3.微視的有機デバイス評価技術の開発

微視的有機デバイス評価技術の開発


有機エレクトロニクスの実用化に向けて、性能を改善し安定化させるためのデバイス評価技術の開発に取り組んでいます。有機半導体デバイスでは、既存の無機半導体デバイスで用いられてきた評価技術をそのまま用いることがしばしば困難である一方、有機材料の特徴を活用した新しいデバイス評価技術によって、無機半導体デバイスでは考えられなかった精密かつ詳細なキャリアー計測が可能なことが明らかになりつつあります。

これまでの主なトピックス:

1.有機トランジスタアレイの性能分布をイメージ化して評価する技術

トランジスタアレイの性能分布を光学イメージ化できるゲート変調イメージング技術を開発しました。本技術により、膨大な数のトランジスタからなるアクティブバックプレーンの非破壊・一括検査が可能になりました。

2.電子スピン共鳴法による有機半導体界面のキャリヤ輸送観測

有機トランジスタの中でキャリヤが運動する様子を、電子スピン共鳴(ESR)法を用いて詳しく調べました。ゲート電界によって誘起されたキャリヤによるESRスペクトルが、運動によって尖鋭化する様子を捉えることに成功しました。

3.電子スピン共鳴法による有機半導体界面のトラップ密度分布解析

低温の電子スピン共鳴(ESR)法を用いて、有機トランジスタの中でキャリヤの動きを妨げる要因であるキャリヤトラップの深さや数密度を測定・解析する手法を開発しました。

4.電子スピン共鳴法による有機半導体界面の微結晶粒界の評価

有機トランジスタ内を流れるキャリアーが持つ電子スピンを利用して、多数の微結晶からなる有機半導体層内の、微結晶内部と微結晶粒界のキャリアー輸送を分離して評価する手法を開発しました。 

5.有機トランジスタのチャネル内キャリア量の可視化

キャリア蓄積によるゲート絶縁膜の厚み変化を干渉効果により高感度で捉えることにより、ゲート電圧由来の蓄積キャリアのチャネル内での分布を可視化する新手法の開発に成功しました。

6.トランジスタ素子構造を利用した電場変調分光

ユニポーラ型の電界効果型素子構造を用いることによって電荷蓄積と電場印加の効果を分離し、ペンタセン薄膜の励起子光吸収がどのように変化するかを調べることに成功しました。

7.有機トランジスタのバイアスストレス効果

走査型ケルビンプローブ顕微鏡(SKPM)を用いて、有機トランジスタの安定動作の原因を調べました。その結果、ゲート絶縁膜上に親水/疎水境界があるとキャリアの蓄積の原因となり、バイアスストレス効果が生じやすくなることを突き止めました。