Research Interests
(高校生・学部生向け)
(高校生・学部生向け)
錯体分子を対象とした研究は多く存在していますが、その中で、私の研究の特色としては、第一遷移系列元素を中心金属として有する錯体の合成と反応を行っていることが挙げられます。
第一遷移系列元素とは、周期表の遷移金属元素の一段目に属するScからCuまで(もしくはZnまで)の元素です。これらの元素のほとんどが地殻埋蔵量が多い、毒性が相対的に低い、安価で容易に入手可能という特徴を有しています。
これらの元素が行う身近な反応としては、生物の行っている酵素反応があります。それらの金属酵素の活性中心には、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅などが存在しており、それらの金属によって様々な魅力的な反応が行われています。またそれらの元素は、化学工業においても固体触媒として用いられており、こちらも人類にとって有用な物質を数多く作り出しています。ただし生物の行っている反応と化学工業で行われている反応で類似の反応を比較すると、生物の反応は、常温・常圧で行われている一方で、化学工業で行われている反応は高温・高圧であり非常にエネルギーロスが大きいです。生物の行っている反応の多くはまだまだ解明されていないですが、それら生物の反応から学び、応用することで、より持続的でクリーンな反応が開発できる可能性があります。そのため我々の研究室では第一遷移系列元素に着目した研究を行っています。
これまでに錯体化学でそれらの金属元素に関する研究は、カルボニルやホスフィンなどの配位子が結合した、化学的に安定で、比較的取り扱いやすい配位飽和な錯体を対象として行われてきましたが、我々の研究室ではそれらの配位子は用いずに、電子供与性の高い配位子を用いて配位不飽和な錯体を合成しています。そのようにして得られた錯体は、外部基質への反応性が高く、窒素分子や二酸化炭素などの不活性な小分子の還元を行えることが分かっています。