラーム思想」とその実践から」
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10月20日(日)午後2時~4時
第30回研究例会(オンライン開催)
報告者:阿部純一郎:
椙山女学園大学文化情報学部
(著書『<移動>と<比較>の日本帝国史: 統治技術としての観光・博覧会・フィールドワーク』新曜社)
報告題目:
「ベトナム戦争期の米軍帰休兵と平和運動――観光から日本の戦争協力を考える」
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9月シンポのお知らせ(終了!)
🔸平和社会学研究会は例年9月にシンポジウムと総会などを開催しています。今回は、毎月第3日曜午後の研究例会に対応する形で、第29回研究例会として、以下の平和社会学シンポジウムを、対面およびオンラインで開催します。対面は参加自由です。総会等は、シンポ終了後に引き続き開催します。
―――平和社会学研究会主催+成城大学グローカル研究センター共催
「平和と共生へのグローカルな視点――マイノリティの視角から問い直す」
日時:2024年9月15日(日)13:30-16:30
場所:成城大学3号館4階ミーティングルームB
司会+趣旨説明:西原和久(成城大学グローカル研究センター客員研究員)「平和へのグローカルな視角―ミクロな平和とマクロな平和」
報告1:中村圭(島根県立大学国際関係学部教授)
「グローカルな視点からみえてくるジェンダー・LGBTQ+の問題」
報告2:後藤悠里(成城大学社会イノベーション学部准教授)
「人権問題の現在地ーー共生社会をめざすために」
報告3:徳久美生子(武蔵大学総合研究所研究員)
「ヒロシマから考える核と平和の問題――「ふつうの人びと」の目線から」
――休憩15分――
コメント+関連する問題提起:人見泰弘(武蔵大学社会学部准教授)
「アジア/日本における難民問題からの問題提起」
全体討論
*なお、16:30-17:00まで総会を開催します。
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・以下の第28回研究例会(8月分)は終了しました。
8月18日(日)午後2-4時
報告41:西原和久「ミクロな平和とマクロな平和――平和概念と平和構築論の平和社会学的な再検討」
*内容:平和社会学として、日本の平和主義の歴史を概観した後、日常のミクロなコンフリクトからマクロなコンフリクトの解決のために、ミクロ~マクロなレベルの問題を通観しつつ、今後、何を、どんな視点で、どのように問うべきかを、ガルトゥングや国際関係論の知見等を参照しながら、平和社会学研究会の共有の基礎視角として、提示したいと考えております。ですので、この回は一種の「勉強会」として開催します。(ちなみに、隠れたテーマとして、ガルトゥング等の暴力論を踏まえた現象学的な国際社会学の視点からの平和研究の展望を描こうと思います。)直前の告知となりますが、ご参集ください。
なお、9月の研究例会は「定例」の第3日曜、9月15日(日)で総会と委員会も兼ねて成城大学で(対面+オンラインで)開催します。その例会での(対面+オンラインでの)報告者を募集します。テーマは、平和に関連すれば自由です。希望者は8月末までに、西原までメール(vzs00645@nifty.com)で連絡ください。
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下記の第27回研究例会は終了しました。
研究例会は、通常の毎月第3日曜の午後2時から開催ですが、第27回は都合により予定変更で、7月21日(日)から 8月4日(日)の午後2時から2時間の予定で開催します。
🔶報告者:森川裕二氏(長崎大学)
🔶報告題目:日本の平和学における思想と実践課題~東アジア研究の視点を踏まえて
森川裕二氏(長崎大学・多文化社会学部の学部長)で、単著『東アジア地域形成の新たな政治力学』や共著で『〈周縁〉からの平和学』『東アジア共同体の構築4』などがあります。奮ってご参加ください。
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なお、7月15日(月)に、以下のセミナーを開催しました。「平和社会学からみる社会学理論史セミナー」の第1回セミナー:講師は西原和久で、セミナー題目は、「平和社会学と現象学的社会学」でした。
*このセミナーは「平和社会学研究会」の参加メンバーの一部から希望があり、とりあえず第1回セミナーを開催したものです。「平和社会学研究」を念頭に、国内外の「社会学理論の歴史」を再検討する企画です。平和社会学研究会の正規の活動内容とするかどうかはまだ決定していませんが、また開催日時も現時点で不定期ですが、希望に応じて今後考えていこうと思います。ご希望が西原(vzs00645@nifty.com)までメールください。―――――
「平和社会学研究会」の6月「研究例会」も変則的でしたが、6月9日(日)午後2時から報告者:古梶隆人氏(一橋大学大学院生)で、報告題目は、
「戦争非体験者による沖縄の平和教育——
2010年代の若者たちによる実践に着目して」
でした。ご報告まで。
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5月開催予定の、第25回の研究例会は、諸般の事情で一週遅れの日曜「5月26日」に日程変更となりましたが、少なからぬ人にお集まりいただき、無事終了いたしました。
報告は社会学者の秋山道宏氏で、題目は、
戦後沖縄にみる社会運動/抗議・交渉のレパートリーと民主主義
秋山氏は、旧陸軍病院跡のある沖縄の南風原出身で、一橋大学で博士号を取得後、明治学院大学の国際平和研究所助手を経て、現在、沖縄国際大学で社会学、平和学を教えております。
著書は博士論文を基にした『基地社会・沖縄と「島ぐるみ」の運動』(八朔社、2019年)
などがあり、沖縄戦後史研究と平和研究を中心に沖縄復帰論や尖閣問題などにも検討を加え、今回のご報告では、白紙撤回となった「うるま市自衛隊訓練場」問題にも言及していただけるとのことです。なお、次回の第26回研究例会も、報告者の都合で6月9日(日)に日程変更となりそうです。ご了解ください。
この件、詳細情報は、5月中旬にUPします。
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第24回研究例会(4月21日午後2時~開催)は終了しました。ご参加、ありがとうございました。
報告37:村岡敬明:大和大学情報学部准教授
「著書を語る:新著『米軍統治下での「島ぐるみ闘争」におけるオキナワ住民の意識の変容』
(大学教育出版、2024年1月刊)
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下記の第23回の研究例会は、西原の都合により、1週間延期し、3月24日(日)午後2時~に変更して終了しました。ご了解ください。
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第23回:2024年3月17日(日)午後2時~4時
報告36:西原和久/平和社会学研究会・代表)
「人はなぜ戦争をするのか――戦争原因論と平和構築論をめぐって」
*なお、総会代替の「研究会のあり方に関する議論」有
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第22回研究例会は2月18日(日)開催:報告者は高野慎太郎氏(自由学園)で、報告題名は「高等学校における平和教育の創発について考える――「総合的な探究の時間」における「川田文子さんのこと」の事例から」で、好評のうちに、終了しました。
1944年に学徒動員中の中島飛行機・武蔵製作所の防空壕で直撃弾をうけて亡くなった「川田文子さん」に関して調べ、冊子を作製した自由学園の高校生(当時)の山澤遥乃・綾乃さんもZoomに参加し、印象的な朗読もおこなって下さいました。
*学年末で多忙な1月、研究例会は休会です
今後の予定(案):
第23回:2024年3月17日(日)午後2時~4時
報告36:西原和久:平和社会学研究会・代表
「戦争原因論と平和構築論をめぐって」(仮題)
第24回:2024年4月21日(日)午後2時~4時
報告37:村岡敬明:大和大学情報学部准教授
「著書を語る:新著『米軍統治下での「島ぐるみ闘争」におけるオキナワ住民の意識の変容』
(大学教育出版)、2024年1月刊」(仮題)
第25回:2024年5月19日(日)午後2時~4時
報告37:報告者最終確認中「沖縄における基地問題と平和問題の現在」(仮題)
第26回:2024年6月16日(日)午後2時~4時
報告38~:報告者募集:『平和社会学研究』第2号・合評会(予定)
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・第21回:12月17日(日)午後2時~4時:根本雅也氏(一橋大学:『ヒロシマ・パラドクス』の著者)による研究会:〈継承〉を紐解く――広島市における「被爆体験の継承」の生成と展開は好評のうちに終了しました。
・第20回:11月19日(日)午後2時~4時:報告題目「ヒロシマの拡散――ドイツの例を中心に」報告者:竹本真希子氏:広島市立大学:主要著書『ドイツの平和主義と平和運動』も終了。
(なお、1月は、皆さま学年末+入試等で多忙なので休会ですが、2月からの報告者を募集します(ただし、2月はすでに希望者が出ました!)。希望者は西原までご連絡ください。自己紹介的なもの、書評的なもの、研究中のもの、そうした報告でも構いません。)西原和久vzs00645@nifty.com
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『平和社会学研究』投稿規程概要と執筆要綱細目
◆ 編集方針(概要)
・『平和社会学研究』誌は、主に次の 3 つの論稿からなる
①研究会での報告を基にした論稿
②研究会から執筆を依頼した論稿
③メンバー等からの自由投稿論稿
・なお、平和関連の書評や研究動向やコラム等の自由投稿論稿も歓迎
・自由投稿論稿の掲載は、編集委員会選定の 2 名による「査読」を経
て掲載の可否を決定する。
◆ 自由投稿論稿の投稿執筆規程(概要)
(総論)
①論稿の内容は、平和社会学研究および平和研究に関するものとする
②自由投稿は随時募集するが、最終締切りは毎年の「年末」とする
③『平和社会学研究』誌の刊行は、毎年の「年度末」を目標とする
(原稿の形式等)
④自由投稿論稿の論文の字数は 1 万字程度~ 2 万字程度以内とするが、書評・研究動向・コラムなどは上限 5 千字を目安とすること
⑤原稿は、A4 で10.5 ポイントの明朝、1 頁34 字× 30 行で提出すること
⑥注と文献は原稿末尾に一括して挙示(脚注機能等は使用しない)
⑦図表は、本文内での記載に加え、それと同一図表の別紙も提出
⑧章節番号や記号は特に統一しないが、読みやすくなるように努める
(その他)
⑨執筆細目は以下を参照。
⑩自由投稿等に関する問い合わせは、学会事務局宛にメール送付。
平和社会学研究会事務局:vzs00645@nifty.com
『平和社会学研究』執筆要綱細目
平和社会学研究会
2023年11月末日制定
01. 論稿は、ワードで作成する。
02. 余白は、上30mm、下30mmで、右30mm、左30mmとする。
03. 本文の活字は、10,5ポイントの明朝体とする。
04. 英文はTimes New Romanを原則とする。
05. 主題と副題は、中央揃えで、主題12ポイント、副題11ポイントで、ともに太字とする。
06. 主題と副題の下に一行空けて、氏名とその英語表記を、11ポイントの太字で記す。
07. 本文の中の小見出し(節のタイトルなど)は、11ポイントで太字とする。
08. 注は、脚注機能を使わずに、本文末に一括して番号順に記す。
09. 注番号は、当該箇所に「上付き」で「括弧つき番号」を示す。
例:山田は次のように述べる(1)。
10. 本文末の文献リストの注番号は半角で、注の記述は10,5ポイントの明朝体で、2行目以下は一マス空けて書く。
(1)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
11. 文献挙示は、注の後に、氏名のABC順で配列し、同一文献の2行目以下は二マス開けて書く。なお、文献の挙示は、以下の例を原則とする。
山田花子 2018 「平和社会学研究に関する考察」、山田太郎編『平和社会学を考える』西信堂
Zauber, M., 1992, Transnational Sociology, Frank, N., ed., Studies on Global Sociology, London: University of Manchester Press.(=2005、川田二郎訳「トランスナショナル社会学」、海田三郎編訳『グローバル社会学研究』北信書店)
12. なお、巻末に一行空けて括弧つきで所属等を表記する。ただし、この所属等は『平和社会学研究』の末尾近くで、執筆順に一括して掲載する。
例1⇒(東西大学平和学部准教授)
例2⇒(二橋大学大学院文学研究科博士後期課程在籍中)
例3⇒(南北大学名誉教授、平和研究学会元会長)
以上
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【平和社会学研究宣言】
平和社会学研究会
紀元前5世紀ごろのギリシャにおいても、古代の中国においても、「平和」は実現されるべき大きな課題であった。その当時、アリストファネスや墨子が非戦・反戦を説いていた。さらにルネッサンス期の16世紀にはエラスムスが「平和」を論じ、18世紀には哲学者カントが永遠の平和を説いた。20世紀においては言うまでもなく2つの世界大戦があり、しかもその後の冷戦状態によって、東アジアでも朝鮮半島やベトナムなどで戦争が勃発していた。そして、21世紀においても、ウクライナの首都キーウへのロシア軍の侵攻により戦争状態が生起し、双方に多数の死者が出ている。戦争を起こさせない、起こった戦争を終わらせる、そして永久の平和を実現する、こうしたことのためには、いま何が必要なのか。「非戦と反戦」が、平和を考える際の中心となるのではないだろうか。
しかしながら、「国家間戦争がなければ平和である」とは言い切れない。現代社会は、一種の「分断社会」である。国家間の分断が上述のような戦争に結び付きがちだが、国際的にも国内的にも、あるいはグローバルに見てもローカルに見ても分断社会に伴う「争い」は依然として絶えない。グローバルな格差社会や南北問題や差別構造など世界システム上の対立関係が存在し、国内的にも独裁主義や専制主義の統治上の問題や、内戦状態にまで至る対立関係も存在する。特に日常の社会生活においても、障害者差別や外国人差別・民族差別、さらには性差別やLGBTQなどのジェンダー問題も、部落差別や被爆差別やハンセン病者差別などの多様な差別問題も存在する。差別を主に「区別と蔑視と排除」の3点をポイントとして他者との関係を「分断」する行為と思想だと考えると、この状況では、平和な社会生活は望みがたい。
『広辞苑』(第7版)を紐解くと、「平和」とは「戦争がなくて世が安穏であること。「世界の―」」という意味の前に、「やすらかにやわらぐこと。おだやかで変わりのないこと。「―な心」「―な家庭」」という、2つの意味が併記されている。その順番をいまは問わないとしても、日常の「生活世界」の現場においても、「平和」が問われていることは間違いない。私たちは、戦争に抗う非戦・反戦を願いながらも、同時に日々の生活における「平和」状態の追求に関しても、その実現可能性を追求したいと思う。そして、この2つの「平和」において共通するのは、まずは身体的物理的な暴力を生活世界から排除する点だ。とはいえ、生活世界には、いわば言語的文化的な暴力も存在する。さらには、社会を分断し、対立を醸成し、戦い/争いを促すような制度的構造的な暴力も存在する。そうした暴力も含めて「暴力のない世界」の構築はいかにして可能か。
既存の人文社会科学の一分野としての社会学は、これまでこうした問題にどのように対応し、平和構築にどう貢献してきたのか。近年は、戦争社会学が関心を集めているが、平和こそ、私たちの心豊かな社会生活/生活世界が存続するための大前提である。そして社会学もまた、その狙いとしては、日常の平和な生活世界の充実を願ってきた。したがって、平和社会学は、これまでの戦争社会学を含む社会学研究の成果を、批判的に検討しつつも積極的に取り入れて、私たちの日々の充実した社会的な生活世界を現実化するための「平和のための社会学研究」を進めていきたいと願っている。
* * *
こうして、「平和社会学研究会」は「社会学」の視点と知見とを活用して、いかにして平和を構築することが可能かを検討する研究会として2022年の1月に発足した。その発足時の視点は、「平和社会学研究会発足時の基本方針」(『平和社会学研究』発足記念号⇒創刊号にも収録の「挨拶」)を参照いただくとして、ここでは研究会の理念に関する要諦を以下に示しておきたい。
0:『平和社会学研究』は、「平和」を模索する研究会誌である。
――それは、平和な社会の実現に向けた「社会学的研究」を促進するための新しい学術誌である。
そして、その特性となる社会学研究のポイントは、以下の5点である。ただし、これらの5点は現時点でのポイントであって、今後の研究会活動の進展に応じて改訂されることがある。
1:平和探索の社会学:いま問われるべき「平和」とは何か。
――過去から現在までの歴史的な平和実現の状況を検討し、現在および未来の平和に関する論点を
提示する。
2:平和思想の社会学:平和に関する社会学的思想を問い直す。
――そのために、とくにこれまでの平和に関する社会学的な思想・学説・理論などを検討する。
3:平和構想の社会学:平和実現のための未来構想を検討する。
――そして、そうした平和に関する考察と展望を踏まえた未来社会構想を具体的に展開する。
4:平和実践の社会学:平和実現の具体的な諸実践に乗り出す。
――さらに、そのような社会学に基づく教育・社会活動・社会運動などの実践活動に取り組む。
5:平和交流の社会学:分断社会をのりこえ共生と連携をめざす。
――分断・対立・抗争・差別等を乗り越えて、生活世界に住まう人びとの交流・共生・連帯をめざす。
以上は、研究会発足後1年の研究会の積み重ねのなかから生み出されてきた社会学的特性であって、現時点での「平和社会学研究」のスタートの宣言として(=「平和社会学研究宣言」)まとめたものである。こうした問題意識に基づいて、関心を共有する人びととの議論や平和社会学研究会への参加を切に希望するものである。
* * *
国際社会学会(ISA)の元会長マイケル・ブラウォイは、2012年のアルゼンチンの国際学会で、社会学と社会運動との関係について、次の3つを区別して論じた。すなわち、①社会運動についての社会学(Sociology of Social Movement)、 ②社会運動のための社会学(Sociology for Social Movement)、
③社会運動としての社会学(Sociology as Social Movement)、である。
この区分に従って論じるならば、『平和社会学研究』誌は、平和を実現しようとする動きについて研究し、平和のための社会学を展開し、そして一種の社会運動としての平和社会学研究を推進しようとするものである。しかし、その歩みはほぼ1年前に始まったばかりで、まだまだ不十分なものである。この点は、研究会メンバーすべてが自覚している点である。そうだからこそ、メンバーは平和に関心をもつ人びとと、主題を共有しながら、議論を重ねていきたいと考えている。研究会それ自身は、平和社会学への関心を共有する方であれば、資格は問わない開かれた研究会である。
* * *
本研究会誌『平和社会学研究』に掲載の諸論考への建設的批判をはじめとして、皆さま方の積極的な関与を切望している。そして、「共に社会学する」中から、平和社会学の展開を活性化してきたいと考えている。以上をもって、「平和社会学研究宣言」を閉じたい。
2023年1月
平和社会学研究会