フィールドにいるときは毎日、日記をつけて、旅での出会いやおもったことなどを書き残しています。雑多なことを書いていく予定です。
よく晴れた日の夜空。カリンズ調査基地にて。
Runyankore(ルニャンコレ)の人びと
カリンズがあるのは、ウガンダの西の端、コンゴ民主共和国との国境にほど近いブシェニ県です。ここの人びとは主に現地語のルニャンコレ(ニャンコレ語)を話します。ウガンダは元イギリス領であり、公用語は英語です(もともと異なる言語の民族がひとつの国にまとめられているためです)。しかし、英語を話すことができるのは、ほとんどが適切に学校教育を受けられた人に限られます。村に遊びに行くと、現地語しか話せない人もたくさんいます。彼らとも話をしたいと思い、調査アシスタントたちからのんびりと(ポランポラと言います)ルニャンコレを習っています。
言葉には風があると思います。言葉とは生き方であり、風土であり、時間である、という感じでしょうか。歴史と言っても良いかもしれません。その言葉でしか感じられない生き方(ニュアンス)があると思います。ウガンダの西の端でしか通じないこの言葉にも、遠い昔から流れてきた風が吹いているはずです。それを感じることこそ、母語以外の言語を学ぶよろこびであり、意義なのではないかと私は思います。
Enyonyozi -星とホタル-
ある日、またルニャンコレを教わっていたときのことです。ルニャンコレでは「星」も「ホタル」も同じく"enyonyozi(エニョニョジ)"というのだと教えてもらいました。日本語の「蛍(螢)」にも英語の"firefly"にもない感覚だなと思いました(日本語と英語は似ている気がする)。寝泊まりをするカリンズの森は、夜になると真っ暗闇になります。星がとても綺麗に見えます。そして同じく、地上には無数のホタルも飛んでいます。ああ、昔のルニャンコレの人たちは地上に星を見たのか…と大変感動しました。それは、星空やホタルの美しさそのものに対してというよりは、地上に星空を見出した昔のルニャンコレの人たちと対話したかのような気分になったからでした。真っ暗闇の夜の世界はきっと彼らが見ていた頃のそのままで、暗闇の中に同じホタルの灯りを見つけたはずなのです。そう思ったとき、夜がほんの少し明るくなったような気がしました。そんなよろこびがありました。