1.有機エレクトロニクス材料の開発

有機エレクトロニクス材料の開発


軽くて柔らかい性質をもち、有機溶媒に可溶である分子化合物は、真空プロセスや高温を必要としない塗布製膜や印刷技術を用いて製造される、大面積やフレキシブルデバイスに適した要素材料であります。トランジスターや太陽電池に利用される有機半導体や、不揮発メモリやセンサー機能をもつ有機強誘電体について、高性能でかつ高安定性、高信頼性であり、しかも印刷プロセスに適応できる材料基盤の確立を目標に、材料開発を進めています。

これまでの主なトピックス:

1.塗布型有機半導体材料の高性能化に向けたアルキル鎖置換効果の解明

優れたp型半導体であるベンゾチエノベンゾチオフェン骨格に対称・非対称にアルキル鎖を導入した塗布型材料について、結晶構造解析に基づく置換基効果の系統的評価を実施し、鎖長に依存した分子パッキング様式と材料諸性質との相関を明らかにしました。また各分子パッキング構造を成り立たせる分子間相互作用を詳細に評価することで、高性能な半導体特性の実現に重要とされる層状ヘリンボーン構造が、置換基の効果によっていかに安定化および変調されるかを解明し、塗布型有機半導体の更なる高性能化に向けた材料設計指針を得ました。

2.層状結晶性二成分有機半導体の開発

製膜性に優れる層状結晶性の二成分有機半導体の開発に成功しました。これにより、二成分系材料のもつ優れた半導体機能(熱・大気安定性、n 型特性、狭ギャップ)を薄膜デバイスに応用することが可能になりました。

3.プリンテッドエレクトロニクス用低分子有機半導体材料の高度化に向けた単結晶構造評価

優れた半導体特性を示すベンゾチエノベンゾチオフェン骨格を様々に置換した誘導体の結晶構造を系統的に評価し、溶解度や熱物性、半導体特性との相関を明らかにすることでより実用的なプリンテッドエレクトロニクス材料の設計指針を得ました。

4.有機半導体における分子間電荷移動励起を用いた光電変換

有機太陽電池の変換効率は光励起状態の拡散長に左右されるといわれています。我々は、通常有機太陽電池の発電に利用される分子内励起に比べて、分子間電荷移動励起により生成した光励起状態の拡散長が著しく長いことを見出しました。